2008年9月9日発行の新聞『被団協』299号の内容をご紹介します。
米・印が原子力協力協定へ
◇危惧される核不拡散体制の崩壊◇
被爆者五団体など「反対」の声明
IAEA(国際原子力機関)が、インドとの間の核査察協定を承認したことにより、
アメリカとインドとの原子力協力協定の発効へ一歩踏み出したことになり、同協定の発効反対の動きがまっています。
IAEA月が8月1日の特 別理事会で、アメリカとインドの原子力協力協定の前提となるインドとの間での核査察協定を承認したことから、アメリカとインドの間の協定は発効への一歩を踏み出しました。
さらに8月21日からのN SG(原子力供給国グループ)会議の動向次第では、同協定実現への動きが加速することへの危機感を抱いた日本被団協は8月18日に、長崎の被爆者5団体(長崎被災協、原爆遺族会、手帳友の会、手帳友愛会、平和運動センター被爆連)は翌19日に、それぞれ抗議の声明を発表、日本政府などへ、核拡散防止条約(NPT)体制の崩壊をもたらすおそれのあるアメリカとインドの原子力協力協定に反対するように求めました。
また、長崎の証言の会も、20日、同じ趣旨での声明を発表し、原子力協定反対の態度を表明しました。
被爆者5団体の声明
核拡散につながる「米印原子力協力協定jの発効に反対する声明 米国とインドが進めている「米印原子力協力協定」は核不拡散条約(NPT)体制の枠外で核実験を行い、かつ、核兵器を保有するインドに例外措置としての特典を与えるものです。インドは、NPT条約における核兵器国としての軍縮義務からも、非核兵器国としての国際原子力機関(IAEA)によるすべての核施設の保障措置(査察)を受ける義務からも免れます。 8月1日のIAEA理事会での保障措置協定承諾に続き、8月21日~22日に予定されている原子力供給国グループ(NSG)会合でこの問題が審議され、インドへの燃料供給を例外扱いするためのガイドラインの変更が承認されるおそれがあります。NSGはコンセンサスで意思決定がおこなわれており、被爆国・日本は45カ国のNSG加盟国の一国として、NPT体制崩壊を防ぐために重要な役割を担っています。一部報道では、日本政府が容認する方針を固めたと報じられていますが、被爆地への背信行為であり、断じて許せません。 2008年8月19日 |
米・印原子力協定で長崎市議会も決議ヘ
アメリカとインドの原子力協力協定を容認するな8月25日の長崎市議会議会運営 委見会は、9月1日に開会する定例市議会の冒頭に、政府に対する決議案を提出するこ
とを決めました。決議案の内 容については、次号でお知らせします。
NSGは結論先送り
米・印原子力協力協定
核不拡散条約に参加していないインドへの核燃料、核技術の供与を静めることは、核兵器の拡散につながるのではないかという懸念は払拭されてはおらず、また、原子力供給国会議は全会一致を原則としているため、一カ国でも反対すれば、承認できないことになります。それだけに、被爆国日本の政府の対応が注目されています。
◇アメリカとインドの原子力協力協定◇
問われる日本政府の姿勢
核不拡散の姿勢堅持を!!
