2009年9月9日発行の新聞『被団協』311号の内容をご紹介します。

◇原 爆 症 認 定 集 団 訴 訟 ◇
 終結への「基本方針」を確認 
総理(総裁)と被団協が合意の署名

 ヒロシマ原爆の日の8月6日、一つの「確認書」に内閣総理大臣で自民党総裁である麻生太郎氏と日本被団協代表委員坪井直氏、同事務局長田中煕巳氏との間で署名・押印がなされました。
原爆症認定集団訴訟終結への基本方針を内容とする『確認書』でした。

 

原爆症認定集団訴訟の終結に関する
基本方針に係る確認書

1・1審判決を尊重し、1審で勝訴した原告については控訴せず当該判決を確定させる。
熊本地裁判決(8月3日判決)については、控訴しない。
このような状況変化を踏まえ、1審で勝訴した原告に係る控訴を取り下げる。

2・係争中の原告いついては1審判決を待つ。

3・議員立法により基金を設け、原告に係る問題の解決のために活用する。

4・厚生労働大臣と被団協・原告団・弁護団は、定期協諌の場を設け、今後、訴訟の場で争う必要のないよう、この定期協議の場を通じて解決を図る。

5・原告団はこれをもって集団訴訟を終結させる。

平成21年8月6日

日本原水爆被害者団体協議会
代表委員 坪井  直
事務局長 田中 煕巳
内閤総理大臣
自由民主党総裁 麻生 太郎

 「確認書」の内容は、
「①地で勝訴した被爆者については、国は控訴せずに勝訴判決を確定させる。また、すでに国が控訴している分については、国は控訴を取り下げる。
②地裁でまだ判決が出ていないものについては、地裁での判決が出るまで待つ。
③訴えを起こした被爆者についての問題の解決に活用するために、議員立法で基金を設ける。
④厚生労働大臣と被団協・原告団・弁護団は定期協議の場を設け、これからは裁判で争う必要がないように、この定期協議の場での解決を図る。
⑤ 原告団は以上の措置を了承して集団訴訟を終結させる。」
というものです。

官房長官が「談話」を発表
この調印式後、官房長官は「談話」を発表しました。原文の通りにここに掲げます。
「原爆症認定をめぐる集団訴訟の解決に向けて日本被団協、原告団、弁護団と基本方針について、一致を見ました。
原爆症をめぐる集団訴訟では、 本年8月3日の熊本地裁判決を含め、19度にわたって、国の原爆症認定行政について厳しい司法判断が示されたことについて、国としてはこれを厳粛に受け止め、この間、裁判が長期化し、被爆者の高齢化、病気の深刻化などによる被爆者の方々の筆舌に尽くしがたい、苦しみや、集団訴訟に込められた原告の皆さんの心情に思いを致し、これを陳謝いたします。
政府としては、これまで拡大してきた原爆症の認定基準に基づき、現在、待っておられる被爆者の方々が一人でも多く迅速に認定されるよう努力するとともに、唯一の被爆国として、原子爆弾の惨禍が再び繰り返されることのないよう、核兵器の廃絶へ向けて積極的役割を果たし、恒久平和の実現を世界に向けて訴え続けていく決意を表明します。」


みんなで知ろう 「確認書」の内容

「裁判に直接かかわってきた人にも、そうでない人にも、確認書の内容はすべての被爆者に関係を持つものです。みんなでその内容に目を通し、その意味を考えましょう。
それぞれの支部や会で、このことについて話し合いをするときには、ぜひ私たちも参加させて下さい」と山田事務局長 は、呼びかけています。

 8.6「確認書」をめぐって 
  被災協が報告・学習のつどい

原爆症認定集団訴訟の全面解決をめぐつて8月6日の総理と日本被団協が署名捺印した「確認書」 の内容と課題を確認し、これからのとりくみについて考えようと、長崎被災協では理事、評議員、原告、相談員らに呼びかけ、8月26日に午前10時から正午すぎまで「報告と学習のつどい」を開催しました。
「つどい」では、谷口稜嘩長崎被災協会長の開会の挨拶ののち、今回の訴訟の弁護団長の弁護士中村尚達先生が、何度も暗礁に乗り上げそうになりながらまとまった「確認 書」の経過と内容について、1時間にわたって報告、このあと、中村先生への質疑をふくめて意見を交換しましたが、その多くは、長崎地裁で敗訴し、現在福岡高裁で審理が続いている人の扱いをめぐるものでした。


