2008年1月9日発行の新聞『被団協』291号の内容をご紹介します。
『被団協』291号目次 | |
1・新年のごあいさつ
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2・『聖地ナガサキから見た九条』井上ひさし氏講演 | |
3・現状追認の検討会(与党にも新たなる火種) | |
4・原因確率って何でしょう | |
5・長崎被災協12月のうごき | |
高年齢化は進んでも、精一杯頑張りましょう
明けまして、おめでとうございます。 思い返すと、昨年もいろん なことがありました。
原爆症の確定を求める集団 訴訟では、大阪、広島につづいて、1月には名古屋で、3月には仙台と東京で、そして7月には熊本と、各地裁で、それぞれ原告勝訴の判決があり、いずれも厚生労働省の認定のあり方をきびしく指弾したのでした。こうした裁判所での国側6連敗という状況と、盛り上がる支援運動に、安倍前首相は、8月5日には広島 で、同9日には長崎で、被爆者代表を前に「原爆症誰定のあり方を見直す」と言わざるをえませんでした。
ところで「原爆投下は仕方がなかった」発言で、久間章生防衛大臣が職を辞したのも 昨年の夏のことでした。長崎の被爆者5団体(被災協、原爆遺族会、手帳友の会、手帳友愛会、平和センター被爆連)は、ただちに抗議し、発言の撤回を求めましたが、彼は発言の撤回も謝罪もしませんでした。
被爆の体験を踏まえて策定 された長崎市国民保護計画も、 県が協議をすすめようとせず、 年を越しました。
こうした中で、次の世代へ 被爆体験をきちんと引き継ごうと、被災協結成50周年記念事業としてとりくんだ証言集『明日に生きる着たちへ』も、9月に発行、県内の学校をはじめ各方面への配布がすすんでいるところです。
被爆者の高齢化はすすむと はいえ、ことしも精一杯がんばろうではありませんか。
『聖地ナガサキから見た九条』=井上ひさしさんが講演=
12月16日午後2時から県九条の会と9粂フェスタ実行委員会の共催で、井上ひさし氏の講演会がひらかれ、会場の長崎大学中部講堂は、800人の参加者で埋まりました。
「九条の会」の呼びかけ人 の1人で、作家の井上ひさし氏は、「聖地ナガサキから見た九条」のテーマで、予定の時間を超え講演、具体的な例を挙げながら、「九条を守るだけでなく、軍事同盟に頼らず、 世界の平和を創りあげること が大切」と訴えました。
このあと、県下の「九条の会」の代表がステージに集り、それぞれにプラカードや横断幕、幟などで参加者にアピールしました。なお全国の「九条の会」は、11月末に6千8
百に達したと報告されました。
新たに2人が提訴,長崎の原告は45人へ =原爆認定集団訴訟=
12月21日、原爆症認定集団訴訟へ新たに二人の被爆者が加わりました。
今回、訴状を 提出したのは、長与町の川原進さん(入市被爆)と佐世保の平野益子さん (2・7キロ直爆)で、二人とも悪性腫瘍。
二人の提訴で、集団訴訟の原告は47名(第2次訴訟の原告は18名)となりました。
なお全国では302名の原告が17地裁と7高裁で訴訟にとりくんでいます。
長崎地裁での次回の裁判は l月21日午後1時10分から。
長崎県原水協が被爆者150人へ年末見舞金
長崎県原水協から被災協の150人へ、ことしも恒例の 年末見舞金が届き、支部長・ 会長さんの手でそれぞれに配布されました。
市従組からは「ちひろカレンダー」
長崎市役所従業員組合からは、50人の一人暮らしの被爆者へ美しい 「ちひろカレンダー」が贈られました。
現状追認の「検討会」与党案にも新たな火種
=原爆症認定をめぐり=
12月17日、厚生労働省の「原爆症認定の在り方に関する検討会」は7回目の会合をひらき、「報告」を厚生労働省へ提出しました。
この「報告」は、討論の中ではこれまでの認定審査のあり方について、かなり多方面からの積極的な発音があつていたにもかかわらず、
現状を追認し、DS86(DS02)というこれまでも誤差が指摘されてきた初期放射線評価システムやそれを基礎とする原因確率に固執する内容となっています。
そこには、これまで6つの地裁での判決でのきびしい指摘にもふれず、 この間の認定審査のあり方に対する反省などみられません。
厚生労働省は、早速、この「報告」を裁判の証拠に申請
