2015年3月9日発行の新聞『被団協』377号の内容をご紹介します。
安倍政権の戦争政策と対決し、
国家補償の『援護法』制定へ
被災協・第4回理事会開催
長崎原爆被災者協議会は、2月25日午後2時から、被災協2階会議室で第4回の理事
会を開催、今年度の活動と財政のまとめを行い、新年度に向けての取り組みと予算につ
いて協議しました。なおこの内容については、さらに3月31日に予定している第5回
理事会で検討のうえ案を確定し、6月の評議員会で決定することになります。
この日の理事会は、議長に田中重光理事を選出し、
①2014年度事業概要と
②同決
算の報告かあり、
③2015年度事業計画、④同予算等について事務局長・事務局次長から提案があり、意見を交換したところです。
事業報告で山田事務局長は、私たちの原爆の被害(戦争の被害)への国の償いを求める
とりくみは、安倍政権の「戦争のできる国づくり」と真っ向から対決するものだとその
意義を強調、被爆者が高齢化する中で、決して楽な取り組みではないが、全力を挙げて
取り組もうと訴えました。
また、国家補償の被爆者援護法を目指す運動のなかで、署名運動は重要な位置を占め
ますが、今年度集めた署名は総数766名となっており、街頭での署名行動は4回実施し、この街頭行動での署名も473名でした。
なお、私たちは、国家補償の被爆者援護法の制定だけを目指しだのではなく、①原
爆症認定制度の改善も求めましたし、②日本国憲法を守り、安倍総理の「戦争のできる国
づくり」に反対する取り組みも大きな課題でした。さらに③高齢化した被爆者の孤立を
防ぎ、地域の被爆者の会への結集を図ることも重要な取り組みでしたし、④長崎被災協
の組織や財政面での強化を図ることも、大事な課題でした。
これらの課題は、一朝一夕に完了するものではなく、今後も粘り強く追及してゆかなければなりません。理事会は、こうした課題をふまえた2015年度のとりくみについても了承し、終了しました。
なお、3月末にはもう一度理事会を開き、内容を再度検討した上で、6月に開催予定
の評議員会で最終決定をすることになっています。
当日の出席者は理事11名中7名、監事2名中1名でした。
いまの『法律』が出来るときの各県の署名集約状況
– | 人口 | 目標 | 実績 |
福岡 | 4,719,259 | 470,000 | 158,958 |
佐賀 | 880,000 | 80,000 | 83,195 |
長崎 | 1,593,968 | 150,000 | 223,208 |
大分 | 1,250,214 | 120,000 | 189,205 |
熊本 | 1,837,747 | 180,000 | 31,514 |
宮崎 | 1,175,543 | 110,000 | 42,188 |
鹿児島 | 1,819,270 | 180,000 | 33,011 |
沖縄 | 1,179,097 | 110,000 | 47,079 |
合計 | 14,455,098 | 1,400,000 | 808,358 |
被爆70年の今年こそ反省の好機 山田 拓民
『朝日新聞』が日本被団協の改定案を紹介し、「原爆症認定訴訟 法改正で解決はかれ」という「社説」を掲載したのは、1月31日の朝刊でした。その後、このことに対する厚生労働省の対応はまったく見えてきません。一体どうしたのでしょうか。それどころか、今回原爆症問題で控訴したところを見ると、厚生労働省には反省の気持ちは全くないというのでしょうか。
もともと政府には、市民の戦争被害を償うという気持は全くありませんでした。戦時災害保護法の適用はわずか2ヶ月で幕を閉じ、救護所はあっけなく閉鎖されてしまったのでした。
昭和32年3月31日に、はじめて被爆者のための「医療法」ができるのですが、それもその前年の8月に被爆者の全国祖織・日本被団協が結成され、その年の9月、「国家補償の被爆者援護法を作れ」の要求を突きつけられて、窮余の策として作られたものであり、救済の対象となったのは、原爆の放射線に起因するものに限られ、熱線、爆風による被害などは完全に無視されたのでした。そしてこのことは、今もなお続いているのです。
被爆から70年目の8月は、もうすぐです。この70年間の被爆者行政を省みて、根本的な改善策を考える気持は、あなた方にないのでしょうか。
日本被団協 九州ブロック代表者会議
日本被団協の九州ブロック(福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島、宮崎、大分、沖縄の8県の被爆者の会で構成)は、3月5日午後1時半から、福岡市東区馬出4丁目の福岡県教育会館で各県の代表者を集め、会議を開き、当面の取り組みについて意見を交換しました。
今年112月5日・6日に長崎市で開催する相談事業講習会についても、長崎から現在の準備の状況を報告、被爆70周年の意義深い集会となるよう訴えました。会議は午後4
時30分、終了しました。
長崎被災協からは、この日の会議に山田事務局長、柿田事務局次長、中央相談所委員・横山照子の3名が出席しました。
