2010年7月9日発行の新聞『被団協』321号の内容をご紹介します。

◇被災65年、活き活きとした活動を…◇
 日本被団協が総会ひらく 
谷口会長は代表委員に

今年度の私たちの課題(日本被団協)
①被爆65年、原爆被害、戦争被害をくりかえさないための活動にとりくみます。
②「核兵器も戦争もない世界」をめざしてとりくみます。
③「基本要求」にそった国家補償を趣旨とする施策の確立にとりくみます。
④他の戦災者との連帯・交流や「ノーモアヒバクシヤ9条の会をはじめ、憲法ならびに9条を守る運動などと連携し、平和を守る運動にとりくみます。

日本被団協は、6月15日・16日の両日、東京お茶の水のホテル・ジュラクで今年度の総会を開き、昨年度の活動・決算を承認し、今年度の運動方針・予算を確定しました。
今年度の運動方針の骨格は、左の枠内の「今年度の私たちの課題(日本被団協)」のとおりで、特に①②については、ニューヨークでのNPT再検討会議での活動休験を踏まえ、被爆65年を意識した積極的な発言がつづきました。また、③についても、国家補償の立場に立つ新しい法律作りをめざす意気込みが見られました。さらに④は、平和をめざす幅広いとりくみの大切さが指摘されました。

この総会に、長崎からは谷口会長、広瀬理事、田中理事、山田事務局長、柿田事務局次長、横山中央相談所理事が参加しました。
また、今回の総会で、谷口稜嘩会長が日本被団協代表委員に、また山口仙二元会長が日本被団協顧問に、それぞれ選任されました。
総会では、「NPT再検討会議の成果を踏まえて、被爆65周年の節目の年のとりくみを意気高く前進させよう」という総会決議と、「核被害の非人道性を広く世界に訴えるとともに、国内では非核三原則の法制化を実現しよう」という特別決議を採択しました。

 



◇ 不日印原子力協定構想の破棄を ◇

 被爆者5団体、総理へ抗議文を送付 

 政府がインドとの間で原子力協力協定を結ぼうとしていることを報道で知った被爆者5団体(長崎被災協、原爆遺族会、被爆者手帳友の会、被爆者手帳友愛会、平和運動センター被爆連)は、核不拡散条約(NPT)に加盟していない数少ない国の一つであって、核実験を強行し、核兵器保有国であるインドとの間の協定であることを重視し、6月28日、連名で、内閣総理大臣、外務大臣、通産大臣へ協定締結構想をただちに撤回するよう求める抗議文を送付しました。
長崎被災協など5団体がインドとの間の「協定」を重視したのは、NPT未加盟国、しかも核兵器保有国へ原子力関係技術が広がってゆくと、NPT体制自体が揺らぐことになるからです。5団体では、インドへの核兵器への放棄を促し、NPTへの加盟を働きかけることこそ日本政府の責務、と強調しています。

=長崎市長も反対 近く政府へ要請=

政府がインドと原子力協力協定を締結しようしていることについて。田上長崎市長も「NPT体制」そのものの崩壊につながりかねないと、と反対の意思を示しています。
また、秋葉広島市長とともに政府へ働きかける意向を明らかにしています。

 


 =原爆症認定集団訴訟=
 7月20日11暗から判決 

 長崎地裁での原爆症謬定集団訴訟最後の判決が7月20日午前11時から行われます。原告(裁判を訴えた人)は16人でしたが、うち10名は、新しい審査の方針の下で認定されましたので、判決は事実上まだ評定されていない6名を対象とするものになります。
裁判を支援する会は、当日(7月20日)午前10時に長崎市賑町・中央公園(機関車のある公園)に集合し、10時10分ごろ裁判所へ向かつてパレードを行います。10時半頃から、法廷へ入るための抽選があり、入場券を手に入れた人は法廷へ入って待機し、午前11時から判決文が読み上げられます。その後、市町村会館で報告集会がひらかれます。

 


 

◇ 原爆症認定審査 ◇
 厚生労働省が”滞留”解決策(?)
1件の審査を3分半で・・・ 

 原爆症の認定を申請しても2年も3年も待たされる、というあってはならない状況が続いてきました。日本被怒協もきびしくこのことを指摘、厚生労働省はやっとその重い腰を挙げたのですが…

①厚生労働省が発表した滞留者対策の内容

(1)厚生労働省が発表したところによれば、審査待ちの申請件数(滞留件数)は6600件となっています(2007年度以前の分100件、2008年度の残り3300件、2009年度の残り3200件)。

