2013年2月9日発行の新聞『被団協』352号の内容をご紹介します。

国家補償の被爆者援護法を!

∇1時間の行動で365人が賛同署名△
長崎被災協と二世の会が長崎駅前で

 「国家補償の被爆者援護制法定の実現を目指す署名運動にご協力ください」
「政府が戦争を始めなかったら、原爆のあの悲惨な被害はなかったはずです。市民を被爆者にしたのは国の責任です」
「政府に二度と被爆者を作らない決意があるなら、核兵器の廃絶を目指すとともに、原爆で亡くなった方々へ、そしていまなお苦しんでいる被爆者に償いをすべきなのです」


 1月12日の午後2時から、長崎駅前の高架広場で、この季節としては珍しく暖かい日和の中、広場の柵には『ヒロシマ・ナガサキ 原爆と人間』のパネルが張り巡らされ、チラシを配り、《国家補償の被爆者援護法制定を求める署名運動》が繰り広げられました。
この署名運動を実施したのは、長崎原爆被災者協議会と同二世の会の皆さんたち。
二月に入ると国家補償の被爆者援護法を求める日本被団協の全国統一行動が予定されていますが、この日の長崎被災協と二世の会のとりくみは、二月の全国の行動のさきがけとなる行動でした。
参加したのは、被爆者15名と二世10名。長崎被災協の山田事務局長と田中理事が交代でマイクをにぎり、「被爆70周年の2015年には国家補償の被爆者援護法を!」「憲法を変えて戦争のできる国づくりなどは許せない!」などと訴えました。
こうして1時間の行動で集まった署名は365筆。2205円のカンパも寄せられました。特に高校生など若い層が署名に呼びかけに応じ、写真パネルに見入る人たちもあとをたちませんでした。また、二世の医療についての相談も寄せられました。
今回の行動は、被爆者たちは二世の人たちの参加で元気をもらい、二世の人たちも被爆者たちの頑張りに元気をもらい、すばらしい新年の行動となりました。  (柿田富美枝)


二世の会が「原爆と人間」展
3月2日・3日 国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館で

「長崎被災協・被爆二世の会・長崎」は、被爆体験の継承活動として日本被団協が制作した被爆の実相を伝える写真パネル『ヒロシマ・ナガサキ 原爆と人間』展示会を国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館の交流ラウンジで開催します。
期日は、3月2日(土)と3日(日)の二日間で午前10時から午後5時まで。またこの期間中の午後2時から3時の時間帯には、被爆体験講話も予定されています。
二世の会では、お誘い合わせご来場下さいと呼びかけています。
なお、この展示会の翌日からは、3月4日・5日と北欧のノルウェー政府の主催で「核兵器の人道的被害に関する国際会議」が首都オスロで開催され、日本からも外務省から2名と日本被団協一の田中事務局長、朝長万左男長崎原爆病院院長の4名が参加されます。
さきの衆議院選挙の中では、自衛隊を戦争のできる国防軍へ、だとか、核武装をも肯定する発言が相次ぎ、そのための憲法改正の構想も登場しましたが、核兵器のない世界を展望するオスロでの国際会議を前に開催される『原爆と人間』展は、意義深い催しとなりそうです。


却下理由のない厚労大臣の却下通知書は
違 法 文 書
厚労省は早急に改善を!

処分理由を欠いた違法文書
行政手続法第8条1項は「行政庁は、申請により求められた許認可などを拒否する処分をする場合は、申請者に射し同時に、当該処分の理由を示さなければならない」と定めています。では、厚生労働省の却下通知書に、却下の理由は書いてあるでしょうか。
確かに、「記」以下に19行の文章が書かれていますが、
ここに書いてあるのは、いろんな情報をもとに医学的知見や経験則に照らして検討したといういわば経過報告だったのです。却下の理由ではなく経過報告だったら、そのまま認定通知書にも使えるはず。

却下にも認定にも使える便利な言葉?
却下通知書に記されている言葉が認定の場合も使えるはずだと使ってみたのが、下部の文章です。
「理由」のところはそのままで、下の方をちょっと変えると、今度は「認定の文書」と
なるのです(認定の場合は、こんな文書は使いません)。

