2014年4月9日発行の新聞『被団協』366号の内容をご紹介します。

被爆70周年の来年には
国家補償の被爆者援護法制定を!
第8回理事会・第65回評議員会で確認

 

長崎被災協は3月31日午後2時から評議員会と理事会の合同会議を開き、1年間の活動を振り返るとともに、これからのとりくみの概要を確認しました。来年(2015年)は、被爆から70年目の 年であり、ことしは、2005年には国家補償の被爆者援護法を!と全国で取り組みを展開する年である上に、憲法改正を狙う安倍政権は、事実上の改憲に相当する「集団的自衛権」の具体化を図っており、この問題への具体的な取り組みをきめるべきだとの強い意見もありました。

当面、「要求」の意義と内容の確認を
31曰の評議員会・理事会で確認された今年度の主要な課題は以下の通りです。

この1年間の私たちの課題

  1. 2015年度の「国家補償の被爆者援護法」制定をめざし、2014年度は全力を挙げて取り組みます。
  2. 「国家補償の被爆者援護法」ができるまでは、併せて原爆症認定制度の改善など、現行制度内での改善を追求します。
  3. 「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」した目本国憲法を順守し、「戦争のできる国づくり」に反対します。
  4. 高齢化した被爆者の孤立を防ぎ、いろんな形での「被爆者の会」への結集を図ります。
  5. 長崎被災協の組織、財政の両面での強化を図ります。

なお、医家補償の被爆者援護法への取り組みは、今の法律ができて20年になろうとするだけに、大きく盛り上がった当時の経験が薄らいでおり、当面、私たち自身が、私たちが求める「国家補償の被爆援護法」の内容と、政府にその実現を迫る意義への理解を深めることが求められています。

とりくみの趣旨の徹底へ
このとりくみは、当初は被災協の組織内の取り組みとなりますが、やがては市民と一体となった大きな運動に発展させなければなりません。
その第一歩は、街頭での署名運動です。4月下句からとりかかります。また、県内の県議会、各市議会、町議会への要請も欠かせません。国会議員への働きかけも重要な探題です。さらに大運動に取り組むとなれば財政の確立も重要な課題です。


3年目迎えた2世の会・長崎
4月20日に総会開催へ
熊谷博子さんの講演も

2012年5月に結成した「長崎被災協・被爆二世の会・長崎」は、いよいよ3年目をむかえることになりました。
被爆70周年の2015年を目前に、被爆体験や被爆者運動の継承は、一上世の会」の大きな課題となっています。
この2年間の歩みを振り返り、被爆70周年を目指し、今年の二世の会の運動をどう展開するかを話し合うための2014年度総会が、4月20日午後1時半から同3時半まで、長崎被災協の講堂(地階)で開催されます。
この総会では、映画「幻の全原爆フイルム目本人の手へ」の監督で、これまで各テレビ局で50本を超えるドキュメンタリー番組を作っておられる熊谷博子さんを招いての講演も予定されています。当日の講演のテーマは、『被爆者と二世と私たち、そして未来へ』。
なお、[二世の会・長崎]では、被爆者や市民の方の参加も歓迎とのことです。


大阪で4人、熊本で5人
原爆認定3月の地裁での勝訴
厚生労働省に反省の色なし

3月21日には大阪地裁で4人の被爆者が、同28日には同28日には熊本地裁で5大の被爆者が原爆症認定訴訟で、厚生労働省の却下処分は違法という内容の勝訴判決を勝ち取りました。9人はいずれも長崎での被爆者で、厚生労働省が爆心地から被爆地までの距離が3.5キロを超えると原爆の放射線の影響はないとしているのに対し、大阪では4キロの被爆者が、熊本では3.8キロの被爆者が「健康に影響を及ぼすような放射線を被ばくしたと認めるのが相当」と判断され、原爆症と認められこうした事態に厚生労働省の担当部署である被爆者援護対策室は「行政は(基準に沿った)判断しかできない。四方と行政に乖離(そむき、離れる事)があるのは当然」とのコメントを発表しています3月29日『西日本』)。
また認定制度に詳しい田村和之広島大学名誉教授は「国は小手先の改定を繰り返してきたが、裁判所の判断は変わっていない。抜本的な制度の見直しが必要だ、今後も各地で国の敗訴が続くだろう」と述べています(3月29~『朝日』)。


