◇2010年 長崎被災協会長 谷口稜曄 ◇
あけまして おめでとう ございます
被爆者の皆さん。いつも私たちの運動にご支援を頂いている市民の皆さん。明けまして、おめでとうございます。
チェンジは自らの手で
昨年は、8月末の総選挙で、 自民・公明政権が敗退し、民主・社民・国民新3党連立政権ができました。アメリカでの、チェンジを唱えるオバマ大統領の誕生とあいまって、これで、真の平和をめざす政治への大転換が実現するのかと期待されましたが沖縄の米軍基地問題一つみても、アメリカの対戦略に変化はみられないようです。
やはり変革は他人頼みではなく、私たち自身の手で達成しなければならないのです。
基本懇意見から30年
ことしはまた、1980年に厚生労働大臣の私的諮問機関・原爆被爆者対策基本問題懇談会(基本懇)が、「原爆は人間の想像を絶した地獄を現出した」といいながら、戦争の被害ほ「すべての国民がひとしく受忍(がまん)しなければならないところである」という「意見」を発表してから30年目となる年です。この「懇談会」は、大臣の私的諮問機関といいながら、その「意見」は、その後の国の被爆者を含む戦争犠牲者対策の基本にすえられたのでした。
現在の「被爆者の援護に関する法律」にも、この方針が貫かれています。 新しい年を、この間違った方針を打ち破る年にしようではありませんか。
私たちは高齢になりましたが、国内的にも国際的にも、私たちのもうひと踏ん張りが求められています。
◇東京大空襲訴訟加◇
東京地裁が不当判決
司法としての判断を回避
東京大空襲被害者やその遺族ら131名が、空襲の被害に対する損害賠償と謝罪を国に求めた裁判で、12月14日、東京地裁は、原告の訴えを棄却する不当な判決を行ないました。
判決は、空襲の被嘗について「原告らの苦痛は計り知れない。原告らの主張は心情的には理解できる」と述べては いますが、戦争によって被った被害は、ほぼすべての国民についていえることであり、こうした被害にどう対処するかは国会が決めること、として司法としての判断を避けました。
このため、結果としては「戦争被害受忍論」をふりかざした国の主張に加担するものとなったのです。
また、原告が主張した被害の実態調査を怠ったことについても、措置を義務付けた法律はない、とつっぱねました。日本被団協は、ただちに抗議の声明を発表しました。 原告は控訴する方針です。
制定された「基金」とは? 「原告に係る問題の解決」とは?
はっきりしているのは補助金3億円! 長崎被災協理事会での討議から
昨年12月1日、本紙12月号でもお伝えした、「原爆症認定集団訴訟の原告に係る問題の解決のための基金に対する補助に関する法律」が、全会派の賛同を得て可決成立しました(自民党は欠席しましたが、もともとこの法率は自民党が構想したものでした)。
しかし、法律はできたものの、
①「原爆症諷定集団訴訟の原告に係る問題」とは何か、
②なぜ「基金」に対する補助金のという形をとるのか、
③「基金」の連用は誰がするのか、
などの点でわかりにくさを持っていました。
そこで長崎被災協では、12月11日に開いた本年度 第5回(拡大)理事会で、改めて法律の条文に目を通し、さらに新聞で「基金」の運用団体が原告・弁護団と日本被団協が母体となる、と報道されていることについて意見を交流しました。
「基金」の性格について
法律では「原告に係る問題」の処理のための財涙(国の支出3億円+一般からの拠出金)となっているだけで、その性格はわかりませんが、報道や弁護団の説明では、敗訴原告への給付金とされています。
「基金」とはどう いう性格のものか、については、その経過がさらに明らかにされなくてはならないでしょう。弁護団の事務局長である宮原弁護士は、「敗訴原告が何も受け取らずに終わるというのは、同じ闘った仲間としてどうか…という問題が出発点で、そのために全員救済をかかげてそれが実現した」と12月13日の全国弁護団・原告周・支援する会合同会議で「基金」の性格についてこう語っています。問題はそれが政府との問で共通の認識となっているかどうか、です。
基金は控訴権買収資金?
