2009年11月9日発行の新聞『被団協』313号の内容をご紹介します。
◇「援護に関する法律」から国家補償の「援護法」へ ◇
「法改正へ動き始めた被団協」
11月12日に第3回検討委員会
原爆症認定集団訴訟が進行する中で、いまの「援護に関する法律」(正しくは「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」)の不十分さがいよいよ明らかとなりました。
さらにことしは私たちの「原爆被害者の基本要求」が発表されて25年目の年ということもあって、日本被団協では、「基本要求」に沿った正しい意味での「被爆者援護法」をつくろう、という思いが高まり、6月の総会で「法改正検討委員会」の設置が決まりました。
そして9月16・17日に開かれた代表理事会で検討委員会のメンバーを決め、代表理事会のあと、第1回「法改正検討委員会」を開催、さらに10月20日に第2回検討委員会がひらかれました。第3回は11月12日の予定です。まだ、議論は核心部分にはいたっていませんが、単に現行法の文言の修正だけでなく、「国家補償の被爆者援護法」を作る立場で、今後検討をすすめることになっています。日本被団協の「検討委員会」の委員でもある山田事務局長は、中央の検討と並行して、長崎でも検討したいと述べました。
◇川口順子代表らの言動につのる怒り◇
「日本は、核兵器廃絶の先頭に立て」
被爆者5団体がきびしく抗議
「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」が報告書を検討する中で、たとえば相手国が核兵器による攻撃を仕かけない以上、自国の核兵器は使わない(核兵器先制不使用)という原則を盛り込むことに、北朝鮮の生物・化学兵器の使用に対してもアメリカの核兵器使用を期待する日本代表が「このような文言を入れると核の傘が弱体化する」と異論を唱えており、日本の川口順子議長とともに議長を務めるオーストラリアのエバンズ元外相から「日本は核兵器廃絶の障害となっている」と評されていることが、9月の半ばの新聞紙上で明らかにされました。
このことを重視した長崎被災協など被爆者5団体は共同で、10月13日、長崎を訪れ、原爆中心碑に献花した川口順子元外相へ面会を求め、被爆者の心を踏みにじるような言動にきびしく抗議するとともに、被爆国日本代表として核兵器廃絶の先頭に立つよう要請しました。これに対し川口氏は「委員会での発言は公開しないことになっているので、何もいえない」 と述べるだけでした。
被爆者の要請を無視
放影研、NIAIDと契約締結
放射線影響研究所(放影研)がアメリカの対テロの特務機関といわれるアレルギー感染症研究所(NIAID)から10億円の研究費の援助をうけ、被爆者の資料・標本を使って、放射線が免疫機能に与える影響を調べる研究計画について、テロによる核攻撃を想定したものであり、核兵器の使用を前提とした研究は許されない、と被爆者5団体は、計画を白紙に戻すよう9月11日に申し入れていました。(10月号参照)。
さらに同日午後開かれた放射研長崎地元連絡協議会でも出席者の過半数から反対の意向 が表明されたにもかかわらず、 放影研は、NIAIDと正式契約を結んでしまったのです。
その後、放影研側からの申し入れがあり、10月26日、被爆者5団体と放影研の会談が行われました。放影研側からは、事前の連絡が十分でなかったことについては謝りましたが、被爆者団体としては前に出した「要請書」の趣旨は変わらないことを伝えて、この日の会談は終わりました。
◇8年ぶり長崎で開催◇
学びあい、交流を深めよう
九ブロ相談事業講習会
私たち被爆者が1984年11月に『原爆被害者の基本要求』をつくってちょうど25年目となる11月にひらかれる九ブロックの相談事業講習会です。
意義深い月に長崎で開かれる講習会に、みんなで参加しましょう。
8年ぶりに長崎で
日本被団協中央相談所の主催で開かれる九州ブロック 相談事業講習会は、九州・沖縄の8県が回りもちで開催されてきました。だから長崎での開催は8年ぶりとなります。前回も今回と同じ大浦海岸通りのホテルで開き、約700名が集まりました。
