2012年6月9日発行の新聞『被団協』344号の内容をご紹介します。


みんなの力を結集し、
国家補償の援護法実現へ
第61回定例評議会ひらく

 長崎被災協は、5月30日午後2時から第61回定例評議員会と本年度第2回理事会の合同会議を開催、昨年の取り組みを振り返り、決算に目を通し、今年度の運動の見通しを立て、予算案を検討、確定しました。
なお、今年度の活動計画と予算についいては、新しい法人制度の趣旨に沿って、3月末の評議員会・理事会で検討、確定しましたので、この評議員会・理事会では、新しい状況の変化などにより、修正すべき点がないかを検討のうえ、3月の評議員会・理事会で決定したとおり確定しました。
ここで決まった今年度の活動計画の内容は、下部掲載しています。
山田事務局長は、「国家補償の被爆者援護法の課題一つ取り上げても大変なことであり、性根をすえてとりくむ必要がある」と指摘しました。

◇長崎被災協・ことしの課題(要旨)◇

①原子力発電所の再稜動に反対し、原子力発電から自然エネルギーへと、エネルギー政策の転換を強く要求します。
②日本国憲法施行周65年に当たり、日本国憲法を守り、戦争も核兵器もない世界をめざします。そのための第一歩として外国の軍事基地の撤去を求め、非核3原則の法制化をめざします。
③現行の「被爆者の援護に関する法律」の問題点を国民の前に明らかにし、国家補償の被爆者援護法の制定をめざします。
④今年も、原爆被害の実態を国の内外で明らかにします。福島原発の被害についても、放射線被害隠しを許さず、被爆者への完全な補償実現をめざし、福島県民と連帯してとりくみます。
⑤被爆二世の組織化をめざし、二世の方々との交流を深めます。
⑥長崎被災協の支部がない地域での組織化を図ります。
⑦世界の県内外の、様々な動きについて、その意味を考え、きちんと対応できるよう、学びあう機会をつくります。
⑧新しい法人制度への移行の時期が迫りました。「一般財団法人長崎原爆被災者協議会」の設立を目指します。
⑨束京大空襲犠牲者の会、佐世保空襲被害者の会などとの連携を強めます。


大飯原発の再稼働反対
被災協、「声明」を発表

 5月30日の第61回定例評議員会では、福井県大飯原発再稼動へ傾く野田首相の姿勢に危機感を感じた理事から、「野田首相への抗議の意思を込めた声明を」の提案があり、満場一致で可決し、内容については事務局に一任されました。
事務局ではただちに文章つくりに取りかかり、「総理は近く再稼動を決断」という報道がなされた5月31日、長崎被災協は抗議の声明を野田佳彦内閣総理大臣宛に送付するとともに、報道各社へ届けました。
そして「声明」は、いま政府がやるべきことは福島原発事故の原因究明を急ぐことであり、被害の実態を確認し、その救済に万全を期することだと指摘し、さらに「私たちは、原発の再稼動に反対する全国の仲間たちと連帯し、大飯原発の再稼動はもとより、すべての原発の再稼動に反対する決意をここに表明するとともに、政府が毅然として態度で、原発の再稼動を許さず、福島原発の被害者救援に全力を挙げられるよう要求します。」と結んだのでした。
政府の動きに関心が高まった時でもあり、この声明について多くの報道関係機関も注目し、取材の電話、訪問が続きました。


動き出した二世組織
諫早・長崎で「会」を結成

 

被爆二世の組織化は、長崎被災協の大きな課題の一つでしたが、諌早市と長崎市で、大きな一歩が踏み出されました。

まず諌早市で…
5月20日(日)午後2時、諌早市長田町公民館に7名の二世と諌早被災協会長ほか5名の役員、それに長崎被災協の柿田事務局次長が参加して、『長崎被災協・二世の会・諌早』の第1回の話し合いがひらかれ、会長に森多久男さん、事務局長に高屋忠義さんを選出、会則は活動方針などを話し合いました。

ついで長崎市でも
5月27日(日)には、午後2時に長崎被災協の会議室に9名の二世と長崎被災協の理事ら6名が参加して「二世の会・準備会」がひらかれ、会則、活動方針について検討、人事についても会長に佐藤直子さん、事務局に柿田富美枝さんを選出、『長崎被災協・二世の会・長崎』が結成されました。
どちらの会も、「被爆二世の健康と生活を守るため、国による医療無償化をかちとる」「被爆二世健診にガン検診を加えるなど、内容を充実させる」「核兵器廃絶を求める被爆者の思いと願いを継承し、戦争のない平和を実現するための活動を広げてゆこうと話し合い、早速、諫早では、6月27日(水)の午後7時半から同市長田町みのり会館の1階の研修室で、長崎では7月7日の(土)の午後1時から被災協2階の会議室で、それぞれ会合を開くことを決めました。どちらの会も、「関心がある方はどうぞご参加ください」と呼びかけています。
なお、諌早・長崎の二世の会についてのお問い合わせは、
長崎被災協[095(844)0958]まで。
長崎被災協事務局では、柿田事務局次長が担当しています。
(柿田 富美枝)


