2010年4月9日発行の新聞『被団協』318号の内容をご紹介します。
◇「国是」の形骸化は明らか◇
非核三原則は法制化を
=長崎市議会が意見書を採択=
長崎市議会は、3月19日、非核三原則の法制化を求める『意見書』を全会一致で可決しました。長崎市議会は、2002年にも同趣旨の決議を行なつています。
『意見書』は、外務省有識者委員会による日米核密約問
題の報告書で、核兵器持込などに関する密約が存在し、国是である非核三原則が形骸化
していることはが明らかとし唯一の被爆国である日本は、
核兵器の脅威と被爆の実相を全世界に伝え、非核三原則を
遵守し、世界に範を示さなければならない、との決意を披歴、改府が早急に非核三原則
を法制化し、核兵器のない世界の実現のために一層努力す
るよう求めています。
なお、この『意見書』の中でも述べられていますが、長崎市議会は2002年6月にも、「非核三原則の法制化」を
求める決議を可決しており、さらに1989年以降、8月9日の平和記念式典で市長が読み上げる「平和宣言」の中で、非核三原則の法制化を求め続けてきました。
その上に立って今回地方自治牡に基づく『意見書』として採択されたことは、長崎市議会のさらに強い決意を示すものといえるでしょう
長崎市議会で可決された「意見書」 非核三原則の法制化を求める意見書 |
<p=”his01″> 本年3月9日、日米密約問題を調査した外務省有識者委員会が、 外務大臣に提出した報告書によると、日米安全保障条約改定時の核兵器持ち込みなどに関する密約の存在を認め、被爆国の国是である非核三原則か形舷化していたことが明らかになりました。 唯-の被爆国である我が国は、核兵器の脅威と被爆の実相を全世界へ伝え、非核三原則を遵守し、世界に範を示さなければなりません。 核兵器による惨禍をこうむった長崎市民は、これまで核兵器廃絶を強く全世界に訴え続けてきました。平成14年6月には、本市議会において非核三原則の法制化を求める決議を可決するとともに、平成元年から長崎市は平和宣言において、非核三原則の法制化を求めてきました。 よって、被爆都市長崎の市議会は、政府こおいて早急に非核三原則を法制化し、核兵器のない世界の実現のために一層の取り組みを行うよう強く要請します。 以上、地方自治法第99粂の規定に基づき意見書を提出します。平成22年3月19日 長 崎 市 議 会 |
◇ 被団協の法改正運動 ◇
国家補償の「援護法」へ
=新年度からいよいよ具体化へ=
1957年にできた「原爆
医療法」と1968年にできた「被爆者特別措置法」を統合して「原子爆弾被爆者の援護に関する意法律」制定されたのは1994年の12月のことでした。
昨年の12月は、この法律ができてちょうど15年目だつたのです。
いまの「援護に関する法律」は、私たちが求めていた「核兵器廃絶」を展望するものでもなく
「原爆被害への国家補償」を定めたものでもありませんでした。そのことはこの法律の「前文」を見ただけでも明らかです。
日本被団協は、今年度の方針に、「援護に関する法律」の改正を掲げ、代表理事会の中に「現行法改正検討委員会」を設け、検討を重ねてきたところです。
こうして2010年度は、具体的な「改正」動にとりくむことになります。3月16日~17日の代表理事会で検討した「改正」の骨子は次の通りです。
- 「援護に関する法律」の全文を改正し、原爆被害に対する国家補償を趣旨とし、あわせて核兵器廃絶の決意を明記すること。肝ハ
記すること。 - 原爆死没者の遺族に対して、弔慰金、あるいは特別給付金を支給すること。
- 被爆者全員に被爆者手当てを支給すること。
- 厚生労働大臣は、被爆者が政令で定める負傷または疾病に羅患した場合は、その負傷または疾病に対して医療を給付し、手当てを加算すること。
- 被爆者が、上記の政令で定めのない負傷または疾病で、原子爆弾の傷害作用による負傷または疾病に篠息した場合には、
被爆者援護審議会の議を経て、厚生労働大臣が医療を給付し、手当てを加算すること。 - 被爆二世・三世に関する実態調査をし、希望する者に被爆者二世二二世手帳を発行し、健康診断・がん検診及び政令で定める負傷または疾病に対して医療費を支給すること。
- 在外被爆者に対しても、その国情に応じて法の完全適用を行なうこと。
- 被爆者健康手帳の公布要件を見直すこと。
◇ 4・5月の暫定予算を可決 ◇
幹事に萩原瑞夫氏
=評議員会・理事会ひらく=
長崎被災協は、3月30日午後2時から被災協(地下)講堂で第56回評議員会と本年度第7回理事会を開催し、
いきいきコープ常任理事・泉忠士さんから「葬祭について」の講話を聴いたあと、4月5月の暫定予算を決定、第57回定例評議員会を5月兆日の午後2時から開催すること、当面の集会や行動に積極的に参加することなどを確認しました。
◇ 09年の原爆症認定審査 ◇
1件あたり36秒で処理?
