2013年3月9日発行の新聞『被団協』353号の内容をご紹介します。

憲法問題や被爆者対策の是正など
=5月未へ向けての取り組みを確定=
被災協第5回理事会ひらく

 長崎被災協は、2月21日午後1時から、事務局の2階の会議室で、今年度第5回の理事会を開催、山田事務局長が11月末に開催した第4回理事会以降の取り組みを報告、そのあと、これからの取り組みについて協議しました。この理事会には、理事9名が出席したほか、地域の被災協支部の代表も2名参加しました。

会議の冒頭で山田事務局長は、昨年5月30日に開催した定例評議員会・理事会で決定した長崎被災協の2012年度の運動方針(9項目からなる「私たちの課題」)を示し、それぞれの分野で取り組み、それぞれに一定の成果を収めたものの、達成を完了したという課題はなく、このあと今年5月末までの期間も、この課題の追及に全力を挙げようと呼びかけました。その内容が、下部に表示した8項目の課題です。

◇これからことし5月未までの課題◇

  1. 昨年5月未の定例評議員会で決めた「原子力発電所の新設に反対し、原子力発電から自然エネルギー活用へとエネルギー政策の転換を強く要求します」という方針に沿って、学習を深めるとともに、昼休みデモや学習集会へ積極的に参加します。
  2. 自民党政権の改憲方針がいよいよ明らかになる中で、改めて日本国憲法に目を通し、その意義を考える機会をつくります。
  3. 政府の被爆者対策、特に原爆症認定をめぐり、現行施策の欠陥を市民の中に明らかにし、長崎市や長崎県との話し合いを重視して厚生労働省に是正を迫ります。
  4. この期間中も、原爆被害の実相をあきらかにするとりくみをすすめます。
  5. 被爆二世の組織化が進んでいる中で、私たちの要求や課題についての理解が深まるよう、共に学び合う場の設定に努めます。
  6. 長崎被災協の組織がない地域での組織化を目指します。
  7. 新法人制度への理解を深めるよう努めます。
  8. 東京大空襲被害者の会や佐世保大空襲被害者の会などいわゆる一般戦災者との連携も強めます。

このなかの②は、もともと昨年5月が日本国憲法制定65年の年にあたっていた為に加えた課題でしたが、昨年12月の衆議院選挙の結果、かねてから「憲法改正」を主要な方針に掲げてきた自由民主党が政権を取ったこともあり、「改憲」を阻止し、現行憲法を守ることが、緊急の、しかも現実的な課題として、いよいよ重要性を増したのでした。
また昨年は、「被爆者健康手帳」の制度や「原爆症認定制度」を定めた「被爆者医療法ができて55年目の年だったので、現行法の不備と運用の不当性を明らかにし、原爆死没者への弔慰金支給を含む「国家補償の被爆者援護法」制定を目指す運動に取り組みましたが、十分な成果を上げるにはいたりませんでした。
しかし1月12日の長崎駅前での行動でも、1時間で365名の署名を集めるなど、私たちがその気になれば、多くの市民の賛同を得ることが実証されたのでした。
政権が変わって、「戦争のできる国」をめざす政府のもとでの「市民の戦争被害への国の償い」を求める私たちの運動は、これまで以上に重要な意味を持つことになったのです。
また③は、特に原爆症認定制度の欠陥と厚生労働省の不当な対応を県や市の担当部局にもきちんと認識させ、一体となって厚生労働省に是正を迫ろうというものです。

 私たちの課題は、決して小さくはありません。こうして第5回理事会は、午後4時、閉会しました。


早速「憲法」改悪へ
▲動き始めた自民党▲
まずは改憲手続きの緩和へ

 結党以来「日本国憲法」(改正)の機会を窺ってきた自由民主党は、平成22年(2010年) 5月に「日本国憲法の改正手続に関する法律」が施行されたのを契機に、昨年4月には、「日本国憲法改正草案」を発表、同年12月の衆議院選挙で過半数の議席を獲得し、公明党を加えると衆議院での議席の3分の2を超えたのをチャンスとばかりに、安倍首相は日本国憲法第96条の改正を表明しました。

