2009年7月9日発行の新聞『被団協』309号の内容をご紹介します。

◇甲状腺機能低下と肝機能障害◇
 制約つきで「積極的認定」へ 
原爆症認定審査会が不当な決定

 原爆症認定集団訴訟で18連敗を喫し、認定審査基準の改善を余儀なくされた厚生労働大臣は、その作業を認定審査機関である疾病傷害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会(被爆者医療分科会)にゆだね、被爆者医療分科会は、6月22日、放射線に起因すると認められた場合に限って、甲状腺機能低下症と肝機能障害(個性肝炎、肝硬変)を「積極的認定」の対象とするとい う検討結果を発表、7月から適用することにしました。
甲状腺機能低下症と肝機能障害については、これまで多くの裁判所の判決で、原爆症と認められてきましたが、被爆者医療分科会は、かたくなに認定を拒み、厚生労働大臣も被爆者医療分科会の審査結果を追認してきました。
もともと原爆症というのは 原爆の放射線に起因する負傷・疾病で現に医療を要する疾病を指すのですから、原爆の放射線に起因しない負傷・疾病を原爆症と認定することはないわけですが、昨年3月に定められた「新しい審査の方針」で、特に「加齢性をのぞく」とされた白内障や「放射線起因性が認められる」と限定された心筋梗塞が、その後の審査でどのように扱われたかをみると、被爆者医療分科会の意図は明確です。
昨年1年間に原爆症と認定された数は、2969件で、うちガンや白血病などでの認定は84%を占めているのに対し、「放射線に起因する」と限定された白内障と心筋梗塞で認定されたものは全体の 1・4%に過ぎません。
判決と世論に押されて、甲状腺機能低下症と肝機能障害を「積極的認定」の枠に加えたものの、被爆者医療分科会の消極的姿勢は強硬です。

条件付き「積極認定」に
被団協が抗議の声明

 被爆者医療分科会が、「放射線起因性が認められる」という条件をつけて、甲状腺機能低下症と慢性肝炎・肝硬変を「積極的認定」に加えたことに対して、日本被団協は、抗議の意味を込めた「声 明」を発表しました。
「声明」は、慢性肝炎・肝硬変と甲状腺機能低下症を積極的認定として追加したことについては一定評価するものの、これらの疾病に 「放射線起因性が認められる」という条件がつけられていることについてはきびしく抗議し、削除を要求しています。

 


=18連敗に反省の色なし=
 「認定はきぴしくて当然」 
福岡高裁での被告・国側陳述

 被告厚生労働大臣が6月9日に東京高裁の判決を認め、上告を断念して6日目に開かれた法廷だっただけに、6月15日の福岡高裁は、被告の代理人がどのような意見を述べるのか、長崎からの傍聴者に、熊本、福岡からの支援の傍聴 者が加わり、ほぼ満席となつ た傍聴席の視線は、意見陳述 に立った国側の代理人に集中しました。
陳述者は、まず、被爆者は全国に約24万人いると指摘、その人たちは「手帳」を持っているだけで、無償で健康診断や健康指導が受けられ、医療費の負担もないと断言したのです。そして一定の病気にかかると月3万円以上の手当ての支給を受けられると付け加えました。こうして、放射能の影響があろうとなかろうと被爆者は手厚い援護を受けているのだから、その上にある原爆症認定は、きびしくても当然というのです。だから、認定審査では「放射線の影響は否定できない」という程度のことで却下するのは不合理ではないと言い切りました。
また、放射線の影響を認める意見とそれを否定する意見があるような場合も、原爆症と認めないのは当然だというのです。そんな人には、健康管理手当てが用意されているではないか–。「腹んたつねえ」 これが傍聴者に共通の印象でした。

 


=20年余の歳月をかけ=
「日本被団協50年史」が完成
都道府県の活動も収録

 日本被団協の運動の歴史をまとめようという話が出たのは、日本被団協30周年の記念式典を準備していたときだったとか。それから数えると23年の歳月をかけて、刊行されたのが日本被団協50年史『ふたたび被爆者をつくるな』です。

原爆地獄から立ち上がり、 ふたたび被爆者をつくるなととりくんだ50年の被爆者運動の全貌を綴った「本巻」に被爆者運動にかかわる膨大な資料と被爆者運動の年表を収めた「別巻」を添え、あわせると769ページに及ぶ大著です。大著ではあっても、冒頭の被爆当時の叙述から2006年にいたる被爆者運動の流れはすごい迫力で、読む人に迫ってくるので、読み始めたら止められないというこ とになるのではないでしょうか。
「本巻」には、第Ⅱ部として、各都道府県の被爆者組織の被爆者運動が収録されています。それぞれ見開き2ページ程度の分量ですが、こうしてみると、それぞれの地域でのとりくみが、被団協運動を支え、発展してきている様子が何えます。
もちろん長崎被 災協のページもあります。この日本被団協50年史『ふたたび被爆者をつくるな』は、 本巻・別巻がセットで1万2千6百円です。ぜひ、みんなで読み、知人に紹介しましょう。申し込みは長崎被災協まで。
(山田 拓民)

 


国民救援会長崎支部が集
団訴・訟へ支援金を贈る

 平和と民主主義を守る立場から裁判支援などにとりくんでいる国民救援会・長崎支部は、6月17日に今年度の総会を開き、活動方針を決め、原爆症認定集団訴訟を支援する会へも支援金(2万円)を贈りました。

香焼被災協が役員
研修会ひらくる

 平香焼被災協は、6月12日午後1時半から中央公民館で役員研修会を開き、山田事務局長の報告をもとに、原爆症認定をめぐる最近の状況や裁判の現状とこれからのとりくみについて学びあいました。


長崎被災協6月の動き

1日・原爆症認定問題で長崎市議各会派へ要請

2日・原爆症認定問題で県議会各会派へ要請
・8・9投票日問題で5団体が県へ申し入れ

3日・原爆症認定問題で各政党県本部へ要請
・8・9投票日問題で5団体が長崎市へ申し入れ
中央相談所理事会 (横山)

5日・長崎市内の国会議員事務所へ原爆症認定問題で要請

6日・支援する会が街頭宣伝

8日・日本被団協代表理事会 (山田)

9日・日本被団協総会 (山田・田中・広瀬・林田)→10日まで

11日・中央での要請行動

12日・香焼被災協が役員会 (山田)

13日・平和宣言起草委員会 (谷口)
・平和研究所研究講座 (山田)

15日・福岡高裁口頭弁論

16日・網の目平和行進団代表学習会で原爆症問題の現状を報告 (山田)

17日.国民救援会長崎支部総会 (山田)

25日・8月の政府への要望についての検討会 (山田)

26日・原対協理事会 (谷口)

29日・世界平和祈念事業実行委員会 (谷口)

30日・長崎地裁口頭弁論