2008年12月9日発行の新聞『被団協』302号の内容をご紹介します。
◇被災協第5回理事会◇
「核兵器なくせ」へ大きな一歩を決
原爆症認定でも具体的行動へ
長崎被災協は、11月25日午後2時から本年度第5回(拡大、)理事会を開き、これからの被災協運動について協議、決定しました。
会議ではまず、核兵器廃絶と原爆被害への国の償いの実現を目指すことについて、 事務局の提案をめぐり検討、 再来年2010年に開かれるNPT(核不拡散条約)再検討会議を実効あるものにする ため、日本被団協が構想している国連での原爆展と遊説のための代表団派遣を成功させよう、ということになりました。
また、今月は基本懇が答を出した月でもあり、戦争被害受忍論を許さないことも確認しました。ついで理事会では、原爆症認定問題を取り上げ、福岡高裁での審理がはじまり、長崎地裁でも山場を迎える集団訴訟への対応と7000人の待機者を出している認定問題などについて話し合いました。 このことについては、改めて下段に掲載しています。
福岡高裁での審理はじまる 貸切りバスで傍聴へ
原爆症認定を求める裁判も、 福岡高裁での審理が、12月22日からいよいよはじまります。長崎地裁では、原告27名中20名が原爆症と認められましたが、原爆症認定と合わせて求めていた不当な却下処分22日の裁判のため、「支援する会」では大型の貸し切りバスを使って、支援の傍聴団を派遣することになりました12月22日は、長崎駅横の大村競艇場ゆきバス乗り場に午前9時40分に集合し、同10時に出発、午後1時半からの裁判を傍聴、現地での集会ののち、長崎へ着くのは午後6時頃になる予定です。いま傍聴団への参加を募っています。バス料金は不要。昼食は、「支援する会」で用意します。参加できる方は 長崎被災協(電話095-844-0958)へご連絡を、と「支援する会」では一人でも多くの参加を呼びかけています。
県は控訴を取り下げよ 被爆者団体が声明
寝たきりのため被爆者健康手帳の申請ができない韓国人被爆者鄭南寿(チョン・ナムス ウ)さんが起こした裁判で、長崎地裁が長崎県に手帳交付を命じたことに対し、長崎県は控訴した一方で、法施工後鄭さんが改めて手帳申請をするなら過去の健康管理手当相当の見舞金を支給すると提案、鄭さんは拒否しました。
被爆者5団体(被災協、遺族会、友の会、友愛会、被爆連) は11月21日、控訴を取り下 げ、ただちに鄭さんへ手帳を交付するよう県へ抗議するとともに、11月28日には、下の声明を発表、「県の態度は鄭さんに裁判の取り下げを迫る姑息な手段」と厳しく指摘しました。
被爆者5団体による抗議の声明
在外被爆者「鄭南寿」さんへの長崎県の「見舞金」問題こついて(声明)
敗訴した長崎県は控訴する一方で、11月21日、鄭南寿さん等に対し「裁判で支給を認められた健康管理手当の12月までに 2008年11月28日
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「積極的認定」以外は放置か?
必要な「審査の方針」の再検討
十一月二五日にひらかれ た今年度第5回理事会は、一 面に掲載したように、「新しい 審査の方針」 についてもその間題点を明らかにし、早急な 改善の必要を指摘したほか、 認定審査の遅れについても問 題にしました。審査内容が改 善されたとの情報に、苦しみながらも申請をあきらめてき た被爆者が、申請に殺到した ため、厚生労働省の処理能力 厚生労働省へ」確認したと ころ、現在なお七〇〇〇名余の被爆者が、申請はしたもの の、審査は受けられずに放置 されていることがわかりまし た。この人たちが審査を受け られるのは、一年先か一年半先か分からないと言われてい ます。原爆症認定を申請した 被爆者は、すべてガンをはじ めいろんな病気をかかえてい ます。たとえ厚生労働省の予想をはるかに上回ったとして も、厚生労働省にはこれらの 申請を早急に審査し、認定し てゆく責任があるのです。 理事会での検討結果二五日の理事会では、対応 について次の5項目を検討し ました。
① 行政不服審査法にもとづ いて厚生労働省がしなければならないことをしていないこ と (これを法律上 「不作為」 といいます) に対しての不服 申し立てを行うこと。
② 国会議員へ国会での追及を要請すること
③ 市議会・県議会、長崎 市の原援協、広島・長崎の県・ 市で構成している八者協に政 府へはたらきかけを要請すること。
⑤市民・県民にこの実態を 知ってもらうこと。
このうち①は法律的な効力 をもつものの、厚生労働省が 不誠実な対応をすることも考えられるので、その準備をす すめながら、十二月になった ら②~⑤にとりくむことを理 事会は決めたのでした。
緊急に必要な現行「審査の方針」の再検討
こうして8ヵ月の認定審査の実態をたどると、「新しい審査の方針」の見直しは、当面の急務となっています。
