2008年3月9日発行の新聞『被団協』293号の内容をご紹介します。

◇原爆症認定集団訴訟◇
被告・国側が弁論公開を請求
原告と弁護団は拒否へ

 厚生労働省は1月21日午後1時川分から長崎地裁でひらかれた原爆症認定を求める第2次
訴訟の口頭弁論の中で被告である国側は、第1次訴訟の弁論再開を求める申立書を裁判所へを提出しました。原告側は、その必要なしと拒否する方針です。

第l次訴訟(原告27名)に ついては、すでに昨年7月31 日に弁論を終結して結審し、 現在、判決が作成されている 段階です。
原告・弁護団はこ の時点で弁論の再開を求めるのは、すでに結審から半年余 を経過している判決をさらに 引き伸ばす狙
いがあるのではないかと判断し、近く「弁論
再開の必要なし」という意見書を裁判所へ出す予定です。
厚生労働省の弁論再開申し立ての理由
厚生労働省は、申し立ての 理由として、①原爆症認定のありカについては、現在新し い方針が作られようとしていること、②昨年12月に結審し
た高知地裁では弁論が再開さ れることになったこと、
を挙げています。

原爆症認定のあり方めぐりの厚生労働省との協議始まる

 原爆症認定のあり方についての厚生労働省の新構想をめぐって、日本被団協、原告団、
弁護団は厚生労働省に協議を申し入れていましたが、その第l回の協議が、2月18日に行われました。出席したのは日本婦団協が田中煕已事務局長ら5名、原告団が山本英典団長ら4名、弁護士が
板井弁護士ら5名で、厚生労働省からは西山健康局長ら5名が出席しました。
協議では、厚生労働省西山健康局長と日本被団協田中事務局長の挨拶ののち、「審査のイメージ」についての説明があり、質疑が行われました。
その中で、①原因確率は著査会では使わない、②入市被爆者について「爆心地付近に約100時間以内」 というとき の爆心地付近とは2キロ以内を指す、③審査会の審査を省略するのは、事務方で判断する、などが明らかになりました。
第2回協議は、3月5日に行われ、長崎の森内實原告団長も参加しました。内容は次号で明らかにします。

被団協が全国都道府県代表者会議 -3月10日 東京で-
 日本被団協は、3月10日に、東京で全国都道府県代表者会議を開催することになりました。
これは、厚生労働省が1月17日に与党プロジェク トチームに「新しい審査のイメージ」 を呈示して以来、原爆症認定のあり方についての構想が急速に具体化してきた状況に対応するため、全国的な意思統一を図るとともに、2年後に迫ったNPT再検討会議へむけての課題などを明らかにするための会議です。
長崎からは山田事務局長と理事の池田早苗さん、同長浜光芳さん、集団訴訟原告団長森内實さんが参加します。

諫早被災協が役員研修会を開催
 諌早被災協は、2月25日午後4時から、雲仙市小浜町で、 山田事務局長を講師に、役員
研修会を開催、20名が参加しました。
テーマは、「厚生労働省の新しい原爆症認定構想と私たちの要求」。厚生労働省の「新しい審査のイメージ」と今年度の政府予算案などをもとに、その内容と問題点を学びあいました。

厚生労働省が原爆症審査会へ『新しい審査の方針』(仮称・仮)を提示

 厚生労働省は、2月25日にひらかれた原爆症認定審査会(正しくは疾病・障害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会)に「審査に当たっては、それぞれ以下に定める方針を目安として、これを行うものとする」として「新しい審査の方針(
仮称・案)」を提出しました。
その内容は、つぎのとおり
まず 「積極的に確定する範囲」としては、
①爆心地から 約3・5キロ以内で被爆した者、
②原爆投下から約100時間以内に爆心地から約2キロ以内に入市した者、
③原爆投下か ら100時間経過後、爆心地 から約2キロ以内に1週間程度滞在した者、
から以下の疾病について認定の申請があった 場合は、格段の反対する事由がない限り原爆症と積極的に認定する、としています。
「以下の疾病」とは、
(ア)がんなどの悪性新生物、
(イ)白血病、
(ウ)副甲状腺機能亢進症、
(エ)老人性を除く放射線白内障、
(オ)放射線起因性が認められる心筋梗塞
これら以外の疾病につ いての申請については、申請者の被爆状況、既往症、生活暦などを総合的 に勘案して、個別に判断するものとする、としています。
表現は若干異なっていますが、 基本的には前に発表した「イ メージ」と同じです。

