2011年5月9日発行の新聞『被団協』331号の内容をご紹介します。

 エネルギー政策の転換を 
=福島原子力発電所事故問題=
被爆者5団体が政府へ要請

 長崎の被爆者5団体(長崎被災協、被爆者手帳友の会、被爆者手帳友愛会、原爆遺族会、平和運動センター被爆連)は、4月8日、連名で要請書「東日本大震災に伴う福嶋原発災害について」を菅総理あてに送付するとともに、14日には5団体を代表して長崎被災協(山田拓民)、手帳友の会(井原東洋一)、被爆連(奥村英二)の3名が上京、総理には会えませんでしたが、環境副大臣近藤昭一氏、総務副大臣平岡秀夫民らと面談、率直に被爆者の思いを告げ、迅速な被災者の救援とエネルギー政策の転換を求めました。
提出した「要聖書」の概要は、つぎのとおり。
(1)原子力発電に依存するいまの政策を改め、自然エネルギーをふくむエネルギー政策を転換すること。
(2)原発事故災害がこれ以上拡大しないよう、適切な措置を講じること。
(3)流出放射線量についてもあいまいな表現を止め、安全第一の施策をとること。

 


被災者への被災証明書の発行と定期健診の実施など
 日本被団協が政府・東電へ要請

 日本被団協は、4月21日、坪井・谷口の両代表委員と田中事務局長の連名で菅直人総理大臣あてに要請書を送り、原発事故被災者への対応の遅れを指摘するとともに、必要な施策の緊急な実施を提案し要請しました。
その内容はつぎのとおりです。なおこの要請書は総理大臣のほか、経済産業大臣、厚生労働大臣、文部科学大臣、東京電力へ送付されました。

①地震、津波、放射能漏れによる被災者・避難者に、漏れなく罹災証明・被災証明を発行すること。
②福島原発の事故による被害者には、漏れなく健康管理手帳を交付し、年1回以上の定期健診を国の責任で行うこと。
③被災者の暮らしと医療の見通しができるまで、被災者が身をおいている避難所を閉鎖しないこと。
④放射線被害について正確な情報を提供し国民の不安を取り除くとともに、風評被害や被災者に対する差別をなくすこと。
⑤エネルギー、電力政策を原子力依存型から再生可能エネルギーの研究・開発・利用に大転換すること。
⑥このたびの原発事故の深刻さに学び、核兵器の廃絶をすすめること。軍事的対応によって日本の安全を守るという発想をやめ、憲法9条に則り、人類共存をめざす外交優先の平和。安全政策に転換すること。

⑦東京電力は、原発事故の責任を全面的に負い、与えた損害への補償をすること。

 



 ことしの定例評議員会
5月25日(水)に開催

長崎被災協は、5月25日に本年度第1回(通算第5回)の評議員会を開き、昨年度の活動のまとめをし、今年度の活動方針を確立するとともに、昨年度の財政の締めくくりを行い、今年度の予算を確立します。
またことしは役員改選の年ですので、理事、評議員を選出します。さらに、ことしは新しい法人制度への転換を進める年でもあるので、長崎被災協の規約に当たる「定款」の検討もおこないます。
私たちの運動の面でも、国家補償の被爆者援護法を求めるとりくみを大きく前進させる年だけに、そのための計画を立てることになります。

 



 諌早被災協が5月9日に定期総会 

諌早被災協は5月9日の午後1時半から長田町公民館で今年度の総会を開き、活動方針、予算を確立します。

 



 谷口稜曄被災協会長を長崎市政功労者として表彰 

 今年度の市改功労者表彰式が4月1日正午から長崎市役所市議会議場で開催され、長崎被災協会長谷口稜曄氏ら29名に栄えの表彰状が授与されました。
谷口稜曄氏の功済について長崎市は、「多年にわたり被爆者団体の要職あって、被爆者援護の充実と世界恒久平和の実現に尽力し、本市の被爆者援護と平和行政の推進に大きく貢献した」と述べています。受賞した谷口会長は、「思いがけない受賞に身も引き締まる思いです。今回の表彰は私個人になされたのではなく、55年わたる被爆者運動への評価だと
思います。高齢化した私たちですが、これからも、核兵器の廃絶と原爆の被害への国の償いを求めて、がんばります。」



