2009年5月9日発行の新聞『被団協』307号の内容をご紹介します。

山積する重要な課題
 運動方針を決め、とりくみへ 
5月30日に定例評議員会・理事会

 

  今年度の定例評議員会と今年度第2回の理事会は、5月30日(土)の午後2時から、長崎被災協の講堂でひらかれます。
昨年度のとりくみを振 り返り、決算を点検し、ことしの重点課題は何かということを考え、今年度の活動方針と予算を決める重要な会議なのです。


会員は、誰でも傍聴できます

この会議は被災協の会員であれば、誰でも傍聴できます。そして議長(規約で会長が議長をつとめます)の許可があったら、発言もできます。長崎被災協は極めて民主的な組織で、会員みんなの声を大切にして運営されるのです。

原爆症認定審査の方針が変わった…
ところで、昨年も大事なことがいろいろとありましたが、原爆症認定についての「新しい審査の基準」が3月17日に決り、4月から適用されるようになったのも見逃せないことでした。

 米・印間で原子力協定を締結
また、核不拡散条約にも入っていないインドとアメリカとの間で原子力協定が結ばれたことも、大変なことでした。
被爆者5団体は共同でこれに 反対し、アメリカとインドへ抗議しました。長崎市議会も 反対を決議しました。
とても大事な五月末の会議
このようないろんなことを背景に、私たちは09年度にどのようなとりくみをなすべきかを考え、討論し決めるのが、5月の会議なのです。

 


山場を迎える原爆症訴訟
支援する会が定例総会ひらく
宮原全国弁連事務局長が報告

原爆症認定申請の却下処分を跳ね返えそうと裁判にとりくむ被爆者の支援を目的に結成され、現在34団体と238人の個人で組織されている「原爆症認定集団訴訟を支援する会・長崎」は、4月25日午後2時から長崎市筑後町の教育文化会館で本年度の総会を開きました。

総会は、新婦人のコーラス グループによる「いとし子よ」 「アンジュラスの鐘」の2曲 の歌声で幕を開け、議案の審議に先立ち、「集団訴訟」弁護団の全国連絡会事務局長・宮原哲朗弁護士を迎え、全国情勢、当面する運動の課題についての報告を受けました。
宮原弁護士は、全国で16連勝した各地の裁判の成果を踏 まえ、来る5月15日の大阪高裁判決、同28日の東京高裁判決こそは、政府へ決断を迫る機会だと指摘、それも判決日を待ってとりくみを始めるのではなく、その日までの全国的なとりくみが、政府を追い込むことができるかどうかの鍵となると強調しました。
こうした報告を受けたあと総会は、新日本婦人の会の前田保子さんを議長に選出、運動方針と予算・決算の審議に移りました。

 


 ~◇原原爆症認定は増えたけど・・・・◇~
 まだまだ残る多くの課題 
  いまこそ抜本的制度改善へ

 一昨年度128名だった原爆症認定数が、昨年度(平成20年度)は3千名に達するまで増えましたが、このことは一昨年度までの認定審査がどんなに理不尽で過酷なものだったかを示しています。

しかも、まだまだ問題は多く残っているのです。下の表をよく 見て下さい。

昨年4月から今年3月までの認定状況

認定疾病名 認定教 構成比
①主に消化器以外のガン 1,018 34.3%
②主に消化器のガン 1,229 41.4%
③白血病、副甲状腺機能克進症 239 8.0%
④白内障、心筋梗塞 44 1.5%
総合審査によるもの 167 5.6%
事務局での認定 272 9.2%
合計 2,969 100.0%

※参考1昨年4月から昨年3月までの認定数=128

①~④と最下段の「事務局での認定」は、3. 5キロ以内での被爆などの一定の条件を満たす場合、積極的認定といわれる枠内の認定であり、その合計は全体の認定数の94・3%を占めているのです。その逆に、「総合者査によるもの」と示されている数字は積極的認定の範囲外の認定で、全体のわずかに5.6%にすぎません。 (「事務局による認定」というのは、積極的認定の枠内で、誰が見ても (認定)となるケースを審査会にはかけず、事務局で処理したものです)。

◇許せない「線引き」 ◇
被爆者の中に何の根拠もなく特別の被爆者をつくり、枠外の被爆者を不当に差別する「新しい審査の方針」が欠陥品であることは明らかです。

◇かたくなな厚労省 ◇

つぎに、厚生労働省が、裁判所の判決を足蹴にするような態度で「却下」している例です。

長崎地裁が認めて、厚労省が認めなかったケース

申請疾病名(被爆状況)
1 狭心症(1.Okmで被爆)
2 肝炎(1.5kmで被爆)
3 肝機能障害(0.9kmで被爆)
4 直腸ガン(11日に入市)
5 慢性肝炎(0.8kmで被爆)
6 胆管ガン(3.Okmで被爆)
7 肝機能障害(2.Okmで被爆)
8 肝ガン(2.1kmで被爆)
9 肺ガン(3.8kmで被爆、20日に入市)