=これが厚生労働大臣の《却下》の理由=

今回貴殿の申請された疾病について、疾病・障害認定審査会において、貴殿の提出された申請書類から得られた被爆時の状況、被爆後申請時に至るまでの健康状況及び申請された疾病の治療状況等に関する情報をもとに、これまでに得られている医学的知見や経験則等に照らし総合的に検討されましたが、当該疾病については、原子爆弾の放射線に起因していると判断することは困難であると判断されました。
上記の意見を受け、貴殿の申請を却下いたします。

=結論を変えるとそのまま《認定》の理由に=
今回貴殿の申請された疾病について、疾病・障害羅定審査会において、貴殿の提出された申請書類から得られた被爆時の状況、被爆後申請時に至るまでの健康状況及び申請された疾病め治療状況等に関する情報をもとに、これまでに得られている医学的知見や経験則等に照らし総合的に検討されましたが、当該疾病については、原子爆弾の放射線に起因していると判断することは妥当であると判断されました。
上記の意見を受け、貴殿の申請疾病を原爆症と認定します。

なぜこんなずさんな対応が…
最大の問題点は、審査時間が短すぎることではないでしょうか。下部の数字は、昨年の10月・11月・12月の実績ですが、1件当たりの審査時間は2分から3分足らず。これで綿密な審査ができるはずはありません。それかといって、「理由」をつけなければ行政手続法違反。苦肉の策が今の手法なのですが…。

早急な改善を!
いま、検討会で原爆症諷定のありかたについての検討がなされていますが、その結論を待つのではなく、一刻も早く審査会で改善に取り組むべきではないでしょうか。  (山田拓民)

①2012年10月29日の審査
審査数

原爆症認定審査139件
異議申し立て審査11件 合計150件
所要時間11時~17時=6時間うち1時間は昼食・休憩時間
審査のための時間=5時間(300分)
1件当たり審査時間=300分÷150件
⇒2分②2012年11月26日の
審査数

原爆症認定審査115件異議申し立て審査33件 合計148件所要時間10時~17時=7時間
うち1時間は昼食・休憩時間
審査のための時間=6時間(360分)
1件当たり審査時間=360分÷148件
=2.43分⇒2分26秒
③2012年12月17日の審査
審査数

原爆症認定審査125件
異議申し立て審査10件 合計135件
所要時間10時~17時=7時間
うち1時間は昼食休憩時間
審査のための時間=6時間(360分)
1件当たり審査時間=360分÷135件
=2.67分⇒2分40秒

2012年10月・11月・12月の3カ月の1件当たり審査所要時間の平均は、2分28秒となります。なお、ここで使った数字は、すべて、厚生労働省のホームページに記載されているものか、それをもとに計算したもので、数字の信憑性は厚生労働省の責任によるものです。


図 書 紹 介
岩波ブックレット 未来に語り継ぐ戦争
東京新聞社社会部 編

 

普通この欄でご紹介するのは新しく刊行された書籍ですが、今回は違います。出版されたのは昨年1月であり、収録されているのは2006年ら2011年までのそれぞれの年の8月15日になされた対談(2011年だけは8月14日、2007年は5月3日にも)なのです。
しかし、不思議なことに、対談の内容について、読んでいて少しも時間的なズレを感じないので、改めてここでご紹介することにしたのです。
登場するのは、むのたけじと雨宮処凛、半藤一利と田口ランデイ、品川正治と鈴木邦男など全部で7組の、いずれも戦争体験者と戦争を知らない世代が戦争について語り合い、そこから戦争とは何だったのかを見出そうという企画なのです。
私がこの本をご紹介する気になったのは、「憲法を変えて、戦争のできる国へ」というような風潮が伺える昨今だけに、お互いに戦争を体験した世代として、戦争を知らない世代ともっともっと戦争とはなんだったのかを話し合うことが大切だと思ったからでした。
◇岩波書店 588円        (山田拓民)



長崎被災協1月のうごき

10日 新聞「被団協」の発送作業
12日 長崎駅高架広場で街頭宣伝行動 (長崎被災協・二世の会)
二世の会会議(柿田)
15日 原爆症認定(異議申し立て)で打ち合わせ(山田)
22日 いきいきコープ理事会(柿田)
28日 原爆症認定(異議申し立て)で打ち合わせ(山田)
29日 事務局会議「日本被団協の運動方針について」
原爆症認定(異議申し立て)で打ち合わせ(山田)
30日 原爆症認定申請(異議申し立て)で意見陳述(山田)
31日 核兵器廃絶を求める署名運動実行委員会(山田)