2009年8月9日発行の新聞『被団協』310号の内容をご紹介します。

◇核兵器の廃絶への決意新たに◇
 64回目を迎えた8月9日 
月末には総選挙の結果も

 私たらは、64回目の8月9日を迎えました。
チェコ の主都プラハでのオバマ大統領の演説以来、核兵器廃絶への曙光がみえはじめた中での8月9日でした。

ところで、日本では「核密約」について、元政府関係者が「密約はある」と証言をしているのに、政府側は、「密約はない。再調査するつもりもない」の一点張りで、アメリカの核の傘にしがみつく姿勢を変えようとしていません。
民主国家を横棒する国で、「密約」の上に成り立つ政治が許されるはずはないのです。国民には、政治の真実を知る権利があるはずです。核兵器廃絶へむけて世界の流れが変わろうとしているときだけに、日本の政敵のあり方の透明性が求められています。

原爆症認定についてもあいまいな政府の姿勢

原爆症認定のあり方をめぐっても、5月28日の東京高裁の判決をふまえて検討に入り、8月6日、9日までに結論を出すというのが、政府の約束でした。8月1日現在、政府の姿勢はあいまいです。

風通しのいい政治へ
8月30日は衆議院の投票日。みんなの力で風通しのいい政治へ転換させましょう。

 



 政府は「核密約」を明らかにせよ 
  被爆者5団体が抗議文送付

沖縄返還時に結ばれたという「アメリカ軍の核兵器の持ち込みは容認する」という 密約について、もう一方の当事者であるアメリカではすでに公文書も公開されているというのに、日本政府はかたくなにその存在を認めず、「密約は存在しない」という姿勢を貫いてきました。
ところが最近かつての外務省の次官クラスでその事実を認める人があいつぎ、さらに元外務事務次官村田良平氏は実名でその事実を証言しました。こうした経過を重視した長崎の被爆者5団体は、それでもなお密約の存在を否定する政府の姿勢は、民主主義に反するゆゆしき態度と、共同で抗議文を作成、総理大臣と外務大臣へ送りました。

 

核持ち込みの密約に関する抗艶文

自民党の河野太郎外務委員長は、7月10日、日米間における核持ち 込み密約の存在を、報道関係者に実名証言した村田良平元外務事務次官から直接聞き取り調査を行った結果、政府の密約の存在を認め、これまで否定してきた政府答弁の撤回を求める意向を示した。

与党の常住委員長が、このように政府の公式見解を否定せざるをえなくなったのは、村田良平氏ら4人の次官経験者の証言により、核密釣の内容を記した英語の「秘密議事録」の他、密約本文である1960年1月6日付の「秘密議事録」の存在が明らかになったことによるもので ある。

しかし、このような元外務省次官等の証言にもかかわらず、河村建夫官房長官は13日の衆院海賊対処特別委員会でも「密約はないと歴代の首相、外相が答弁してきた」と従来の答弁を繰り返したが、このような暴言は、到底許されるものではない。

言語道断、国民無視、民主国家の自殺行為と断じざるをえない。
政府ほ速やかに核持ち込みに関する日米間の一連の密約について明らかにすると共に、これまでの虚偽の答弁を撤回し、広く国民に対し、速やかに謝罪すべきである。
また、このような虚言、疑惑を生じさせないためにも、早急に「非核 3原則」を法制化そ、我が国の核兵器廃絶に対する基本的姿勢を明確にすることを、長崎県被爆者6団体として、ここにあらためて要求する。
以 上

財団法人長崎原爆被災者協議会会長
谷口 稜曄
長崎原爆遺族会会長
正林 克但
長崎県被爆者手帳友愛会会長
中島 正徳
長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会議長
川野 精一
長崎県被爆者手帳友の会会長
井原 東洋一