(2)今年度の新たな申請見込み3800件(月平均‥300件)。
(3)この全部(6600+3600)を今年中に審査することは無理なので、このうち3000件を次年度へ繰越すことにすると、毎月600件審査することで、年間7200件を処理できます。
(4) 2011年度の申請数も今年と同様に月平均300件とすると、新たな申請3600件に今年度からの繰り越し3000件を加えた6600件(1ケ月あたり550件)を審査すると、年度末には滞留はなくなるという計算です。
(5)こうして、2012年度からは、その年度の申請をその年度内に審査するようになる、というのが、今回の厚生労働省の計画です。
(6)現在「消化器系ガン」「消化器系以外のガン」など4部会を設け、それぞれ5名程度の委員を配置し、病気別に分かれて審査が行なわれ、それ以外の病気や複数の病気については、31名の委員全員で審査に当っています。今回の方針では、これまでの4部会のほかに第5部会、第6部会を設け、第1部会~第4部会に属さない病気などを担当することにしています。

②これで、綿密な審査が可能でしょうか。

厚生労働省の滞留解消計画によれば、たしかに滞留はなくなるでしょう。しかし、それでいいのでしょうか。
(1)年間7200件の審査とは1カ月に600件の審査が行われるということです。審査は通常、1カ月に1回行われてきました。だから1カ月に600件の審査とは、1回に600件の審査、ということになります。「計画」によれば6つの部会で処理することになっていますので、平等に分けると、1つの部会でl回(1日)に100件審査をすることになります。
(2)これまで原爆症藤定審査は、午前10時から午後5暗まで行われてきました。昼食休憩をl時間とすると、審査に当てられる時間は1日8時間(360分)です。6時間かけて100件を審査すると、1件当たりの審査時間は、3分36秒です。
(3)審査の際に審査委員が目を通すべき資料は、被爆状況や健康状態などが記されている「申請書」、つぎに医師の「健康診断個人票」、病気と放射線の関係ついての医師の「意見書」、さらに諸検査の結果等のコピーなどたくさんあります。これらに目を通し、「認定」「却下」「保留」の判定を下すのです。しかもこの判定は個人的な判断ではなく、(部会)としての合議の末の判断でなければなりません。
果たして3分38秒でできるでしょうか。絶対に無理といわなければならないでしょう。

③広島・長崎でも審査会の開催を!

こうなると、審査会の開催を月l回だけでなく、月2回あるいは3回に増やす以外に解決の道はなさそうです。ところが東京での月間複数開催は無理のようです。とすれば、束京での開催と並行して、広島・長崎でも審査会を開催するほかに解決できそうもありません。幸い広島・長崎なら、被爆者医療の専門医・研究者も多いはずです。
地元でなら、月間複数回開催もできないことはないでしよう。  被爆者は、迅速で丁寧な審査を求めているのです。

 


◇ 時の言葉 ◇

 原爆被害の国家補償 

 私たちは、いまの「援護に関する法律」を改正して、「原爆被害への国家補償の実現をめざす」ことを、今年の活動の第1項目に掲げました。

実は国家補償という言葉は、いまから54年前、私たちの長崎被災協の結成を呼びかけるチ ラシにも出てくる言葉です。つまり、原爆被害への国家補償の実現は、先輩たちが長崎被災協を結成したときの、会の目的だったのです。
原爆の被害は、国(政府)が起こした戦争のせい  私たちが被爆者になり、さまざまな被害に苦しんだのは、国(政府)が戦争を起こしたからなのです。
国(政府)が戦争さえ起こさなかったら、家族を失うことも、家を焼かれることも、健康を損なうことも、なかったはずです。
それなら政府は、私たちに謝罪し、償うのが当たり前です。
国の補償は、2度と戦争を起こさないという国の誓い 過ちを償うことは、同じ過ちをくりかえさない誓いの証です。
憲法九条を持つ日本の国の政府なのに、どうしてあの戦争の被害を償おうとしないのでしょうか。長崎被災協の結成を呼びかけた12人の方々のうち、すでに10人の方が亡くなられました。
私たちは先輩の思いを胸に、こんどこそ原爆の被害への国の償いを実現させましょう。

 


 

 香焼被災協が総会 

 香焼被災協は、6月1日、香焼町の公民館で総会を開き1年間の活動報告と決算を承認、これからの運動について話し合い、参加した山田事務局長は、被爆者をめぐる最近の状況について報告しました。このあと懇談に入り、あらためて被爆当時のことを話し合いました。
この日は、たまたま、山田事務局長の79回目の誕生日に当たっていたので、豪華な花束が山田事務局長へ贈られました。


長崎被災協6月の動き

1日 被団協中央相談所理事会
(横山)
香焼被災協総会 (山田)
8日 新聞『被団協』発送作業
9日 平和研究所運営委負会
(山田)
10日 被団協総会議案検討会
(谷口、田中、広瀬、山田、柿田)
12日 平和宣言起草委員会
(谷口)
社会保険説明会 (柿田)
14日 被団協代表理事会
(山田)
15日 中央相談所総会、日本被団協総会 (谷口、山田、田中、広瀬、横山)
→16日まで
17日 被団協中央行動 (谷口、山田、田中、広瀬、横山)
24日 福岡市で九州ブロック代表者会議 (山田、柿田)
25日 8・9政府への要望打ち合わせ (山田)
28日 世界平和祈念行事実行委員会(谷口)