2013年8月9日発行の新聞『被団協』358号の内容をご紹介します。

戦争被害受忍論に依拠する市の「被爆者対策の理念」は全面改訂を!
長崎被災協が長崎市原対部へ要請

すでに、8月号、9月号でお伝えしたように、長崎市の『原爆被爆者対策事業概要』は、「原爆被爆者対策の基本理念」として、厚生大臣の私的諮問機関「被爆者対策基本問題懇談会」(略称・基本懇)の「答申」をそのまま掲載しています。
長崎被災協の谷口会長と山田事務局長は、10月3日、長崎市原爆被爆対策部を訪問、野瀬弘志部長へ《基本懇意見》をそのまま長崎市の被爆者対策の基本理念としていることは許せないと指摘し、『事業概要』の「基本理念」の全面的な書き換えを要求する文書を提出しました。

◇許せないことの第一は、戦争被害受忍論
長崎市が被爆者対策の基本理念として掲げた《基本懇意見》の1番の欠陥は、戦争の被害は、国民として我慢するのが当たり前だ、と言っていることです。これを「戦争被害受忍論」といいます。
原爆の場合も、政府が救護所を僅か2カ月で閉鎖し、被爆者を放置したのは、この考えが政府にとっては当たり前だったからです。でも被爆者はくじけませんでした。1956年の5月に広島県被団協を、6月に長崎被災協を、そして8月には日本被団協を結成した被爆者は、「政府は原爆の被害を償え」の運動を全国的に展開、翌57年に政府は「原爆医療法」を作ったのでしたが、熱線や爆風によるケガなどは排除され、原爆による無残な死者たちも放置されたのでした。

◇心機一転、積極的な被爆者対策へ
こうした経過の中で、なおも、戦争だったのだから仕方がないという《受忍論》を、市の被爆者対策の「基本理念」に据えるのは、折角これまで、取り組んできた長崎市の被爆者対策の実績を傷つけるものといわざるをえません。長崎市が私たちの指摘をきちんと受け止め、《基本懇意見》を排除し、積極的な被爆者対策へと舵を切ることこそが、長崎市の大きな願いである「核兵器廃絶」へとつながるのではないでしょうか。(山田拓民)


◇原爆症認定山本訴訟◇

10月21日13時30分から第1回審理原爆症認定審査での却下を容認できないと8月に山本寛さんが起こした裁判の第1回の法廷が、10月21日午後1時30分から長崎地裁で開かれます。山本さんも意見を述べられる予定です。
山本さんは、5歳の時に爆心地から2・4キロの立山町で被爆、心筋梗塞を患って原爆症の認定を申請したのですが却下され、異議申し立ても棄却されたため、提訴されたものです。7月に大阪地裁で判決があり8名の原告全員が勝訴した時、その中の3名が心筋梗塞で、いずれも山本さんよりは遠距離での被爆でした。法定で、厚生労働省側がどのような意見を述べるのか注目されています。21日は傍聴席を埋め尽くしましょう。


核廃絶の決意新たに
=県内外の130名が参加=
山口浅二さんを偲ぶつどい

長崎被災協は、9月28日午前11時から長崎市茂里町の法輪会館で、去る7月に亡くなられた山口仙二さんを「偲ぶ会」を開催、県内外から130人が参加、それぞれに哀悼の思いを新たにしました。
会の冒頭、日本被団協代表委員・岩佐幹三さんは、「仙二さんに続き、核兵器のない世界を目ざして国際世論を起こし、アメリカに追随し核抑止力論に頼る国に政策の転換を求めよう」と述べました。
会では、生前の山口仙二さんの映像を流したあと、生前親交が深かかった人達が次々と、山口さんの気さくな人柄や、山口さんが原爆への激しい怒りを続け、運動に取り組んだことなど、思い出を語りました。
高橋眞司・長崎大学客員教授は講演を行い、「仙二さんは核暴力のない世界へ向かって人類が営みを続けている象徴であり、さきがけだった」と述べました。
「長崎被災協・二世の会・長崎」の「はむingはーと」の平和の歌のあと、山口さんの被爆体験を長崎と諌早の二世の会の11名によって群読が行われました。会場は静まりかえり、涙を拭う姿も見られました。
こうして被爆者援護や反核・平和運動をリードし、亡くなった山口さんの遺志を引き継ぎ、参加者たちは核兵器廃絶運動の継承を誓い合ったのでした。
この「偲ぶ会」は、準備から当日の司会、受付、案内などを「二世の会」が担当、被爆者や参加者たちに、「二世の会は頼もしい」「二世の会があって本当に良かった」と喜ばれました。 (林田富美枝)