この「報告」を手にした厚生労働省は、12月25目付で、 長崎地裁へ、この「報告」を原爆症誰定集団訴訟の証拠と して申請しました。
厚生労働省がすすめてきた認定審査の正当性を、この「報告」で立証しようというのです。このことだけをみても、この「報告」の内容がわかります。
与党のプロジェクトチームも改善案を首相へ提出
12月21日、与党のプロジェ クトチームも、これまでの検討をとりまとめ、福田首相へ改善策を提出しました。
この内容は、別掲のように典型的な症例については審査なしでの認定を掲げるなど積極的な面はあるものの、いわゆる「線引き」が持ち込まれるなど容認しがたい面もありました。
こうした中で、チームの一員でもある冨岡勉議員が22日の報告集会で、「原因確率については破棄したものではなく、検討課題の一つ」
と発言したことが新たな問題 となっています。
いまこそ導勃の発展を
私たちをとりまく情勢は、いまこそ国家補償の精神にも とづく被爆者対策の実現をめざす運動を発展させることの大切さを示しています。
■「検討会」の「報告」の要点
①DS86は、初期放射線の被曝線量をはかる方法として妥当。
②原爆症認定は、被曝線量及び原因確率またはしきい値による評価とともに、急性症状等も考慮して行うのが適当。
③原因確率が50%を超える場合は、分科会の審査を省略すべきだ。
その率が10%未満の場合は、急牲症状などについて第三者の証言など
信頼できる資料があれば、総合判断の対象とする。
■与党プロジェクトチームの「とりまとめ」の要点
①現実的救済につながっていない「原因確率論」を改める。
②3・5キロを目安にした範囲内出の被爆者、100時間以内の入市者、
その後の入市者でも1適間程度滞留した被爆者などで典型症例については、格段の反対すべき理由がない場合は積極的に認定する。
③これら以外の被爆者についても、個別審査の上、総合的判断を加え、認定する。
原因確率って何でしょう??
2001年4月にできた「審査の方針」で登場し、「原爆症認定の在り方に関する検討会」の「報告」でも固執されている 「原因確率」とは一体何なのでしょうか。
確率とは、ものごとが起りうる割合のことです。原爆症について使われるときは、原爆の放射線によって病気が引き起こされる割合(危険性)を指します。たとえば2ラドの放射線を浴びた20歳の男性が千人いて、原爆のせいでで白血病なった人が10人だったとすると、その割合(危険性)は1%ということになるのです(ラドは放射線の単位)。
厚生労働省は、その割合が 10%未満なら、無視してよい といってきました。だから原爆症の認定を申請した人の原因確率を計算して、それが8%なら却下ということになるのです。確率というのは、全体の中での危険性をいいます。たとえ1%未満でも、その危険性は「ある」のです。
その危険性は、具体的な病気となって、ある人に降りかかってくるのです。そんな病気が起るはずはないと無視してよいはずはありません。それに、放射線の量を計算する時には、原爆の爆発時の放射線(初期放射線)だけしか考慮さ れていないのです。
こんなやり方で、被爆者を切り捨ててきたし、これから も切り捨てようというのが 「原因確率」 という刃物なの です。(山田)
=長崎被災協12月の動き=
1日・支援する会す街頭宣伝
3日・集団訴訟勝利をめざす中央大行動 長崎から6名参加 →4日まで
8日・不戦の集い ・支援する会街頭宜伝
9日・平和研究謙座
10日・被爆体験者の会臨時総会であいさつ (山田)・厚労省の検討会の素案を受けて記者会見(山田)
13日・諌早市議会で陳情趣旨説明(前道、山田)
14日・被爆者5団体+二世の会で長崎市原援協へ要請
15日・支援する会街頭宣伝
16日・県九条の会・9粂フェスタ 実行委負会の共催で井上ひさし講演会
17日・厚労省・検討会が「報告」を提出 記者会見(森内、山田)・支援する会の運営委・団体会委員代表者合同会議
18日・住吉トンネルの公開について長崎市長と会談
19日・恵の丘を慰問(谷口、坂本、柿田)
21日・第2次訴訟で川原、平野両名が追加提訴
22日・自民・冨岡代書士が与党プロジェクトの「とりまとめ」について報告会ひらく・支壊する会街頭宜伝
28日・民主党の「被爆者団体との交流会」に出席