2007(平成19)年度事業報告

私昨年5月の第51回評議員会で、私たちは2007年度の課題として次の6項目を掲 げ、積極的にとりくもうと誓い合いました。

①日本国憲法の「改正」を阻止し、9条を守ろう。
②原爆被害の実相を、日本中に世界中に正しく伝えよう。
③核兵器廃絶、原爆被害への国の償いを実現するために、積極的にとりくもう。
④原爆被害への国家補償の実現をめざし、現行被爆者対策の改善を迫ろう。
⑤生きがいを語り合える組織づくりにとりくもう。
⑥財政の確立にとりくもう。

当時の安倍首相は、「美しい国づくり」をスローガンに、憲法「改正」を最重要課 題にすえ、教育基本法の「改正」、国民投票法の制定にとりくみ、防衛庁を省へ昇格させるなど、危険な雰囲気をつくりだしていました。
これに対し私たちは、中央に「ノーモアヒバクシヤ9条の会」を立ち上げ、地方にあっても「県9条の会」「9条 フェスタ実行委員会」に加わって、「憲法をくらしに活かそう」と訴えてきたところ です。ところで、参議院選挙での敗北を受けて、夏にはいきなり政権を投げ出した 安倍首相のあとをついだ福田首相の口からは憲法問題についての青葉が出ることは ありませんでした。
しかし、憲法「改正」を唱えるのは与党だけではなく、野党の一部を加えると国会での絶対多数を占めることを考えると、私たちとしても手を緩 めるわけには行きません。あらゆる機会を通じて、現行憲法の意義を再確認し、現行憲法を守り、生かしてゆくとりくみが必要です。昨年は、長崎県選出の国会議員であり、初代の防衛大臣に就任していた久間章生氏が千葉の大学での講演で「アメリカの原爆投下はしようがないなと思っている」 という発言をしたことが、轟々たる批判を浴び、久間氏は大臣を辞任せざるを得なくなるという事態が発生しました。
長崎の被爆者5団体はただちに連名で久間氏へ抗議しましたが、久間氏は「誤解だ」と強弁し、反省の色は見られませんでした。これだけでなく、原爆の被害を小さく小さく見せようとする試みのもう-つの例として、国民保護計画をあげることができます。伊藤一長市長の存命中のことでし たが、長崎市は「核攻撃を受けたら雨ガッパをかぶって逃げろ」というような非常識な政府の指導に従うことを拒否し、国民保護計画から核攻撃を受けた場合、市民 を保護する術はない、核戦争被害から市民を守る唯一の手立ては核兵器の廃絶だ、との立場から核攻撃事態への対処についての記述を削除した「国民保護計画」を作 成したのでした。
それから3年、県はいまだに長崎市の「国民保護計画」を認めようとせず、この「計画」は宙に浮いたままになっています。これらは、原爆被害に対する無知にもとづくものか、そうした無知をつくりだそ うとしているものなのか、私たちは憤りを禁じえません。
こうしたとき、原爆被害 の生き証人である私たちの責任もまた重大です。私たちは、この1年間に小・中・高校生や一般に人たち24,096人の人たちを前に、原爆の被害がどんなにむごいもの であり、人間として許せないものであるかを訴えてきたのでした。
過去5年間の実績は、下記の表のとおりです。

 

これまでの5年間の修学旅行などでの被爆体験講話実施状況

小学校 中学校 高校 一般
2007 318
(19,653)
74
(2,374)
10
(1,549)
20
(520)
422
(24,096)
2006 321
(22,370)
28
(2,507)
11
(1,739)
6
(793)
336
(27,409)
2005 313
(20,377)
30
(2,807)
16
(3,221)
4
(163)
363
(26,568)
2004 275
(21,112)
64
(6,773)
23
(4,715)
161
(11,751)
523
(44,351)
2003 311
(21.917)
62
(18,830)
36
(6,401)
9
(391)
418
(47,539)

 

私たちは、こうした地道なとりくみが、やがて、大きな力になると確信しています。
私たちは、国際的なとりくみも重視してきました。
昨年度は、アメリカのコネ チカット州の大学から招かれて、山田事務局長が広島被団協の木谷事務局長とともに渡米、学生や市民と交流しました。
また、長崎を訪れたアメリカン大学の学生や、ウズベキスタンからの留学生らとの恒例の交流も行いました。

2007年度には、年間を通して核実験は行われませんでした。しかし、核兵器搭載 可能なアメリカのイージス艦が、長崎県知事や長崎市長の入港回避要請を踏みにじり、長崎港へ入港しました。長崎被災協は、この暴挙に対し、駐日大使館を通して ブッシュ大統領へ抗議文を送りました。

昨年夏の安倍首相の「原爆症認定の在り方の見直し」発言は、これまでの厚生労働省の認定審査に大きな楔を打ち込みました。さらにこのことは、大きな政治問 題となり、各政党が関心を寄せました。
これは、全国で305名に上る原告の皆さん 方と弁護団、支援の皆さん方の奮闘によってもたらされたものでした。国民的な関心が高まる中で、厚生労働省は自らが選任した委員による「原爆症認定の在り方に 関する検討会」の現状追認の「報告」を採用することさえできず、たまたま同時期 にまとめあげられた与党プロジェクトチームの意見をとりいれ、「新しい審査の方 針・案」を策定し、原爆症認定審査会(正しくは「疾病・障害認定審査会 原子爆弾被爆者医療分科会」)に示して、同分科会に決定させ、ことし4月からこの「方針」 にもとづく原爆症認定審査をはじめたのでした。
目下のところ、審査は3.5キロ以 内での被爆者などが5つの特定の疾病のうちのどれかを発症している場合に限定する「積極的認定」の枠内に留まっており、この「審査の方針」が被爆者を線引きし ていることを含め、今後の展開に目が離せない状況です。