  ◎ 訪 米 報 告 ◎
延べ550人の市民らと交流し、有意義な10日間でした

長崎被災協理事 田中 重光

 東友会(東京の被爆者の会)の長久勝之さんと私は、日本被団協の代表として、ことし8月3日から13日まで、アメリカのニュージャージー州のプリンストン地域、アトラン ティック郡、エセックス郡、 モリス郡とペンシルバニア州 ニュータウンなどで、合計14回、延べ550名の市民、宗 教指導者、信者、上院議員の 秘書、スタッフの皆さんに被爆の実相を語り、戦争も貧困も核兵器もない世界を築く意義を明らかにし、来年のNPT再検討会議の成功へ向けて の私たちの思いを訴え、交流と連帯を深めてきました。
私たちは、原爆被害の証言に先立って、誤った日本の国 策によって中国をはじめ多くの国々の方々に大きな犠牲と苦痛を与えたことを謝罪し、犠牲者への黙とうをお願いしました。こうした配慮のせいか、渡米期間中、反発の言葉はありませんでした。  毎日、朝食後すぐに行動に入り、夜は7時頃から集会などへ参加するなど、かなりハードなスケジュールでしたが、 いろんな所で歓迎を受け、証言に感動したという言葉が返ってきましたし、訪米してよかったと思いました。ただ在米の被爆者に会えなかったのは残念でした。

 


  =小浜「大和荘」年末年始の予約受け付け開始

雲仙市小浜町の被爆者温泉保養所「大和荘「の年末年始宿泊の申し込み受付がはじまりました。
宿泊期間は、ことし12月30日から来年1月3日までの4泊5日が条件となっています。
料金は、被爆者については4泊5日で一人20,600円、被爆者でない付添いの方の料金は、4泊5日で23,800円となっています(いずれも2食つき)。
この料金には、入湯税4泊で600円が含まれています。
申し込みの場所は、長崎市茂里町2番41号もりまちハートセンター7階「長崎原爆被爆者対策協議会」事務局です。(電話での申し込みは受け付けていません)申し込みに際しては、被爆者健康手帳を ご持参ください。
申込期間は、今月(9月)30日まで。ただし、土曜、日曜、祝日はお休みです。
 


= 読 書 案 内 =


忘れまじ昭和
落口賢治著 発行・長崎新聞社

原子爆弾による直接の死傷者だけではなく、被博当時は 無傷で無事だった多<の人々が、日が経つにつれて次々と死去していった。(本書101頁から)

また一冊、血のにじむような被爆の記録を綴った本が刊行されました。
長崎新聞社が発行した濱口賢治さんの「忘 れまじ昭和-あの日・あの時ー」がそれです。この本は小説の体裁をとっていますが、その主人公・波口謙介こそ、作者・濱口賢治その人であり、さらに登場人物もすべて実在の人物なのだと思って、私は読みました。つまり、決して絵そらごとではないということです。
主人公波口謙介は、西彼半島のある町の出身。県立瓊浦中学校3年生で稲佐に下宿していて、動員学徒として三菱 製鋼所での作業に従事していましたが、原爆が投下されたときは、警察救護隊員としてたまたま稲佐警察署へ行っていて難を逃れたものの、製鋼所は壊滅し、級友の多くを失 うことになるのです。当日、それほどの負傷ではなかった人たちもつぎつぎと…。

 

 定価1680円 被災協にも置いています。(山田拓民)



長崎被災協8月の動き

l日・支援する会が長崎駅前高架広場で街頭宣伝

3日・熊本地裁第2陣判決、全員勝訴(森内・山田・柿田)

7日~9日・各種集会などへ参加して活動
奥村アヤ子さんが平和祈念式典で平和への誓いを朗読

9日・長崎原爆の日

11日・新聞『被団協』発送

15日・不戦のつどい

18日・早稲田大(法)宮沢ゼミ有志来訪、懇談(山田)

25日・公益法人説明会(山田・林田)

26日・「確認書」をめぐっての報告・学集会

27日「医療と福祉を考える懇談会」世話人会(柿田)

28日・被災協「語り継ぐ会」
・平和推進協会事業推進委員会(谷口)

30日・衆議院議員選拳
・全国弁護団、原告団、 支援する会代表者会議(森内、柿田)