2008年8月9日発行の新聞『被団協』297号の内容をご紹介します。

◇今年3月末の被爆者の実態◇

原気になる健康管理手当の受給率低下
進む高齢化と被爆者数の減少

1983年3月末には37,2179人を数えた全国の被爆者数は、ことしの3月末には24,3692人となりました。昨年に比べても、8,142人の減となっています。長崎県下の被爆者数も、昨年が66,128人だったのに、今年は63,938人と2,190人の減少です。九州ブロックの各県の状況は、別表のとおりです。

被爆者の平均年齢も、全国平均では75・14歳と昨年より 0・55歳高くなりました。
諸手当の受給状況は、医療特別手当が昨年より71人減少して2,184人、健康管理手当受給者も10,876人減 って、213,209名となっています。
なお、被爆者総数に占める 受給者の比率は、医療特別手 当が0・9%で昨年と変らず、健康管理手当は昨年が89%だったのに対し、ことしは87,5%と低下しています。
長崎県の場合も、健康管理手当の 受給率は昨年の98,58%から96,08%へと低下してきており、高齢化した被爆者へのさらにきめ細かい相談活動が必要なのではないでしょうか。

九州各県の被爆者数(2008.3.31)


県名

被爆者数
原爆症認定数
健康管理手当受給者
福岡 8,900 70 7,573
佐賀 1,652 16 1,452
長崎 63,938 447 61,431
熊本 1,775 19 1,487
鹿児島 1,243 9 1,114
宮崎 753 16 656
大分 956 9 686
沖縄 248 3 195
合計 79,464 589 74,594



◇今年はこれで2隻目◇
アメリカの原子力空母、佐世保へ
被災協も抗議文を送付

7月28日、アメリカの最新鋭原子力空母の一隻ロナルド ・レーガンが佐世保港に入港 しました。
07年2月以来2度目の入港です。また、ことしは2月のミニッツが入港しており、年間2回の入港は、最近見られない異常な事態となります。
7月25日に開催されていた第3回(拡大)理事会で、レーガンの入港を報告した山田事務局長は、ちょうど40年前 のエンタープライズの佐世保港に入港に触れ、「あれが核の傘が強化される第一歩だった」と語り、いま米軍再編という名で、日本の米軍基地がアメ リカの世界戦略のための基地として強化されてきている現 われだと指摘しました。
長崎被災協は、27日、プッシュ大統領へ抗議文を送りま した。


◇被災協第3回理事会◇
夏のとりくみを決定

長崎被災協は 7月25日午後2時から第3回拡大理事会をひらき、夏のとりくみについて協議し、
①原爆症認定問題の現状について地域の会で話し合い、理解を深める。
②福田首相へ被爆者代表との懇談を要請する。
③長崎市議会議員、県議会議員へ私たちの要求への賛同を求める

④反核・平和の集会に参加する
⑤機会あるごとに原爆被害の実態を語る。
⑤8月 15日の「不戦の集い」にも参加する。
⑥沖縄での相談事業講習会を成功させるため参加者を募る

などを決めました。

◇2020年には核兵器廃絶を!!◇
いまなお低い平和市長会議加盟率

成否の鍵2010年は再来年
2000年のNPT再検討会議は、核兵器廃絶への「明確な約束」を盛り込んだ決議 を全会一致で採択したのでしたが、つぎの2005年の会議では一転して何らの合意もえらずに終わったのでした。
こんどの開催は2010年なので、あと2年後なのです。
あと2年で、世界は核兵器廃絶へ向って、新たな1歩を踏み出すことができるのか?
核兵器廃絶を求めて努力し てきた被爆者団体にとっても 大きな課題です。

一方、「2020ビジョン」を提唱し、独自の立場から2020年には核兵器廃絶を!ととりくむ平和市長会議は、 2010年を核兵器禁止条約の発効の年と位置づけ、その上に立って2020年には全ての核兵器の解体を実現するとしてきました。その2010年は再来年に迫っているの です。

昨年は、核兵器廃絶の運動 にとって画期的だった国際司法裁判所の「勧告的意見」から10年目の年でした。さまぎまなとりくみも展開されましたが、核兵廃絶への道は容易ではありません。

こうした現状を打開するためにも、国内の自治体の中に平和市長会議加盟の自治体をふやすことが大切と、日本被団協でも力を入れることになりました。長崎県下の自治体(市と町)は、下の表のとおりで、賛同自治体を増やすこ とは秋の課題の一つです。