原爆症認定状況(08年4月7日~11月17日)
space | 4月 認定数 |
5月 認定数 |
6月 認定数 |
7月 認定数 |
8月 認定数 |
9月 認定数 |
10月 認定数 |
11月 認定数 |
合計 認定数 |
第1部会 その他の ガン |
60 | 39 | 55 | 78 | 41 | 75 | 146 | 50 | 544 |
第2部会 消化器系 ガン |
81 | 74 | 55 | 54 | 62 | 95 | 138 | 120 | 679 |
第3部会 白血病等 |
5 | 11 | 12 | 11 | 30 | 12 | 0 | 0 | 81 |
第4部会 白内障等 |
3 | 1 | 2 | 2 | 0 | 2 | 0 | 0 | 10 |
合同部会 積極的 認定外 |
0 | 0 | 12 | 18 | 17 | 21 | 0 | 18 | 86 |
合 計 | 149 | 125 | 136 | 163 | 150 | 205 | 284 | 188 | 1,400 |
このほか、原因確率10%以上で、原爆症との認定に疑いがないと事務局で判断したもの125
認定数=審査会での認定1,400+事務局での認定125=1,525(内積極的認定外 86)
◎第1部会=主に消化器系以外のガン ◎第2部会=主に消化器系のガン
◎第3部会=白血病、副甲状腺機能充進症 ◎第4部会=白内障、心筋梗塞
「放置できない認定審査の遅延」 現在7,000人が待機中
11月25日にひらかれた今年度第5回理事会は、上段に掲載したように、「新しい審査の方針」についてもその間題点を明らかにし、早急な改善の必要を指摘したほか、認定審査の遅れについても問題にしました。審査内容が改善されたとの情報に、苦しみながらも申請をあきらめてきた被爆者が申請に殺到したため、厚生労働省の処理能力を超えてしまったのです。
審査待ちが7,000人
厚生労働省へ確認したところ、現在なお7,000名余の被爆者が、申請はしたものの、審査は受けられずに放置されていることがわかりました。この人たちが審査を受けられるのは、1年先か1年半先か分からないと言われています。
原爆症認定を申請した被爆者は、すべてガンをはじめいろんな病気をかかえています。たとえ厚生労働省の予想をはるかに上回ったとしても、厚生労働省にはこれらの申請を早急に審査し、認定してゆく責任があるのです。
理事会での検討結果
25日の理事会では、対応 について次の5項目を検討しました。
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このうち①は法律的な効力をもつものの、厚生労働省が不誠実な対応をすることも考えられるので、その準備をすすめながら、12月になった
ら②~⑤にとりくむことを理事会は決めたのでした
許すまい、戦争被害受忍論
12月は基本懇意見から28年目の月
基本懇とは1979年に厚生大臣の私的諮問機関として設置された原爆被爆者対策基本問題懇談会のことで、1年半の論議ののち1980年12月に意見「原爆被爆者対策の基本理念及び基本的在り方について」を答申しました。
なぜこの懇談会がこの時期に設置されたのでしょう。それは1978年に、最高裁がそれまでの「戦争の被害は国民はがまんするのが当たり前だ」という通説を乗り越えて「原爆医療法には、
国家補償的配慮がある」とい う判決を出したからです。
当時、原爆の被害への国家補償を求める被爆者の運動は大きく盛り上がっていました。のままでは被爆者の声が国民の世論になってしまうと恐れた厚生省は、それを押しつぶそうと基本懇に「意見」を出させたのでした。
基本懇は「原爆被害は悲惨 きわまりないもの」であり、原爆は「人間の想像を絶した地獄現出した」と言った上で、だが戦争中の被害だから、国民が等しく受忍すべきものだと力説したのです。この基本懇の「意見」は、いまも厚生労働大臣に引き継がれているのです。
12月は、この基本懇・意見が発表されて28年目の月です。私たちは改めて戦争被害受忍論を許さない決意を固め合おうではありませんか。(山田)
長崎被災協11月の動き
3日・11・3県九条の会主催「池田香代子・土山秀夫対話集会」
9日・いきいきコープ広報活動(柿田)
10日・日本披団協代表理事会(山田)
11日・日本披団協全国都道府県代表者会議(谷口、山田、柿田、長濱、森内)
17日・年末調整説明会(柿田)
18日・韓国人被爆者鄭南寿さんの被爆者健康手帳交付を巡る裁判で敗訴した県が控訴
19日・長崎被災協相談員の会
20日・集団訴訟を支援する会運営委員・団体会員代表者合同会議(山田・柿田)
21日・鄭南寿・さんの裁判で控訴した県に被爆者5団体が合同で抗議
25日・第5回(拡大)理事会
28日・各被爆者団体合同で鄭南寿さん問題に対する声明を発表(山田)
29日・原爆症認定集団訴訟で街頭宣伝
〃・医療と福祉を守る懇談会が総会(柿田)