=しかもなんと却下率85%!!=
先月号(3月号)では、原爆症認定をめぐる「却下通知」が肝心の却下理由を示さない不当・違法なものになっているということについて
お知らせしましたが、今月は、原爆症認定審査そのものの問題点についてお知らせします。
現在、原爆症認定審査は4つの専門部会(下段の「注」参照)と審査委員全員が集まって審査するという総合審査会の体制で進められています。
そして現在のところ、「積極的認定」について審査をしている4部会では、「却下」されたものはありません。認定とするには危ぶまれるものにつ
いては、病院などへ新たな資料が請求されており、「保留」となっているようです。
なぜか増え続ける総合審査での却下
そういうわけで、現在却下されているのは総合審査の分野だけですが、その数が増えているのが気がかりです。
却下数については、審査数が増えているので当然だという見方もあるでしょうが、却下率も増大化の傾向にあるとみていいのではないでしょう
か。4月・5月は50%台だったのが、7月は例外として、6月~9月は70%台後半になり、10月は60%台へ下がりますが、11月~1月は90%前後になっているのです。
審査のあり方そのものに払拭できない疑問が…
下の表Aを見てください。現在、原爆症静定審査は、通常午前10時から始まります。終了の時間は、明示されていませんが、
問い合わせたところ、例外はあるとしても、おおむね午後5時のようです。途中で昼食休憩を1時間とると、正味6時間(360分)が審査に当てられる時間とみてよいでしょう。そこで、認定申請1件あたりどの漫度の時間を割いているのかを算出したのがこの表Bなのです。7月l8日は、審査数も極端に少ないので例外として、一般的には1件当りの審査時間は4月の5.5分から次第に減少僚向にあります。そして最後の1月22日にほ、なんと1件当たり0.6分(36秒)で処理しているのです。
どのような審査が行なわれているのか、私たちは傍聴もできませんし、一切公表もされません。そしてこの1月22日には、審査をした606の件のうち85%が却下されているのです。このような闇の中の「審査」を放置しておいていいのでしょうか。
【注】表B「2009年度原爆症認定審査状況」の左から3行目「部会」は現在、原爆症認定審査が専門分野別に4部会と全書査委員で構成される 総合審査に分かれているためこういう表示になります。 ①では消化器系以外のガンを扱い、 ②では消化器系ガンを扱います。 ③では白血病、副甲状腺機能充進症、甲状腺機能低下症を扱い、 ④では白内障や心筋梗塞を扱います。 「総合」というのは、その他の疾病の審査を行うのです。 また、「諮問」というの は厚生労働省が審査会へ「審査してほしい」と提出した数です。 |
表A 積極的認定以外のケースについての審査状況(2009年度)
審査月日 | 審査数 | 審査時間(分) | 一件当たり所要時間(分) | 却下数 | |
4 | 20 | 66 | 360 | 5.5 | 35 |
5 | 18 | 100 | 〃 | 3.6 | 50 |
6 | 22 | 74 | 〃 | 4.9 | 47 |
7 | 13 | 14 | 〃 | 25.7 | 0 |
8 | 31 | 47 | 〃 | 7.7 | 37 |
9 | 28 | 133 | 〃 | 2.7 | 100 |
10 | 26 | 223 | 〃 | 1.6 | 135 |
11 | 30 | 241 | 〃 | 1.5 | 212 |
12 | 21 | 380 | 〃 | 0.9 | 365 |
1 | 18 | 257 | 〃 | 1.4 | 229 |
2 | 22 | 606 | 〃 | 0.6 | 515 |
表B 2009年度原爆認定審査状況 (2010年3月3日現在)
月 | 日 | 部会 | 諮問 | 答申 | 認定 | 却下 | 保留 | 未了 |
4 | 13 | 1 | 86 | 86 | 82 | 0 | 4 | 0 |
20 | 総合 | 66 | 66 | 26 | 35 | 5 | 0 | |
〃 | 3 | 22 | 22 | 22 | 0 | 0 | 0 | |
27 | 2 | 170 | 170 | 163 | 0 | 7 | 0 | |
5 | 11 | 1 | 70 | 70 | 68 | 0 | 2 | 0 |
18 | 総合 | 100 | 100 | 45 | 50 | 5 | 0 | |
25 | 2 | 161 | 161 | 154 | 0 | 7 | 0 | |
