2015年1月9日発行の新聞『被団協』375号の内容をご紹介します。

◇太平洋戦争終結から70年◇

なくせ、すべての核兵器
政府は原爆の被害・戦災の被害を償え!

 新年、明けましておめでとうございます。
とは言え、新聞に掲載された総理の年頭の所感を見ると、私たちはとても屠蘇に浮かれてはおれないようです。
総理はいっています。
「信任という大きな力を得て、今年はさらに大胆にスピード感を持って改革を推し進める。日本の将来を見据えた改革断行の1年にしたい」(1月1日の長崎新聞から)
首相はいまのところ、彼が言う「改革」が「戦争のできる国づくり」であるとは言っていません。しかし、昨年来の首相の言動をたどれば、たとえ選挙期間中は秘匿していたとしても、首相の狙いは明らかです。
そして、こういう時だからこそ、私たちがこれまで掲げてきた「戦争の被害・原爆の被害を国は償え」という課題が大きな意味を持ってくるのではないでしょうか。
国民がこうむった戦争の被害は放置しておいて、「戦争のできる国」を作ろうと言うのですから、とんでもない話です。
たしかに戦後70年ということになると、戦争を知っている世代は減り、戦争を知らない世代が多数を占めてくるでしょう。しかし、私たちが幼かった頃と異なり、戦争被害の実態は、かなり国民の中に浸透しているのではないでしょうか。

私たちがしなければならないことは、沢山ありそうです。
まず「核戦争おこすな」であり、核戦争につながる「戦争そのものに反対」することです。同時に「70年前の原爆被害をきちんと償え」の要求を国民的な課題に据え、国民の中に、戦後70年間の政府の対応がどんなに誤っていたかを明らかにすることです。そうすることで、いわゆる一般戦災者を放置してきた政府や司法の誤りも浮き彫りにされるでしょう。そして、こうした課題を国民的な運動として取り組む中で、日本国憲法の意義も明らかになるのではないでしょうか。(山田拓民)


4月末から核不拡散条約・再検討会議
被災協は谷口会長ら3名を派遣

12月号でもお伝えしましたように、ことし4月末からニューヨークで、第9回核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれ、日本被団協の代表団のメンバーとして長崎からも谷口会長、田中理事、柿田事務局次長の3名を派遣することを理事会で決定、目下その準備を進めているところです。
日本被団協からは、代表団として長崎の3名を加えて、総勢50名を派遣する予定で、現地での活躍が期待されています。
ところで、これも12月号でお願いしましたように、3名の代表をみんなの力で送り出そうと、いま、長崎被災協では、派遣費の募金運動に取り組んでいます。出費多端な折とは思いますが、3人の代表への激励の意味を込めて、積極的なご協力を頂きたく、よろしくお願いいたします。
(長崎被災協・事務局)

NPT再検討会議派遣の募金運動へのご協力を
上の記事にありますように今春、3名をアメリカヘ派遣すると、一人あたり50万円、合計150万円の旅費・滞在費が必要なのです。
今回の会議は記事にもありますように5年ごとに開かれているとても大事な会議なのです。そして被爆地から核兵器の被害を体験した被爆者が参加することは、会議そのものを成功させる上でも大きな意味があります。
渡米する3名の行動を励ます思いを込めて、渡米支援の募金活動を始めました。読者の皆さん積極的なご協力をお願いいたします。


NPT再検討会議派遣の募金運動へのご協力を

上の記事にありますように来春、3名をアメリカヘ派遣すると、一人あたり40万円合計120万円の旅費・滞在費が必要なのです。
今回の会議は記事にもありますように5年ごとに開かれているとても大事な会議なのです。そして被爆地から核兵器の被害を体験した被爆者が参加することは、会議そのものを成功させる上でも大きな意味があります。
被災協では、渡米する3名の行動を励ます思いを込めて、渡航支援の募金運動を始めました。読者の皆さの積極的なご協力をお願いいたします。


この1年の課題を点検し、新年度の新たな歩みへ

》この1年間の私たちの課題《

  1. 2015年度の「国家補償の被爆者援護法」制定をめざし、2014年度は全力を挙げて取り組みます。
  2. 「国家補償の被爆者援護法」ができるまでは、併せて原爆症認定制度の改善など、現行制度内での改善を追求します。
  3. 「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」した日本国憲法を順守し、「戦争のできる国づくり」に反対します。
  4. 高齢化した被爆者の孤立を防ぎ、いろんな形での「被爆者の会」への結集を図ります。
  5. 長崎被災協の組織、財政の両面での強化を図ります。