まず改正手続きの緩和から
いまの日本国憲法改正のためには、衆参両院で、それぞれ総議員の3分の2以上の賛成で議決して発議し、さらに国民投票により、過半数の賛同を得なければならないと、いまの憲法は、その96条で定めています。
これはかなり厳しい手続きです。本来「憲法」は、政府に勝手な政治をさせないためのものですから、そう簡単にその時の政府に都合が良いように変えさせてはならないというのが、こうしたハードルを設けた理由です。
安倍首相は、まずこの障壁を低くしようというのです。

いきなり自衛隊を戦争のできる軍隊に、では‥
どんなに選挙では多くの議席を獲得したからといって、自民党へ投票した人の全部が自由民主党の政治のあり方を全面的に支持しているわけではありません。そういう時に唐突に、「戦争のできる国づくり」を掲げても、そっぽを向かれるだけでしょう。
その点、議決の手続きをいじる程度なら国民も目くじら立てることもあるまい、というずるい判断もあるのかもしれません。現在、安倍首相が言っているのは「改正」の手続きだけなのです。「改正」の内容についてはは触れない--これが彼の鉄則なのです。
衆議院で多数を占めることができた自民党ですが慎重に(空気)を読んでいるのではないかと思われます。

狙いは戦争のできる体制づくり
下の表の「自民党憲法改正案」の第9条をご覧ください。
9条では、「国権の発動としての戦争を放棄し、国際紛争を解決する手段としては用いない」 と明記していますが、その2項では、「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」 と記しています。
思い返えすまでもなく、満洲事変にしろ、上海事変にしろ、それに続く日中戦争、太平洋戦争にしろ、「自衛のための戦争」という口実のもとでの戦争ではなかったでしょうか。

国防軍の任務は我が国の安全の確保だけではない
自民党の憲法改正案によると、第9条の2の第3項では、「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため」だけでなく、「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、また国民の生命、もしくは自由を守るための活動を行うことができる」と定めています。
「東洋平和のためならば、なんで生命が惜しかろう」という歌声が聞こえてくるような気がしませんか?
(山田 拓民)

これが自民党の日本国憲法「改正」案 ◇ その1

日本国憲法

第1条
天皇は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。

第9条
日本国民は、正義と秩序を貴重意図する国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇、又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

自民党憲法改正案

第1条
天皇は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であって、その地位は主権の存する日本国民の総意に基づく。

第2条
国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。
2.
日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。

第9条

日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、国際紛争を解決する手段としては用いない。
2.
前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。

第9条の2
我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高司令官とする国防軍を保持する。
2. 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3. 国防軍は、第1項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、または国民の生命、若しくは自由を守るための活動を行うことができる。

 


自民党の憲法改正案に目を通そう

 私たちは昨年5月の定例評議員会で、「私たちは日本国憲法を守り、核兵器の廃絶をめざします。」と誓い合いました。その憲法が手直しされようとしています。

 どこがどう変えられようとしているのか、自民党の「案」は、自民党の「一間一答」とともに、事務局にありますので、ぜひ目を通してください。なお、自由民主党のホームページには掲載されていて、自由にプリントすることが出来ます。(長崎被災協・事務局)



長崎被災協2月のうごき

3日 朝長原爆病院院長 長崎新聞文化賞受賞祝賀会 (谷口・山田)
6日 原爆病院運営委員会 (谷口)
7日 新聞「被団協」発送作業
13日 日本被団協代表理事会 (谷口、山田)→14日まで
16日 核兵器廃絶アピール署名2周年の集い
17日 北朝鮮の核実験に抗議する市民の会座り込み
18日 諌早被災協役員研修会 (山田)
20日 事務局会議
21日 第5回理事会