【解説】平和市長会議とは1982年に当時の廣島市長が提唱した「核兵器廃絶へ向けての都市年連帯推進計 画」への賛同団体で構成されたのが平和市長会議。ことし
6月末、世界130国、2,317都市の賛同を得ていると発表されています。会長は広島市長、副会長は長崎市長ほか9市長。)

 

県内で平和市長会議に加盟している自治体
長崎市、島原市、平戸市、松浦市、対馬市、五島市、西海市、雲仙市、南島原市、 東彼杵町、川棚町
以上11自治体

 

 

県内で平和市長会議未加盟の自治体
佐世保市、諫早市、大村市、 壱岐市、長与町、時津町、波佐見町、小値賀町、江迎町、 鹿町町、佐々町、新五島町
以上12自治体

九州ブロック相談事業講習10月13日出発、15日帰着
仙台・大阪両高裁で判決

ことしの九州ブロック相談事業講習会は、沖縄で開催されます。
期日は10月13日・14日ですが、長崎被災協としては、15日まで沖縄に滞在し、ひめゆりの塔、平和祈念公園、首里城などをめぐる計画が、7月25日の理事会で承認されました。
出発は10月13日午前10時10分 長崎空港発で、15日午後5時25分長崎空港帰着の予定です。経費は7万円(長崎空港往復のバス代、13日の那覇空港から詳習全会場までのバス代は各自負担)。
講習会では十分に学びあい、懇親会では九州各県の被爆者と交流し、そして沖縄をしっかり体験しようではありませんか。
参加ご希望の方は、地域の会または長崎被災協までご連絡下さい。
 仙台では要医療性を積極的に容認
仙台高裁の二人はともにガ ンでした。手術後の後障害でのかなりの期間の通院治療が 原爆症認定に必要な「要医療性」に当たるかどうかが争いの焦点でしたが、判決でははっきりとこれを認めました。
大阪では貧血も原爆症と認める。
大阪高裁での原告は9名でしたが、うち4名は「新しい審査の方針」の積極的認定に 該当しましたが、あとの5名はその対象ではありませんでした。
しかし大阪高裁は、被爆状況、その後の健康状態などを勘案し、甲状腺機能低下 症、貧血なども原爆症と認定したのでした。
却下処分は違法
こうして仙台高裁・大阪高 裁は、原告全点に原爆の放射 線起因性、要医療性を私め、 却下は違法と断じました。


◇読書のコーナー◇
狂気の核武装大国アメリカ
ヘレン・カルデイコット著

日本語版への序文を読んで
書店で「日本語版への序文」 を読んで、いまの世界の戦争と平和の状況の中での日本の位置についての適確な指摘に驚きました。そしてためらくことなくレジへと向かったのでした。

核戦争になると?
これは第二章のテー マ。核戦争被害についてはよく知ってるよ、と拒絶しないで下さい。私たちが体験したTNT火薬に換算して 20キロトンとかの原爆とは
違って、1000キロトンの 核弾頭が少なくとも二個は爆発した時の被害の想定です。

核兵器廃絶は不可能ではない
クリントン大統領は折角の チャンスをつぶしてしまった、と著者は言います。もし彼が決断していたら、巨額の軍事予算は国民の生活向上に振り
向けられただろうと。それは いまの日本についてもいえる ことではないでしょうか。

それを阻んだものは何か
そのからくりを明らかにするために、著者は具体的な資料を駆使して読者に迫ります。それは、著者がいう「準核保有国」日本の国民にも大事なことです。

集英社新書・777円 (山田)

 


長崎被災協7月の動き

1日・祈念像前での座り込み (県生協連)
2日・雨のため祈念像前での座り込みを屋内集会に変更 (民医連)
3日・祈念像前での座り込み (原水禁)
4日・祈念像前での座り込み (全団体)
5日・支援する会街頭宣伝 (原水禁)
〃 ・県弁護士会が「憲法シンポ」を開催
7日・集団訴訟第2次訴訟口頭弁論
〃 弁護団、原告団、支援する会で知事と面談
8日・原対協理事会(谷口)
9日・新開『被団協』発送作業
〝 ・原水禁9の日座りこみに参 加 (山田、柿田)
11日・日本被団協代表理事会(山田)→12日まで
16日・熊本の訴訟支援で福岡高裁へ (山田)
18日・日本共産党結成祈念祝賀会(谷口)
19日・全国区弁護団連絡会・支援ネット合同会議 (山田)
22日・支援する会(拡大)運営委員会 (谷口、山田、柿田)
23日・放射線影響研究会理事会 (谷口)
24日・県九条の会呼びかけ人会議 (山田)
25日・第3回(拡大)理事会
27日・核実験抗議・県下交流集会 (山田)