被団協の『原爆症認定制度』への提案
(2012年1月版)
ことし2月の「被団協(長崎版)」で1月31日の朝日新聞が、『原爆症認定訴訟 法改正で解決図れ』という社説を掲げ、その中で日本被団協の『原爆症認定制度への新しい
提案』を紹介し、「被爆者援護法も7月で施行20年となる。法改正を考えるいい機会だ」といっていることをお伝えしました。
このことについて、数人の方から、「日本被団協の『原爆症認定制度への新しい提案』の内容をもう少し知りたい」というお声を頂きましたので、ここにその概要をご紹介いた
します。
2012年1月25日、被爆者の全国組織・日本被団協は、原爆症認定審査のあり方についての重要な提案を行いました。それは、それまで厚生労働省の原爆症認定審査のあり方について、被爆者がどんなにその改善を求めても、厚生労働省はそれに耳を傾けようとしなかったからです。
被爆者は、原爆症認定をめぐる裁判の中で、実施され続けている原爆症認定審査の不合理さ、不当性を指摘し、裁判所もそれを認めて裁判に勝利してきたのです。
こうした経過の後2009年8月、日本被団協と当時の総理大臣麻生太郎氏との間で『確認書』が交わされ、今後問題が起こったときは、訴訟の場で争うのではなく、定期協議の場での話し合いで解決を図る、ということになったのでした。
ところがこの定期協議は、第1回が2010年1月に開かれたものの、その後なかなか開かれず、2012年に、やっと3回目の協議が行われたというのがその実態でした。日本被団協としてはそのたびに、認定審査の問題を指摘し、その改善を求めて来たものの、被爆者にとっては納得できない原爆症認定審査が、その後ずっと続いてきたのです。
こうした経過に我慢できなくなった日本被団協が提起したのが、ここに掲げた『原爆
症認定審査のあり方に関する日本被団協の提言』だったのです。
◆日本被団協提案の内容
①被爆者手当 介護手当と小頭症手当を除く諸手当を一本化して「被爆者手当」とし、すべての被爆者にこの「被爆者手当」を支給します。支給額は、今の健康管理手当相当額とします。 障害を持つ者には加算しますが、加算後の最高額が今の医療特別手当額を下回らないようにします。②被爆者手当の加算区分とその適用など 放射線、熱線、爆風などによる障害の程度によって、いくつかの加算区分を設けるのが相当で、今のところ、3段階の区分(重度・中度・低度)が考えられています。 なお新たに追加すべき疾病の要件は重篤度の判断などは日本被団協推薦の委員を含んだ「被爆者援護審議会」(仮称)で行います。 |
ここに掲げた文章は、2012年1月25日に発表された『原爆症認定制度のおり方に関す
る日本被団協の提言』の要約であって『提言』そのものではありません。提言そのものをご覧になりたい方は、長崎被災協・山田までお問い合わせ下さい。 (山田拓民)
-読書-
集団的自衛権の何が問題か
▼解釈改憲批判▼
奥平康弘・山口二郎 編
これまで紹介してきた書籍は、どちらかといえばページ数の少ないものでしたが、今度のものは327頁からなるものなので、現物を手にされると、若干ひるまれるかもしれませんが、20名のそうそうたる先生方が、分担して執筆されており、それぞれ安倍総理の「改憲論」の誤りを、分かりやすく丁寧に述べておられるので、読み進まれるうちに、引き込まれてゆくのではないのでしょうか。
なお、すべてが「論文」ではなく、対談が1件、インタビューが5件含まれています。
また冒頭でで327頁の本と紹介しましたが、なにしろ編集者が(インタビューなどを含む)
20名ですので、一項目の平均頁数は15頁となり、それ程気に病むことはないでしょう。
ところで、この本の執筆者には、自民党の衆議院議員も1名、民主党の参議院議員も1名参加しておられます。特にいまの自民党議員は、みんな改憲論者だと思っていたので、びっくりしてその方の頁を開いてみましたら、この方は、民主的なワイマール憲法のもと
ナチスードイツが全権委任法を国会で成立させ、実質的にワイマール憲法を葬り去った
歴史を思い出したと言っておられるのです。私も反省したところです。(山田拓民)
2月のうごき
2日 | 事務局会議 |
3日 | 濱谷正晴氏、栗原淑江さんが「ノーモアーヒバクシヤ記憶遺産」の資料の件で来所(4日まで) |
4日 | 日本被団協代表理事会 (谷口、山田)⇒5日まで |
5日 | 被爆者5団体、長崎市長へ要請(横山・柿田) |
9日 | 事務局会議 「二世の会」が長崎市へ要請(谷口、山田も同行) |
12日 | 新聞「被団協」発送作業 |
15日 | アピール署名4周年のつどい(谷口、田中、柿田) |
16日 | 大村被爆者のつどい(谷口、山田、柿田) |
17日 | ノーモアヒバクシヤ訴訟(山田ほか) |
19日 |
「二世の会」が長崎県へ要請(谷口・山田も同席) 「ふたたび被爆者をつくるな」 アピール署名の街頭宣伝・署名行動 |
22日 | 諌早被災協役員会・小浜で開催(山田) |
23日 | 事務局会議 |
25日 | 第4回理事会 |