おかしいよね、原爆症の認定のありかた

◇なぜ、熱線・爆風によるケガなどは、原爆症と認められないのでしょうか。
◆今の法律では、原爆症というとき、原爆の放射線による負傷・疾病は認められますが、熱線や爆風によるケガや病気は無視されます。きっと、熱線や爆風による被害を対象とすると、爆弾や焼夷弾の被害者も救済しなければならなくなるからでしょう。
◇爆心地から3.5キロを超えると放射線の影響はないというのは本当でしょうか。
◆画一的にそう線引きするのは危険です。例えば年齢によっても差があるでしょうし、当人のその時の体調によっても異なるでしょう。特に子供と大人を同一に扱うのは疑問です。同じ距離でも、子供や病弱な人にとっては危険と考えるのが当然でしょう。
◇原爆の放射線による病気と言っても、放射線によって体力が落ちている時は。いろんな病気が出てくると思われますが、原爆症の対象となりますか。
◆本来ご指摘のように考えるべきでしょうが、厚生労働省は、放射線がその病気の直接の原因である時しか原爆症と認めません。原爆の被害は小さく捉えようとしているのです。


薩磨子さん逝って40年 記念碑前に50名集う

長崎の被爆詩人福田須磨子さんの没後40年に当たる4月2日、長崎市平野町の詩碑の前に約50名が集まり、福田さんを偲ぶ会がひらかれました。この集いには福田さんの姉豊後レイコさんも大阪から来崎、車椅子で参加され、あの悲惨な戦争の体験を絶対にくりかえしてはならない、と力をこめて訴えられました。

◇「国家補償の被爆者援護法」とは◇
①再び被爆者をつくらないとの決意をこめ、原爆被害に対する国家補償をおこなうことを趣旨するものであること。
②原爆死没者の遺族に弔慰金と遺族年金を支給するものであること。
③被爆者の健康管理と治療・療養を全て国の責任で行うものであること。
④被爆者全員に被爆者年金を支給すること。障害を持つ者には加算すること。
(1984年11月18日「原爆被害者の基本要求」より)


原発輸出を中止せよ
5団体が政府へ要請

被爆者5団体(被災協、友の会、友愛会、遺族会、平和運動センター被爆連)は、4月4日、衆議院でトルコ、アラブ首長国連邦に対して原発関連資材などの輸出を可能にする原子力協定案が可決され、この夏にも発効が予想されること、さらに現地での核兵器への転用のおそれも重視し、安倍首相へ「平和憲法のもと核兵器廃絶を訴える我が国の立場を堅持するためにも、今回のトルコ及びアラブ首長国連邦への原子力協定の承認を撤回されるよう要請します。」という文書を送付しました。


▶図書紹介

憲法は誰のもの?
民党改憲案の検証
弁護士 伊藤 真

この本が出版されたのは、昨年、この『被団協(長崎版)』で、自民党の憲法改正案を紹介していた頃のことでした。
この本は、『誰のため、何のための憲法か』から始まります。そして、あの自民党の改正憲法案の特徴として、つぎの4項を挙げています。
①立憲主義の放棄
②平和主義から戦争のできる国へ
③天皇の元首化と国民主権の後退
④人権の縮小と義務の拡大
第一項の「立憲主義」について、著者は、「近代憲法の存在理由」とし、憲法の中で何よりも知らなければならない最重要のキーワードというのです。著者は、「法律と憲法では矢印の向きが逆だ」といいます。「法律は国が国民に命令国に命令するものだ」というのです。さらに、いまの日本国憲法は、この憲法の改正手続きについて『各議院の総議員の三分の二以上の賛成で国会がこれを発議し国民に提案してその承認を得なければならない』と定めていますが、自民党の「改正案」では、「過半数の賛成」に変えようとしています。手続きは簡単な方がいい、ですむことではありません。(山田拓民)
岩波ブックレット
価格500円十税


3月のうごき

1日 県9条の会役員会 (山田)
6日 福岡市で被団協九州ブロック代表者会会議 (山田、柿田)
9日 さよなら原発長崎集会 (山田)
10日 ノー・モア・ヒバクシャ訴訟弁護団会議(山田、田中、森内、柿田)
12日 日本被団協・中央行動 (谷口・山田)
15日 二世の会・長崎 会議
16日 城山九条の会の学習集会で山田事務局長が報告
17日 東北民医連の学習集会で山田事務局長が報告
20日 被爆体験を語り継ぐ会 打ち合わせ会
22日 地球市民集会実行委員会総会 (谷口・山田)
26日 ノー・モアーヒバクシャ訴訟第2回法廷傍聴
27日 理事会・評議員会を前にしての事務局会議
29日 医療法人健友会評議員会 (山田)
30日 二世の会・会議
31日 第8回理事会・第65回評議員会
香焼・役員会