 ▼異議申し立てと厚労省▲ 
=異議を認めたケースはゼロ=
昨年4月から今年4月までの実績

 たとえば原爆症認定を申請したのに、厚生労働大臣が申請者に納得できない理由で却下した場合、申請者が反論し、却下の撤回を求めることを「異議申し立て」といいます。これは法律にもとづく私たちの権利であり、異議を申し立てられた役所は、誠実に向き合わなければなりません。

 左の表は、昨年4月からことし4月までの「原爆症認定申請の却下に対する異議申し立て」への厚生労働省の対応を示したものです。いま、かなりの数の異議申し立てが厚生労働省へ寄せられているはずです。この表で見ると、190件の異議申し立てについて、認められたもの(認容)は1件もありません。「異議」が認められたのはゼロなのです。これでは、異議申し立ての制度は、まさに絵に描いた餅といえるでしょう。長崎市内でもこの時期に11件の棄却例が出ています。
こうしたことの改善を行うための、日本被団協などと厚生労働大臣との「定期協議」は、昨年1月に開かれただけで、その後開かれる気配もありません。

 



被災協の平和講座◇
 昨年度も2万人を超える人たちを対象に 
 
 


 昨年度も、被災協では、小・中学生、高校生や一般の人たちの団体を対象に、被爆体験を語り、核兵器の廃絶を訴え、平和な世界をつくろうと呼びかけるとりくみを続けてきました。例年より若干の減少は見られるものの、被爆者の声に耳を傾けた人の数は、2万1千人を超えました。被災協の『被爆体験を語り継ぐ会』では、メンバーの増員を図りながら、ことしもがんばろうと話し合っています。



 これが私たちが求める「国家補償の被爆者援護法」 

1 ふたたび被爆者をつくらないとの決意をこめ、原爆被害に対する国の償いと核兵器の廃絶を趣旨とする法の目的を明記すること。

2 原爆死没者に償いをすること。
①原爆死没者に対し、弔意を表すこと。
②原爆死没者の遺族に対し弔慰金あるいは特別給付金を支給すること。
③原爆死没者が生き、原爆死を遂げた証しとして原爆死没者名を碑に刻むこと。
④8月6日、9日を原爆死没者追悼の日とし、慰霊・追悼事業を行うこと。

3 全ての被爆者に償いをすること。
①全ての被爆者に被爆者手当を支給し、障害を持つ者には加算すること。
②被爆者の健康管理と治療・療養及び介護のすべてを国の責任で行うこと。

4被爆二世三世に対して、被爆者に準じた援護措置を実施すること。
①被爆二世・三世に関する実態調査を、速やかに実施すること。
②希望する二世に対して、被爆二世手帳を発行すること。
③②の手帳所持者の健康管理と治療・療養を国の責任で行うこと。

5 被爆者健康手帳の交付要件を見直すこと。

6 在外被爆者に対し、その国情にかかわらず法の完全適用を行うこと。

 



長崎被災協4月の動き

2日 福田須磨子忌
4日 福島原発事故への対応について、被爆者5団体で協議。
内閣総理大臣宛に要望書を送ることを決定。
5日 長崎の証言の会・運営委員会(山田)
8日 新法人への移行についての学習会(山田・柿田)
福島原発事故にかかわる被爆者5団体の要望書を総理宛に送付。
記者会見。
14日 福島原発問題で政府・与党への要請のために、被爆者5団体の代表として、被災協・山田、友の会・井原、平和運動センター被爆連・奥村の3名が上京。
16日 福岡市で九州ブロック被爆二世交流会(柿田)
25日 被災協55周年記念集会についての実行委員会。
26日 日本被団協『運動方針』起草委員会(谷口)