今回の参加者は、高齢化のためかやや減って300名程度となりそうですが、こんなに多くの被爆者が集まるプロックはほかにはありません
充実している講師陣
今回の講師陣は、ベテランの日本被団協の田中事務局長、中央相談所の伊藤直子さんのほかに、1日の講義では九州大学の直野章子先生に25年目を迎えた「基本要求」について、2日目の「医療・健康問題」の分科会では、長崎原爆病院の朝長方左男院長に「被爆者が気をつけなければならない健康問題」について、それぞれお話し頂きます。
分科会にも大きな期待
また「相談活動」の分科会では、原爆症問題だけでなく、救護活動での被爆者認定でも大きな変化が起こっており、関心が高っています。
さらに「被爆者運動」の分科会も、基本要求実現をめざす運動をどう組みたてるか、二世問題、被曝体験者問題な どもふくめて活発な議論が期待されます。
誘い合って講習会へ
大切なことは、こうした集まりに参加することです。そしてすすんで発言しましょう。
誘いあって大浦海岸通りのホテル・ロワジールへ行きましょう。
九州フロック相談事業講習会・日程
11月2了日(金) 11月28日(土) ◎参加費 |
◇九州で初めての交流集会◇
ノーモア ヒバクシャ 9条の会
14日午後1時半から被災協で
憲法が公布されて63年目となる11月、九州ではじめての「ノー・モア・ヒバクシャ9条の会」の交流会を、14日午後1時半から5時まで、長崎被災協の地下講堂でひらきます。「ノー・モア・ヒバクシャ9条の会」は、ノー・モア・ヒバクシャに賛同し、憲法9条を守ろうという人たちの集りです。九州だけでなく、関東、中部などからも参加されます。
みんなで9条をめぐって意見を交流しあいましょう。どなたも参加できます。(参加費不要)。当日午後5時半からは、松山 町の「ふじ」で懇親のつどいを開きます(参加費3千円)。
秋の夜を語り会いましょう。
= 読 書 案 内 =
それでも、日本人は「戦争」を選んだ- 加藤 陽子著
書店の棚にこの本を見かけた時、私は、日本人は本当に戦争を選んだのだろうか、と疑問に思いました。確かに踊らされたのは、日本人でしたが、操ったのは軍人と政治家ではなかったでしょうか。
その軍人と政治家に迎合して踊った方にも責任は免れないとしても、「それでも、日本人は戦争を選んだ」といういい方は歴史の真実を隠蔽するのではないかと思ったからでした。
その私がこの本を買ったのは、この本の内容が、高校生を対象と した講義をもとにしていることと、著者がここで述べたか つたこととして「国民の正当な要求を実現しうるシステムが機能不全に陥ると、国民に本来見てはならない夢を、擬似的に見せることで国民の支持を獲得しようとする政治勢力が現れないとも限らないとの危倶であり教訓です」と語つていることでした。
この気 持ちは、よくわかるからです。
私は、5章太平洋戦争から読み始めました。被爆したと き14歳だった私は、この戦争については身近なことだし、一定の知識もあったからです。それから4章、3章…と読みました。そして、こんな授業を受けたかったなあ、と思いました。ここで指摘されていることは、現在の問題でもあるからです。よかったら、ご一読を。
(山田) |
長崎被災協10月の動き
2日・大和荘抽選会(谷口)
3日・長崎県杜保協総会(山田)
6日・長崎弁護団会議(山田 柿田)
9日・監査資料を県へ提出(山田)
〃 新聞「被団協」発送作業
17日・核兵器廃絶地球市民集会実行委負会(山田)
20日・被団協代表理事会・第2回法改正検討委員会(山田)
21日・被団協全国代表者会議(山田、広瀬、田中、柿田)→22日まで
23日・医療と福祉を考える長崎県懇談会総会(柿田)
24日・自由法曹団全国集会で講演(山田)
〃 ・北松青年会議所集会で講演(谷口)
〃 ・市民平和大行進
〃 ・集団訴訟を支援する会で街頭宣伝
27日・放影研との懇談(山田)
29日・いきいきコープ理事会(柿田)