昨年3月31日、長崎被災協では、評議員会と理事会の合同会議を開き、1年間の活動を振り返るとともに、これからの活動の概要を確認しました。上に掲げるのは、その日決まった昨年4月から今年3月までの「私たちの1年間の課題」です。
今年度も、あとわずか。全力を挙げて頑張りましよう。

被爆者がまず掲げた要求が国家補償の被爆者援護法
私たちは、長崎被災協結成を呼びかけた時(1956年6月)から、「原爆の被害へ国の償い」(言い換えれば「国家補償の被爆者援護法」の制定)を求めてきました。そして同年8月、被爆者の全国組織・日本被団協を結成した被爆者は、同年9月、「原爆被爆者援護法案要項」を発表して、政府に《原爆被害への国の償い》を求め、その制定を迫ったのでした。

被爆者の願いに応えることができなかった歴代政府
しかし政府はかたくなにこれを拒み続けて、今日に至っているのです。それどころか、安倍政権は、今日なお「戦争のできる国づくり」を唱え、そのための法整備に取りかかろうとしています。
「原爆の被害への国としての償いを!」という私たちのきわめて当然な要求に真剣に取り組もうともしてこなかった歴代政権もまた、被爆者の要求を実現したら、二度と戦争ができなくなることを恐れたからではないでしょうか。
私たちの要求と運動は、まさに国民的な要求、運動に発展するものであり、そう発展させる責任が、私たちにあるのです。

国民的な運動へと発展させよう被爆者の願い
こう見てゆくと、昨年3月末に掲げた私たちの課題、特に①と③は、単に一年間の私たち被爆者の課題というのではなく、これからも私たちが市民の皆さん方と共に追求しなければならない重要な課題なのです。
3月末には、この1年間の取り組みを総括し、新たな意気込みで、平和と民主主義を守り発展させ、核兵器のない世界への大きな一歩を踏み出そうではありませんか。


◇図書紹介◇
岩波現代文庫
井上ひさし・樋口陽一著
「日本国憲法」を読み直す

「憲法」が脅かされている時だけに、憲法の本を取り上げました。この本は、1994年に講談社から発刊されたものですが、昨年7月に岩波の現代文庫として再登場したものです。
内容は、「ひょっこりひょうたん島」などで知られる作家の井上ひさし氏と憲法学者・樋口陽一氏の対談で構成されており。「第一章 日本国憲法は世界史の傑作」、「第二章 憲法九条をめぐる改憲譲のまやかし」、「第三章 国連中心主義の行き着く先」という各章のテーマをみても(この一冊は、五つの章からなっています。)手にとって見たくなるような本ではないでしようか。

第三章のテーマにしても、日本の国連加盟をめぐって、当時の国連事務総長ガリが軍事面を含めての国連への積極的な参加を求め、日本国内の改憲派を喜ばせたのでしたが、ニューヨークータイムズは厳しくこれを批判、当時の宮沢首相も慎重な対応に終始したため、ガリ事務総長も発言を取り消した、ということも紹介されています。こうした挿話も交え、内容の豊富な本だと私は思いました。始めから終わりまで通して読むのもいいでしょうし、目次を見て、関心のあるところからページを繰るのも楽しいものです。

(山田拓民)


12月のうごき

5日

県原爆対策課長来訪

8日 不戦の集い
9日 原水協と共同で浜の町で核兵器廃絶の街頭宣伝と署名運動
「本島さんを送る会」実行委員会(柿田)
10日 事務局会議・当面の取り組みについて
13日 市民会館文化ホールで本島さんを送る会。市民600名が参加
16日 NPT再検討会議への代表派遣の募金要請のための企業・団体訪問(谷口、田中、柿田)
17日 日本被団協・組織問題小委員会(柿田)
18日 日本被団協二世委員会(柿田)
長崎市平和大行進部会(谷口)
19日 NPT再検討会議への代表派遣の募金要請のための企業・団体訪問(森内、田中、柿田)
22日 NPT再検討会議への代表派遣の募金要請のための企業・団体訪問(山田、田中、柿田)
26日 被爆70年を前にしての挨拶に長崎市原爆被爆対策部部長、資料館館長、担当課々長が来訪