私たちの相談活動は、いっそう重要になってきています。
私たちは、日常的な相談活動はもとより、県の委託事業としての県下巡回相談会にも力を注ぎ、現行制度の活用を訴えてきました。ただ残念なことに、県は財政上の理由で、この県下巡回相談会を中止しました 。
このあと、長崎市外の被爆者の相談を地方の行政が担うこ とができるのか、きわめて憂慮すべき状況にあるといわざるをえません。長崎市及 びその周辺地域の被爆者からの相談は急増しています。長崎被災協には、現在、資 格を取得した9名の相談員がいて活躍していますが、この点についてもさらに充実する必要がありそうです。

被爆者が高齢化する中で、これまでのスタイルでの活動は困難になりつつあります。支部や地域の会での集まりもむずかしくなりました。その一方で、高齢化すれ ばするほど、お互いの連絡を密にする必要も生じています。この点では、この一年、ほとんど手を打つことはできませんでした。
財政問題もまた重要です。この1年間にお寄せいただいた募金、寄付は、総額 140万円に達しました。また、語り轡ぐ会のメンバーによる協力も130万円を越えています。これらのことに対しては、心からお礼を申上げるとともに、いよいよ重要な段階にさしかかった被災協運動への一層のご協力をお願いするものです。

ともあれ、被爆者にとって重要な時期だけに、運動を停滞させないための財政基盤の確立と組織体制の整備が、大きな課題になっています。

千葉での久間防衛相の発言要旨

日本が戦後、ドイツのように東西で仕切られなくて済んだのはソ連が日本に侵略しなかった点がある。
当時、ソ連は参戦の準備を していた。米国はソ連に参戦してほしくなかった。日本との戦争に勝つのは分かっているのに日本はしぶとい。しぶといとソ連が出てくる可能性がある。日本が負けると分かっているのにあえて原爆を広島と長崎に落とし終戦になった。長崎に落とすことによって、 ここまでやったら日本も降参するだろうと。 そうすればソ連の参観を止めること ができると(原爆投下を) やった。
幸いに北海道が占領されずに済んだが、間違うう北海道がソ連に取られてしまった。その当時の日本なら取られて何もする方法がない。
長崎に落とされ 悲惨な目に遭ったが、あれで戦争が終わったんだとい う頭の整理で、しようがな いなと思っている。それに 対して米国を恨むつもりは ない。膀ち戦と分かっている時に原爆まで使う必要があったのかどうかという思いは今でもしているが、国際情勢、戦後の占領状態な どからすると、そういうことも選択としてばあり得るのかなということも頭に入 れながら考えなければいけない。
2007.7.1.長崎新聞

平成19年度 報告県託事業被爆者巡回相談会報告

 

実施日時 実施場所・参加者 講師及び講演タイトル
2月27日
13:00~15:00
西海市大島町・崎戸町
大島農村勤労福祉センター
(11名)
石橋歯科医院 石橋民朗院長
高齢者と歯の健康
2月28日
09:00~11:30
西海市西海町
西海公民館
(20名)
なし
2月28日
14:00~16:00
西海市大瀬戸町
大瀬戸コミュニティセンター
(32名)
西海市国民健康保険・雪浦診療所
山道謙医師
最近の医療事情について
3月11日
13:00~15:00
東彼杵郡波佐見町
波佐見町総合文化会館和室
(17名)
こうの内科医院
河野宏院長
長寿の秘訣
3月12日
09:00~11:00
東彼杵郡東彼杵町
総合会館保健センター会議室
(15名)
なし
3月12日
13:30~15:30
大村市
シーハット大村コミュニティセンター
(220名)
神田クリニック
神田和亮院長
からだにやさしい漢方治療を目指して

相談会の内容
①現行法における被爆者の諸手当などの説明
②地元の医師による健康講話
③映画「人間をかえせ」など1本
④質疑応答、個別の相談

※医師による健康講和
元気に長生きをするための健康講話は、身近な内容でわかりやすく、参加者に好評でした。
また、後期高齢者医療制度についてのお話は、今までの制度がどう変わるのかよく知らなかった 参加者にとって衝撃的で、質疑もたくさん出ました。
ていねいに答えていただき、このような高齢者 いじめの制度だということを、まわりの人々に知らせ、高齢者はもっとパワーを出して麦えていこうと話されました。

※個別相談
10年ほど前に巡回相談会を開催した地域でしたが、ほとんど前回の倍以上の参加者で、 巡回相談会への関心の高さを感じました。
また各会場での質問、意見が多く寄せられ、たくさんの個別相談がありました。
特に大村市では個別相談が35件あり、相談員は対応に追われました。
一番多い相談は原爆認定申許についてでしたが、他にも健康管理手当をまだ受給していないとの相談が数件あり、介護や2世対策への要望なども寄せられました。