アメリカとインドの原子力協定とは
これは、アメリカとインドの間で、原子力産業について協力するという協定です。インドは、核兵器を持ち、核実験までやった国ですが、核弾頭を作ったり、原子力発電をするための原料ウラニュームが乏しいのです。しかもインドは産業が発展していて、エネルギーが必要なのです。そこでアメリカからウラニウムと発達した核技術を導 入しようというわけです。
「核不拡散」条約加盟を拒んでいるインド
ところで、アメリカから提供されるウラニウムが、絶対に核兵器に使われないという保障はありません。
アメリカが提供したウラニウムは原子力発電に使うとしても、それまで原子力発電に使っていたウラニウムを 核兵器にまわすことも考えられます。
インドは核不拡散条約(NP T)に加盟していない数少ない国の一つです。
たとえば日本のように、N PTに加盟している国なら、原子力発電所でできるプルトニウムが核弾頭に使われていないか国際原子力機関(IAEA)によるきびしい検査を受けます。ところがインドは、NPTに加盟していないので、IAEAもインドについて検査ができません。
そこでインドは「どうぞ検査して下さい」と言い出しました。「ただし、軍事施設はダメですよ」。
腰がふらつき始めた日本政府
日本は世界で唯一の核攻撃を受けた国であり、核兵器の廃絶を願ってきました。だから今回のアメリカとインドの協定のような核拡散につながるおそれのあることには、反対するのが当然です。ところが「インドの原子力発電推進は、地球温暖化対策に貢献する」といい始めたのです。
枚不拡散の立場に立って敢然とノーの姿勢を
インドとアメリカのこの協定は、原子力供給国グループ(MSG)の承藤が必要です。 8月の会議では結論が出ませんでした。9月中にも会議がひらかれる見込みです。日本政府は、核不拡散の立場から、はっきりとアメリカとインドの原子力協力協定に反対すべきなのです。たとえアメリカから圧力が加えられようとも、この協定は容認できないとの意志を表示すべきです
用語説明
▲核拡散防止条約
1970年に発効した条約。この条約はアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5カ国を核兵器保有国と定め、この国々については、他国への核兵器の譲渡を禁止するとともに、核軍縮のための交渉を進めることを義務付けています。またその他の核兵器非保有国については核兵器の製造並びに保有を禁止しています。
▲国際原子力機関(IAEA)
原子力の平和利用促進と軍事利用への転用を防止する目的で1957年設立 。
軍事利用を防止するため、査察などを行います。
◇与党PTが提言まとめる!◇
肝障害は積極認定へ! 甲状腺機能低下は見送り
原爆症認定のあり方の改善 を求めてとりくんできた与党のプロジェクト・チームは、8月22日の会合で、現行の積的認定として扱われている5つの疾病に肝機能障害を加えるよう求める提言をまとめました。
同プロジェクト・チームの提言はこのことについて、つぎのように述べています。 「国は放射能起因性が不十分あるいは認められないという理由で排除しているが、法も放射能による治癒能力の欠如を認定の範囲に加えており、肝機能障害を原爆症として認めている判決も多く、疑わしきは被爆者の利益のために、という法の趣旨に照らしても、積極的認定の対象疾病に加えるべきだ」。(要旨)なお、被爆者の側から強く要望している甲状腺機能低下症については、「実際には《総合的判断》でかなり救済されている」として、提言には加えませんでした。
◇読書のコーナー◇
希望の平和学
「戦争を地球を葬る」ための11章
山川 剛 著
「日本の若者たちの平和意織調査に見られる世界観、人間観は極めて悲観的である。」
この本の著者山川 剛さんは「まえがき」の冒頭で、こう指摘しています。そして「子 どもや若者へあなたの希望の(証)を語ってほしい。 この小冊子が、そのためのヒントになれば幸いである」と、この本『希 望の平和学-「戦争を地球から葬る」ための11章』の意図を示しています。ではどうしたら、このどうしようもない世の中にあって、明るく平和を考えることができるのでしょうか。
それは、私が答を出すことではありません。あなたが、まずこの本に目を通すことです。疑いの目を持っていてもいい、11の章を劫肌み通すことから、あなたの世界が広がるでしょう。
被鰊60周年の2005年から、活水高校では3年生の社会科として「長崎平和学」の時間を週1時間設定していて、著者はその講師を務めてきました。この本は、その授業を基本にまとめられたもの。
読みながら、こんな授業を受ける生徒たちは幸せだなあと思いました。著者は「小冊子」と謙遜されますが、とても濃い内容の本です。
発行所・長崎文献 杜・定価1680円(税込み)
(山田拓民)
長崎被災協8月の動き
5日・緑中校区平和の集い・友愛館会場 (山田)
6日・広島原瀬の日
・広島で「集団訴訟」のつどい (森内、田中)
・緑中校区平和の集い・西城山西和白治全会場(渡辺)
7日・フード連合平和集会 (谷口)
・日生協平和集会 (深堀・松尾)
・原水禁・核禁会議など平和集会 (山田)
・立命館、アメリカン大学との交流の集い (山田)
8日・長与中での平和講話 (谷口)
・立命館・アメリカン大学との交流 (三輪)
・原水協平和の集い (小峰、奥村)
・マスコミ文化共闘会議 (山田)
・民主党・被爆者懇談会
9日・長崎原爆の日
・鶴洋高校で平和集会 (谷口)
・長崎商業高校で平和集会 (山田)
・北陽台高校で平和集会 (池田)
・平和公園で東京葛飾区被爆者の会献水の儀 (田中)
・式典への代表参加(田中)
・式典中継のコメンテータ ①KTN(森内)、②NIB (山田)
・首相、厚相への要請 (谷口、山田)
15日・不戦の誓い
24日・民医連薬学生平和学習集会 (山田)
27日・自治労連全国大会 (山田)