被災協第3回理事会ひらく
秋には「学習集会」を開催

7月29日午後2時から、長崎被災協は第3回(拡大)理事会を開いて、夏から秋へかけてのとりくみを協議し確定しました。
理事会では、まず、8月8日・9日を中心に20を越える会場で被災協の会員が被爆体験の継承などで活躍することを確認したうえで、各種集会の成功へとりくむこ と、核兵器廃絶についても、 原爆症認定問題でも、重要な時期を迎えているので、秋には田中重光さんの訪米報告も兼ねた学習集会を開くこと、11月27日・28日に長崎市ロワジールホテルで開催する「九州ブロック相談事業講習会」を成功させること、などを決め午後4時閉会しました。

  =田中重光さん(矢の平)が渡米

アメリカの「ヒロシマ・ナガサキ平和委員会」の要請を受けて、長崎被災協の理事・ 田中重光さん(矢の平支部長) が、埼玉の土田和美さん、東京の長久勝之さんとともに、日本被団協のアメリカ首都圏反核遊説の旅に、8月4日成田発の便で、元気に渡米しました。成田に帰ってくるのは 8月14日の予定です。

  


=九州の被爆者の実態=
 「減少続く被爆者の数」 
長崎でも年間2,123人の減

 2008年度の被爆者関係の数字(2009年3月31日 現在)が発表されました。
九州各県の、被爆者数など は、下の表の通りです。

 

九州の被爆者の現状    (2009.3.31現在)

県 名
被爆者数
原爆症認定数
健康管理手当受給者数
福 岡 8,657 114 1.7% 7,490 86.5%
佐 賀 1,581 44 4.0% 1,372 86.8%
長 崎 61,814 1,111 1.8% 56,616 96.4%
熊 本 1,718 60 3.5% 1,400 81.5%
鹿児島 1,178 28 3.9% 1,038 88.1%
宮 崎 722 23 3.2% 629 87.1%
大 分 929 11 1.2% 678 73.0%
沖 縄 241 3 1.2% 1,915 79.3%
九州全域 76,840 1,424
1.9%
74,138
94.2%

本県の2001年以降の推移

被爆者数
原爆症
健康管理手当
2009年 61,814 1,111(1.8%) 59,616(96.4%)
2007年 66,128 588(0.9%) 65,186(98.6%)
2005年 70,034 582(0.8%) 66,943(95.6%)
2003年 73,341 579(0.8%) 69,788(95.1%)
2001年 76,969 573(0.7%) 72,962(94.7%)


%は被爆者に対する比率、数字は3月31日現在


2002(平成14)年3月までは、1万人を超えていた福岡県の被爆者数も、ことしは8千人台となりました。
長崎県の場合も昨年6万3937人だった被爆者数が、1年間に2千123人減少して、6万1814人となって います。2001年と比較してみると、被爆者の数は、1万5千155人の減少となっています。

原爆症認定数は2倍に増えたものの

昨年4月から新しい審査の方針が採用されたこともあ って、本県の場合、それまでは認定される割合は被爆者の0・7% から0・9%だったものが、1・8%に上昇しています。
全国的に 見ても年間の認定者数が200人程度だったものが3千人近くに増え、長崎の場合も下の 右の表のように、580人前後だったものが1千110人へと増えたものの、被爆者数からみると該当する人は わずかに全体の1・8 %程度であり、まだまだ原爆被害の実態に即しているとはいえないようです。ところで健康管理手当てを受けていた人はその手当てを受給できなくなるためです。

 


 
 核兵器廃絶への具体的道すじ 
ヒロシマ・ナガサキ議定書

 長崎市で開催さ れている平和市長会議の重要な課題は、核兵器廃絶への具体的な道筋を示す「ヒロシマ・ナガサキ議定書」を来年のNPT(核不拡散条約)再検討会議で採択されるようにするための方針を作ることです。その「議定書」とは下記に掲げる文書で、2002年までの核兵器廃絶をめざしています。