理事会では、地裁敗訴の原告が高裁へ控訴しなかった場合、あるいは控訴を取り下げた場 合、基金からの一定額が支給されるというのであれば、結局国が原告の控訴権を買い取るということではないか、という指摘もありました。そして、そう なると被団協役員が、たとえ個人の資格でも「基金」の運用団体の役員になるのは、厚生労働大臣の代理人になることであり、不都合ではとの声も。
集団訴訟終結への「基金」法・要旨
第1条
この法律は、原告に係る問題の解決のための基金に対する補助に関し必要な事項を定めるものとする。
第2条
この法律で「原爆症認定集団訴訟」とは、原爆症認定申請に対する却下処分の取り消しを求める裁判であって、新しい審査の方針が決まる前日までに提訴されたものをいう。
第3条
攻府は、法人であって原爆症認定訴訟の原告に係る 問題の解決のための支援を行なうものに対し支援事業に要する費用の一部を補助することができる。
第4条
前条の規定で補助金の交付を受ける法人は、支援事業のための基金を設けるものとし、前条の規定で補助を受けた金額をその基金に充てるものとする。
なお、政府以外の着からの拠出金も、補助金に加えることができる。
【提案理由】
原爆症認定集団訴訟に関し、原爆症認定についての見直しがなされたことを踏まえ、訴訟の長期化、原告の高齢化等の事情を考慮し、8月6日の確認に基づき、原告に係る問題の解決のための基金に対する補助について必要な事項を決める必要がある。これがこの法案を提出する理由である。
◇必要な経費◇
必要となる費用は、約3億円である。
◇厚生労働省の腹いせか?◇
面倒になった原爆症認定申請
原爆症認定申請する際、これまで私たちは4枚の文書を提出してきました。
①認定申請書
②医療特別手当申請書
③健康診断個人票
④意見書
がそれです。
このうち③と④は治療を受けているお医者さんに書いてもらっていました。
③は病気やケガの今の状況とか検査の結果、現在医療を必要としているかを書いてもらい、④にはいまの病状とその病気やケガと原爆の放射線との関係についてのお医者さんの意見を書いてもらっていたのです。
ところが昨年の7月から大きく 変わりました。厚生労働省は、詳細な書類の提出を求めてきたのです。
たとえば肺ガンで申請する場合は、上記の書類のほかに
①病理組織検 査の報告書
②画像の診断等の報告書
③内視鏡検査等の報告書
④ 腫瘍マーカー等の検査の報告書
⑤病気に対して行なっている具体的治療内容
⑥手術の所見に関する報告書
⑦喫煙歴、鉱夫の職業歴など
肺ガンの発生に影響を及ぼす可能性のある危険因子がある場合の生活歴、職業歴等の内容、状況等に関する医師の所見など、を提出しろというのです。
お医者さんも驚いています。長崎でもこんな面倒なことができるかと、お医者さんに断られたケースも生じています。
そういう場合は、すぐに被災協(電話095-844-0958)へご相談下さい。
長崎被災協第5回理事会を開催
「基金法」めぐって意見を交換
長崎被災協では、12月11日に本年度第5回の(拡大)理事会をひらき、12月1日に国会を通過し成立した「基金」に関する法律(原爆症認定集団訴訟の原告に係る問題 の解決のための基金に対する補助に関する法律)をどうみるかについて山 田事務局長が事務局での討議の結果を報告、それをもとに意見を交流しました。また、5月24日に判決を迎える原爆症認定集団訴訟第2陣へのとりくみや当面の課題・行事について協議、決定しました。
今月13日・14日に被団協が代表理事会
日本被団協は、1月13日から14日にかけて代表理事会をひらき、「基金」法への対応をはじめ、「非核3原則の法制化を求める署名」など当面の諸課題について検討します。
恵の丘長崎原爆ホームを肪間
12月22日、長崎被災協(谷口稜嘩会長、坂本フミエ副会長、柿田富美枝事務局次長)は、長崎市三ツ山町の恵の丘 長崎原爆ホームを訪問、お見舞い品を贈って入所者を励ましました。
長崎県原水協が被爆者140人へ年末見舞金
長崎県原水協から被災協の140人へ今年も恒例の年末見舞金が届き、支部長・会長さんの手で、それぞれ配布されました。