中段に示した表を見て下さい。これは長崎地方裁判所が認定すべきだと認めたのに、厚生労働省はそれを認めようとせずに、福岡の高等裁判所へ控訴したケースの一覧なのです。
長崎地方裁判所へ訴えた27名のうち、9名の方がそれに該当します。
まずいえることは、肝臓疾患については、非常にかたくなな態度を取っていることです。この中には、8百メートル、9百メートルで被爆した方も含まれています。
また、ガンの方が4名 該当しています。いうまでもなくガンは積極的認定に指定された病気です。狭心症の方もいます。狭心症も積極的認定の病気です。しかもこの方は1キロでの被爆なのです。

◇新たな制度改善へ◇
「新しい審査の方針」は、わずか1年でボロがではじめました。原爆症認定集団訴訟が大詰めの段階を迎えているときだけに、裁判で認められたもの、特に肝機能障害や甲状腺機能低下症ははすべて原爆症と認定させる、不当な線引きは撤廃させる、被爆者のガンはすべて認定させるなど、大幅な改善を実現させましょう。原爆の被害は、本来国が償うべきものなのです。

昨年一年間のとりくみを報告し、今年度の運動方針を提案した山田事務局長は、昨年6月の長崎地裁での勝利とその前後の活動をふりかえるとともに、ことしも、宮原弁護士の指摘のように、5月に山場を迎えること、さらに現在進行中の長崎地裁、福岡高裁での審理でも、市民へのアピール、法廷傍聴に、これまで以上のとりくみが必要と訴えました。
また会計担当の柿田事務局員は、運動を支えた昨年度の決算を報告し、300万円を中央の運動資金として送金することをふくむ09年度予算を提案、これらの議案は全員の拍手で承認され、
「支援する会」は早速、新年度の活動にとりくむことになりました。
総会には90名を越える会員が参加しました。

 



◇いろんな悩みも出し合って◇

 

矢の平支部が役員会


 
4月27日午後
6時半から長崎市矢の平公民館で、長崎被災協夫の平支部の役員会がひらかれました。
会では田中重光支部長の報告を受けて、原爆症認定 集団訴訟支援のとりくみや今年11月に長崎市での開催が予定されている九州ブロック相談事業講習会を支えるとりくみが今年の大きな課題として確認されました。
話し合いの中では、募金集めの苦労や、「年をとり目も悪くなったから会をやめたい」という人をどう説得したらいいか、という悩みも出されましたが、これまでの被災協運動の歩みを話し、被爆者が力を合わせることの大切さを話したらわかってもらえた例なども報告され、有意義な集いになりました。


◇写真.原稲を募集します◇

皆さん方が写された写真(風景、静物、人物、催し など)で、この「被団協(長 崎版)」の紙面を飾りたいと思います。また、原爆・戦争・平和についての皆さん方のご意見ご感想を、発表 しあい、考えあう紙面にしたいと思いますへ350字程度)。いずれも被災協・事務局へ送って下さい。



◇読書案内◇

「イスラエル」


臼杵 陽著(岩波新書)

 皆さんはイスラエルについてどのような印象をお持ちでしょうか。私はどうも余りいい印象は持っていませんでした。ナチスに迫害され、悲しい運命にさらされたユダヤ人たちでしたが、パレスチナの地に居座って、それまでそこで暮らしていたアラブの人たちを追い払い、アメリカの強大な軍事力を背景に、いまでは核兵器をも保有する帝国を築いたということ、さらにはまだ記憶に新しいガザ地区への攻撃で、幼い子供を含む多数のアラブの市民を殺戟したということなど、まさにナチス・ドイツを彷彿とさせる陰惨なイメージしか湧いてこなかったのでした。
それだけに、何が彼らをそこへ追い込んだのだろうという関心も持っていました。そういう時、この本にめぐりあったのです。この本を読みながら、私はますますイスラエルという国が奇怪な国に思えるのでした。 と同時に日本という国も、特定の国によりかかって、日本民族に固執しているという点では、同じような目で見られているのではないかと思ったのでした。
(山田拓民)


長崎被災協3月の動き


 1日・証言の全逓営委員会(山田)

 2日・福田須磨子忌

 6日・集団訴訟を支援する会運営委員会(山田・柿田)

 8日・日本被団協代表理事会山田)19日まで

 9日・新聞『被団協』発送作業

11日・平和研究講座①

18日・平和推進協結成25周年祈念シンポジウム(谷口)

 〃・「支援する会」街頭宣伝

19日・「健康友の会」総会であいさつ(山田)

21日・長崎地裁での審理は進行協議に変更 …「支援する会」総会90名が参加

 〃・矢の平支部役員会(柿田)