却下理由を示せない厚労大臣
原爆症認定審査の実態

厚生労働省の原爆症認定審査のあり方が納得できないということは、これまでも何回となく紙上でとりあげてきました。
ではいくらかでも改善のあとは見られるのでしょうか。とんでもありません。
ご参考までに、最近の審査状況をご報告しておきます。5月28日の審査の実態なのです。資料は、公開されている厚生労働省のホームページから採りました。それが、下の段の表なのです。

《5月28日の審査から》
原爆症認定審査     127件
異議申立て審査      36件


計             168件
審査時間:午前11時~午後5時
昼食休憩を1時間 = 1分48秒

1件の審査を僅か2分足らずで
まず目につくのは、1件あたりの審査時間が極端に短いことです。この日は、原爆症認定審査と異議申し立て審査をあわせて163件について審査をしています。審査に当たった時間は、午前11時から午後5時まで。
途中、昼食休憩はあるでしょうし、午後3時にはお茶の時間もあるでしょう。昼食休憩を一時間とし、お茶の時間は無視すると、審査時間は5時間(=300分)。163件を審査するのですから、1件に2分当てたとすると326分かかります。

大変な量の審査資料
被爆者が提出する審査の為の資料は、ちょっと見てすむようなものではありません。
これを2分足らずで見て、認定か否かを判断する審査委員は、神様か魔術師でしょう。

却下理由が書けない審査委員たち
審査委員たちは、神様でも魔術師でもありませんでした。だから却下しても、その理由が書けないのです。委員たちに書けないものが、大臣に書けるはずはありません。
理由も示さずに却下されては、反論もできません。だから法律は、「却下の場合はきちんとその理由を書け」と定めています。
そこで考えたのが、理由欄はあるけど理由が書いてない今の却下通知書なのです。

(山田拓民)

 

 


 許せますか?こんな行政
厚生労働省は、こうして被爆者を切り捨てているのです。
行政庁は、申請により求められた許認可などを拒否する場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。(行政手続法8条1項)

2年ほど前に原爆症認定を申請していたAさん宅へ厚生労働省からの封書が届きました。それは、「下記の理由により認定することができませんので通知いたします。」という文書で、「記」のあとに19行の文章が並んでいました。
最後から8行半は、認定しなかった理由とは無関係の文章です。だから、認定しなかった理由は、第1段落の5行と第2没落の5行、そして第3段落の半行となります。ところが最初の段落の5行に書いてあるのは、認定の要件だけ。第2段落に書いてあるのは、疾病・障害認定審査会というところでいろいろ検討した結果、認定できないと判断したという、いわば経過報告。そして第3段落の半行ほどには、「貴殿の申請を却下します」と書いてあるだけ。
Aさんは、結局どうして自分の申請が認められなかったのかを知ることができませんでした。不審に思ったAさんは、同じ頃、原爆症認定を申請したBさん、Cさん宅を訪ねました。「家にもこぎゃんとの来たばい」と見せてくれた厚生労働大臣の手紙は、被爆した場所も病気も違うのに、宛名と日付以外は全く同じものでした。「理由の書けるごたる審査ばしよらん証拠たい」
Aさんの言葉に2人はうなづき、心の底からの憤りを覚えるのでした。 (山田拓民)


読書案内
山岡 淳一郎 原発と権力(ちくま書房)

 書店には、表題に「原発」が入った書籍があふれています。手に取ると、ほとんどは放射線についての解説書ですが、この本は違います。本のカバーの内側には、こう書いてありました。
「原子力発電、それは戦後日本にとっては最高の電力システムだった。再軍備ともつながるその魅力に多くの政治家は飛びついた。いちはやく原子力予算を成立させ、日本を原発大国にした中曽根康弘。CIAと結びつき、総理の座を狙うため原子力を利用した正力松太郎。ウランを外交戦略の要に据え、東奔西走した田中角栄。権力者は原子の力を我がものにし、こんにちの日本を形作った。」
どうです、これで目次を見ると、第一章「再軍備」が押しあけた原子力の扉…終章21世紀ニッポンの原発翼賛体制、となるのですから、目を通したくなりませんか?いま、総理大臣が大飯原発の再稼動にやっきとなっているのも、わかるような気がします。
手にとって、ページをめくってみませんか?     760円 (山田拓民)


長崎被災協 5月の動き

1日 メーデー
民医連創立40周年記念のつどい(山田)
3日 憲法記念日・憲法集会
4日 県9条の会・憲法さるく
11日 日本被団協代表理事会(山田)
12日 平和宣言起草委負会(谷口)
14日 原爆症認定で異議申し立てた4名による意見陳述(山田)
15日 前日に続き、2名が意見陳述(山田)
監査
16日 第1回理事会
20日 諌早市で二世の集い
24日 被爆者5団体と市担当者で8月9日の総理への要請について打ち合わせ
(谷口、坂本、山田)
27日 地球市民集会実行委員会総会(谷口、山田)
長崎市で二世の集い
29日 いきいきコープ理事会
30日 第2回理事会・第61回評議員会
31日 大飯原発問題で声明