ヒロシマ・ナガサキ議定書

2020 年までの核兵器廃絶の実現に向けた核不拡散条約(NPT)の補足‐
-仮訳-

核不拡散条約(NPT)締約国の同条約第6条に基づく核軍縮交渉義務の履行を促進するとともに、核兵器の使用と威嚇の違法性を示した1996
年の国際司法裁判所の勧告的意見に基づく全ての国の核軍縮義務の履行を促進するため、全ての局面で核軍縮に取り組む包括的な方策の確立を希求し、

核兵器国が核兵器の取得禁止規定から免除されているという核不拡散条約の差別的性質を継続して認めることは、全ての局面で核軍縮を誠実に追求することと相容れないということを考慮し、

1995年の核不拡散条約再検討会議の「核不拡散と核軍縮のための原則と目標に関する決定」のとおり、全ての核兵器を廃絶することで国際法下の真の平等の回復を図らねばならない点を鑑み、

第1条 本議定書を締約する核兵器国は、以下の行為を直ちに停止する。
(1) 核不拡散条約の下で非核兵器国が禁止されている核兵器取得に繋がる活動全般(2) 核兵器を自国の軍事政策及びその実践に組み入れる活動全般

当該国は合わせて、全ての核兵器及び兵器に利用可能な核分裂性物質を出来るだけ早期に安全な保管場所に厳重に保管するものとする。

本議定書のその他全ての締約国のうち、兵器に利用可能な核分裂性物質を保有する国は、その状況により、本条第1項が核兵器国に対して定めるのと同様の措置をとる。

第2条 本議定書の締約国は、全ての局面での核軍縮に向け、以下の主要な二つの分野について誠実な交渉を行う。
第一分野 本議定書第1条第1項及び第2項による措置を標準化し法制化すること。
第二分野 以下の事項に取り組むこと。
(1) 全ての核兵器の廃絶及び搬送車両、発射台、指令管理システム等の関連配備システムの廃止
(2) 生産・試験施設を含む核兵器システムの取得に関わる全ての基盤施設の廃止及び兵器に利用可能な核分裂性物質の全ての在庫の廃棄
 本条第1項による交渉は、核兵器協定または同様の枠組み合意の設置を目的とする。全ての締約国は、直ちに交渉を開始し、当該目的を達成するまで間断なく交渉
を継続しなければならない。なお、交渉終了までの間、当該交渉のための事務局を設置するものとする。
 本条第1項に規定する第一分野に関する措置については2015 年までに、また第二分野に関する措置については2020
年までにそれぞれ合意と実施がなされるよう、あらゆる誠実な努力を行うものとする。
 核兵器協定又は枠組み合意が定める、若しくは見込む措置全般は、厳格かつ有効な国際的統制を受けるものとし、また核兵器廃絶が達成された場合にこれを確実に
永続できる国際的な機関の設立に備えるものとする。

第3条 本議定書のいかなる規定も、本議定書第2条第4項に規定する国際的機関の設立と運営に向けた協力義務を含む核不拡散条約締約国の核不拡散に向けた義務
を軽減するものではない。



長崎被災協7月の動き

4日・集団訴訟街頭宣伝
・平和宣言起草委員会 (谷口)

8日・弁護団会議 (山田)

9日・新聞『被団協』発送作業

15日・日本被団協代表理事会 (山田)→16日まで

17日・事務局会議

18日・オバマ大統領の来日要請の街頭署名運動 (山田)

21日・相談講習会の会場について ホテル側と打ち合わせ (山田・柿田)
・弁護団会議 (山田・林田)

23日・福岡市で九州ブロック代表者会議 (谷口・山田・横山・林田)

26日・うらかみ9粂の会で被爆者問題の意義について報告 (山田)

27日・核持込み密約に対する抗議についての被爆者5団体の記者会見 (山田)
・原水禁・川野議長就任激励会(山田)

28日・第3回(拡大)理事会