核兵器廃絶への決意新たに-
 「3・1ビギニデーを考えるつどい」ひらく

3月1日の「ビキニ・デー」 を翌日にひかえて、長崎被災協では、2月29日、「ビキニ・デーを考えるつどい」を開催 しました。「つどい」には25名が参加しました。
まず、廣瀬方人さんが詳細な資料をもとに原爆被害を隠ぺいしようとした占領軍とそれに迎合した日本政府の実態を明らかにし、ビキニ事件でも同様だったと指摘しました。
ついで原爆症髄定集団訴訟の原告団長森内實さんが、 訴松は原爆の被害を隠そうとする日本政府の企みを暴くものと原爆症隠定訴訟の意義を訴えました。
また3人目の報告者・山田事務局長は、核兵器廃絶への道は平担ではないが私たちが切り開かなければならないと強調しました。
このあと参加者からは、非核3原則は法制化すべきだなど核兵器廃絶への積極的な意見がつづきました。

高負担そして低医療-後期高齢者医療制度-
いま、反発の声高まる

  昨年の10月号でお知らせした「後期高齢者医療制度」が いよいよこの4月から実施さ
れそうです。
いま全国的にこの制度への反発が高まり、中止や見直しを求める意見書を 政府へ送った地方議会は520に達したといわれています
(中央社会保障推進協社会調 べ)。
こうした批判を受けて、保険料の徴収は半年延期されましたが、制度そのものは実施されようとしているのです。 本当にそれでいいのでしょうか。

後期高齢者医療制度」とは…
①後期高齢者とは、75歳以上の人のこと。
この年齢の方は、皆この制度に加入し、保険料 を負担することになります。
②いま誰かの扶養家族になっていて、健康保険料を払っていない人も、これからはみんな払うことになり、保険料lは 年金から介護保険料とともに天引きされるのです。
③これまで健康保険で受けて きた診療が受けられなくなることも生じます。

医療費削減のための制度
 後期高齢者医療制度では、病院や診療所が実際に行った診療に対して報酬(診療報酬)が支払われるのではなく、報酬には一定の粋があって、それ以上は、たとえ必要な診療であっても、支払われなくなるのです。必要な診療だからといって、病院や診療所が枠を超えて診療を行うと、その費用はその病院や診療所の負担(つまり赤字)になるのです。
これが「包括定額制」と いわれる制度です。
こうして国は後期高齢者を特別扱いすることで、2015年までに2兆円、25年までに5兆円の医療費を節減できるとみているのです(厚生
労働省の試算)。

戦後の日本を支え、生き抜 いてきた後期高齢者こそ、みんなに大事にされ、必要な医療を受ける権利があるのではないでしょうか。


=読書のコーナー= 「ルポ 貧困大国アメリカ」 岩波新書

 著者も指摘しているように、原爆で痛めつけられた私でさえ、敗戦後、新聞に連載された漫画「プロンデイ」にアメリカ人の日常の一端を見、淡い憧れをいだいたものでした。
この本の中で著者は、そのアメリカの現実を、新自由主義の名のもとに「民営化」がすすめられたアメ リカで、貧困層は最貧困層へ、中間層は貧困層へと転落していった今日のアメリカ人の生活の現実を、きわめて、具体的に紹介します。
貧困なるがゆえに肥満に苦しむ学童の集団-そして正規の職業に就けないために、「派遣会社」に頼るしかなく、その挙句には 派遣社員として戦地であるイラクへも派遣されてゆく労働者。
読んでいて日本の行く末が暗示されている思いがしました。
いやも う日本社会には、かってのアメリカ社会の病魔が忍び込んでいるのです。
著者は「あとがき」の冒頭で、「教訓はいつも後からやってくる」 と書いていますが、教訓を読み取 る努力が必要だと思いました。
新書版・735円

 

長崎被災協2月の動き


2日・集団訴訟街頭宣伝  ・平和研究所総会
4日・九州ブロック代表者会議   (山田・柿田)5日まで
5日・新聞『被団協』発送作業
12日・被団協代表理事会(山田)13日まで
・アメリカのイージス艦が15日長崎港入港ということで抗議の声明を発表
13日・代表理事会の後、東京大空襲訴訟原告団事務所を訪門し、団長星野ひろし氏と懇談(山田)
・公益法人セミナー(柿田)
15日・原爆病院運営委負会(谷口)
16日・集団訴訟街頭宣伝  ・県九条の会呼びかけ人会議(山田)
18日・熊本原爆症訴訟福岡高裁での第1回口頭弁論へ参加(山田)
・被団協ほかと厚生労働省の第1回協議
23日・集団訴訟街頭宣伝
25日・諌早被災協役員研修会(山田)
27日・巡回相談会・大島、崎戸(谷口、柿田)
28日・巡回相談会・西海町、大瀬戸町(谷口、柿田)
29日・3・1ビキニデーを考える  つどい