改善の兆しも見えない
=原爆症認定審査=

もう随分長いあいだ、原爆症認定の1件当たりの審査時間が2分か3分で、認定されるのは50%程度(良くて60%)と言ってきましたが、下に掲げているのは、最新のもの(ことし9月30日の審査…いま発表されている資料としては、最新のものです) この日の審査数は原爆症認定審査が181件、異議申し立て審査が19件で合計200件。その審査に要した時間が、午前10時から午後5時までの7時間かた昼食休憩の1時間を差し引いた6時間(360分)ですから、1件当たりの審査時間は1分48秒となります。
私たちの指摘なんか、全く聴く耳もたず、という有様です。
でも、本当にこんな時間で、原爆症としての謬定の可否を判断できるのでしょうか。
被爆者が厚生労働省へ提出する審査のための資料は、申請書と医師の診断書・同意見書だけではありません。少ない人で、2~3種類、多い人では6種類、7種類の診断結果や検査結果などを提出しているのです。
原爆症認定審査に携わる人たちは、これらの資料に目を通して、しかも原爆症と認定すべきか、却下すべきかを判断するというのですから、まさに神業としか言えないでしょう。
さらに、認定率(審査した中で認定される割合)を見ると、原爆症認定が55%で、異議申し立てについては僅かに3%にすぎません。一旦却下されると救済される道は、ほとんどないのです。こんな認定審査で、いいはずはありません。 (山田拓民)

2013年9月30日
疾病・障害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会の
開催結果

厚生労働省健康局総務課

○日時

平成25年9月30日(月) 10:00~

○場所

中央合同庁舎5号館 厚生労働省 専用第14会議室(22階)

○出席者

佐々木委員、石橋委員、角委員、宮川委員、泉二委員、米倉委員、
赤星臨時委員、荒井臨時委員、伊藤臨時委員、岩永臨時委員、碓井臨時委員、大林臨時委員、
北岡臨時委員、北野臨時委員、木村臨時委員、久保内臨時委員、小出臨時委員、関根臨時委員、
田中臨時委員、谷口臨時委員、田利臨時委員、難波臨時委員、伴臨時委員、藤原臨時委員、
蒔本臨時委員、山科臨時委員
(欠席委員 吉田委員、相光臨時委員、下村臨時委員、波多野臨時委員、福田臨時委員、松井臨時委員)

○議題

原爆症認定審査(非公開)

○議事

審査の結果
(1)原爆症認定審査

諮問件数 答申件数 答申内訳 審議未了
認 定 却 下 保 留
悪性腫瘍・良性腫瘍 157(0)件 157件 97件 58件 2件 0件
造血機能障害 10(0)件 10件 6件 4件 0件 0件
甲状腺機能障害 6(0)件 6件 1件 4件 1件 0件
視機能障害 5(0)件 5件 0件 5件 0件 0件
肝機能障害 1(0)件 1件 0件 1件 0件 0件
心疾患 8(0)件 8件 1件 7件 0件 0件
その他 4(0)件 4件 0件 4件 0件 0件
合計 191(0)件 191件 105件 83件 3件 0件

原爆症の認定審査について、191(0)件の諮問があり、191件の答申があった。内訳は認定105件、保留3件、却下83件である。また、審議未了は0件である。


(2)議申立て審査

諮問件数 答申件数 答申内訳 審議未了
認 容 棄 却 保 留
19(0)件 19件 1件 18件 0件 0件


これが自民党の日本憲法「改正」案 (その8)

日本国憲法 自民党憲法改正案
日本国憲法(現行)にはこの条項の規定はありません。 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。


緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。


内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。
また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。


第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。
この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは「五日以内」と読み替えるものとする。


長崎被災協8月のうごき

2日 被団協九州ブロック代表者会議⇒3日まで (山田・柿田)
4日 原爆症認定審査・異議申し立ての口頭陳述
(3名・山田、l名・柿田)
5日 前日に同様口頭陳述 (4名・山田)
13日 理事会
17日 日本被団協代表理事会 (谷口・山田⇒18日まで)
20日 日本被団協と厚生労働大臣の第3回定期協議を傍聴(山田)
25日 「山口仙二さんを偲ぶ会」現地での打ち合わせ
(山田、柿田、田中、森、佐藤)
28日 「山口仙二さんを偲ぶ会」
29日 県下の「核実験に抗議する市民の会」総会・交流会
30日 ウズベキスタンからの留学生2名来訪・交流 (山田)