8 | 1 | 88 | 88 | 87 | 0 | 1 | 0 | |
15 | 4 | 42 | 34 | 16 | 0 | 18 | 8 | |
21 | 2 | 118 | 118 | 115 | 0 | 3 | 0 | |
22 | 総合 | 121 | 74 | 15 | 56 | 3 | 47 | |
7 | 13 | 総合 | 103 | 14 | 14 | 0 | 0 | 89 |
〃 | 3 | 36 | 27 | 22 | 0 | 5 | 9 | |
27 | 1 | 175 | 98 | 67 | 0 | 31 | 77 | |
〃 | 2 | 166 | 79 | 61 | 0 | 18 | 87 | |
8 | 17 | 1 | 109 | 109 | 90 | 0 | 19 | 0 |
20 | 4 | 60 | 54 | 11 | 0 | 43 | 6 | |
24 | 2 | 136 | 92 | 66 | 0 | 26 | 44 | |
〃 | 3 | 102 | 89 | 79 | 0 | 10 | 13 | |
31 | 総合 | 168 | 47 | 10 | 37 | 0 | 121 | |
9 | 7 | 1 | 91 | 91 | 87 | 0 | 4 | 0 |
27 | 2 | 151 | 100 | 58 | 0 | 42 | 51 | |
〃 | 3 | 33 | 14 | 12 | 0 | 2 | 19 | |
28 | 総合 | 173 | 133 | 31 | 100 | 2 | 40 | |
10 | 15 | 4 | 86 | 86 | 14 | 0 | 72 | 0 |
19 | 1 | 108 | 108 | 65 | 0 | 43 | 0 | |
26 | 3 | 20 | 20 | 16 | 0 | 4 | 8 | |
〃 | 総合 | 305 | 223 | 82 | 135 | 6 | 82 | |
11 | 5 | 4 | 79 | 79 | 2 | 0 | 77 | 0 |
9 | 1 | 138 | 138 | 85 | 0 | 53 | 0 | |
16 | 2 | 231 | 119 | 67 | 0 | 52 | 112 | |
30 | 3 | 34 | 18 | 12 | 0 | 6 | 16 | |
〃 | 総合 | 372 | 241 | 23 | 212 | 6 | 131 | |
12 | 7 | 1 | 113 | 113 | 81 | 0 | 32 | 0 |
10 | 4 | 98 | 88 | 3 | 0 | 85 | 10 | |
14 | 2 | 197 | 135 | 71 | 0 | 64 | 62 | |
21 | 3 | 46 | 19 | 9 | 0 | 10 | 27 | |
〃 | 総合 | 444 | 380 | 13 | 365 | 2 | 64 | |
1 | 17 | 3 | 109 | 67 | 22 | 0 | 45 | 42 |
18 | 総合 | 353 | 257 | 25 | 229 | 3 | 96 | |
〃 | 4 | 153 | 85 | 4 | 0 | 8 | 68 | |
22 | 3 | 66 | 26 | 17 | 0 | 9 | 40 | |
2 | 〃 | 総合 | 731 | 606 | 90 | 515 | 1 | 125 |
25 | 2 | 202 | 124 | 84 | 0 | 40 | 78 | |
〃 | 1 | 205 | 103 | 96 | 0 | 7 | 102 | |
28 | 4 | 118 | 88 | 3 | 0 | 85 | 30 | |
3 | 8 | 1 | 151 | 151 | 82 | 0 | 69 | 0 |
合計 | 69814 | 5210 | 2367 | 1734 | 1109 | 1704 |
長崎被災協3月の動き
3日 | 総科大・被爆写真試写会> |
9日 | 新聞『被団協』発送作業 |
12日 | 県生協連と合同で訪米団が記者会見・(谷口、池田、小峰) |
16日 | 日本被団協代表理事会(山田)→7日まで |
18日 | 日原爆青年乙女の会総会 |
19日 | 平和推進協会継承部会(谷口) 県・市と被爆者団体などの合同会議(谷口、山田、柿田) |
20日 | 地球市民集会実行委員会(谷口) 集団訴訟関係全国会議(柿田・森内) |
23日 | 被災協・被爆体験を語り継ぐ会 |
24日 | 平和推進協会理事会(谷口) |
30日 | 理事会・評議員会 |