2014年6月9日発行の新聞『被団協』368号の内容をご紹介します。

被爆の実相を明らかにしつつ
核兵器廃絶、国家補償の援護法実現へ
日本被団協が今年度の方針決める

日本被団協は、6月3日・4日に東京で第59回定期総会を開き、1年間の運動を総括するとともに、本年度の運動方針を決定しました。
今年の、運動に万針の概要は、次のとおりです。

Ⅰ被爆者運動の原点である原爆被害を語り伝える実装普及実相普及運動

Ⅱ核兵器も戦争もない世界の実現を目指す運動
①代表団を派遣するなど第9回NPT再検討会議の成功に努力します。
②核兵器の非人道性に関する国際会議・集会などに参加し、その成功に尽力します。
③非核3原則の法制化を求めるなど、日本を「非核の国」とする運動を続けます。

Ⅲ原爆被害に対する国の償いを実現させる運動
①広く国民運動を推進します。
②嘆願署名、国会議員の賛同署名、地方議会の意見書採択、運動募金活動に取り組みます。
③広く深く学習活動を進めます。
④原爆症認定制度の抜本的改正運動を進めます。
⑥基本要求策定30年、被爆70年、被団協結成60周年にふさわしい学習、行事、集会などを実施します。
Ⅳ・原発事故被災者と連帯し、原発零、国民の命を守る運動を進めます。

V1日本被団協のあり方を考える運動

Ⅵ・国民の運動と連帯する運動
①他の戦争被害者との連帯交流
②社会保障問題での連帯交流
③憲法と平和を守るための連帯交流
第V項目の「被団協のあり方」とは、被爆者の高齢化が進む中で、これまでのような取り組みができなくなるのは当然のことなのですが、一方では、被爆者が果たす役割は決して小さくなっているわけではなく、この間のギャップをどう埋めてゆくかということです。私たちも真剣に考えるべきことです。


◇原爆症認定訴訟◇

呼び名は『ノーモアヒバクシャ者訴訟』
現在69人が頑張っています

長崎では、いま、原爆症認定申請を却下された4人の被爆者が、「認定」を求めて長崎地裁で国(厚生労働省)を相手に争っていますが、全国では、109人の被爆者が裁判に取り組んできました。

2010年3月から始まったこの裁判ですが、すでに22人の方々が地裁で勝利しました。しかしうち4人については、厚生労働省が控訴したため、裁判は現在も進行中で、厚生労働省が控訴できなかった18名が認定を勝ち取っています。

さらに原爆症認定基準の若干の修正があったために、厚生労働省が裁判では認定される可能性が大きいとみて、22名について、旧基準による[却下]を取り消し、認定するというケースも生じています。従って、現在裁判で争っている被爆者は69人となっています。
6月3・4日に開かれた日本被団協の定期総会では、この裁判の全面的な勝利を確信して、この裁判を「ノーモアヒバクシヤ訴訟」と呼び、全面的な支援を行うことを決議しました。

長崎の裁判も、これから核心へ入るところです。みなさん方のご支援をお願いいたします。(山田拓民)


改善の兆しも見えず
◇原爆症認定審査◇
山田 拓民

今年も、4月になったら、立て続けに、原爆症認定審査での「棄却」の通知が入りました。該当者はいずれも先に却下され、異議を申し立てていた人たちへの回答で、すべて「棄却」でした。

意義の申し立てには、文書での記述と合わせて、口頭での意見陳述も行い、当人の疾病の状況、被爆状況などについて、かなり詳細に述べたつもりですが、それらがどのように受け止められ、どう判断されたかは、今回も「棄却通知書」から読み取ることはできませんでした。

下記に掲載しているのが厚生労働大臣名での「棄却通知」の一部ですが、この文面からは、なぜ申請された障害が原爆の放射線に起因するものではないと判断したのか」という「却下の理由」についての記述全く示されていません。

ことし4月に送られてきた棄却通知書の一部
3 これを受け、分科会は当該申立てに対し、別紙の「新しい審査の方針(最終改正 平成25年12116日)」に基づき、改めて審査を行いました。
申立入から既に提出された申請書及び申立書等を用いて申立人に係る被爆状況を再度検討し、さらに申立人のこれまでの健康状況、疾病の状況、環境因子、生活歴等についても十分に検討を行いました。4 しかしながら、これらの事実を総合的に勘案して判断した結果、申請された疾病が「原子爆弾の放射線に起因したものである」と認めることが出来ませんでした。

以前から私はこのことについて、文書でも口頭でも指摘してきたところですが、「新しい審査の方針」のもとでも変わっていないことを知り愕然としました。

たしかに審査件数は多く、所定の時間内に処理することは大変だろうと思いますが、それならそれで、審査会数を増やすとか、審査委員を増員するとか、厚生労働大臣として打つ手はあるはずです。
改めて行政手続法・第8条を持ち出すまでもなく、これは行政としての常識なのです。

そして厚生労働省も行政機関である以上、法を守ることば当然の義務なのです。行政と司法の判断の格差が問題にされて随分の歳月を経ましたが、行政の、このような誤った頑固さこそ「乖離」の原因ではないでしょうか。反省を求めて止みません。

 


(2014年)6月3日の朝日新聞社説
被爆者の援護 国は争いに終止符を

広島、長崎への原爆投下からまもなく69年。被害者と国との争いを一刻も早く終わらせたい。動くべきは国である。
国の被爆者健康手帳を持つ人が今年、20万人を割り込む見通しだ。最近は年8千人超のページで減り、ピークだった80年代のほぼ半分となった。

注意したいのは、手帳を持つ人が原爆被害者のすべてではないということだ。家族への偏見を恐れて手帳を取らない人や、被爆体験を裏付ける証人が見つからずに手帳を取れない人も少なくない。
広島郊外で「黒い雨」を浴びた人や長崎周辺の国の指定地域外にいた「被爆体験者」も、手帳所持者と同等の援護を訴えているが、国は拒んだままだ。

手帳を持つ被爆者たちも11年前から原爆症認定をめぐる裁判を相次いで起こした。行政訴訟では異例なことに、国はほとんど負けた。
厚生労働省は昨年12月、認定基準を一部改めたが、その後もすでに3回、国側敗訴の判決が出ている。
もう一度考えてみたい。原爆に遭った人たちが、最も願っていることはなんだろうか。

1956年に結成された日本原水爆被害者団体協議会は、核兵器による被害を再び繰り返さないことを目標とし、核兵器廃絶と被爆者援護を運動の二つの柱としてきた。
原爆症認定訴訟は「援護を手厚く」という要求とみられがちだが、それだけではない。

被爆者は、戦争を起こした日本政府が原爆被害の実態を正しく認め、被害者に償うことが、悲劇を繰り返さないための第一歩になる、と訴えてきた。

だが厚労省は、救済対象を放射線による健康被害にほぼ限定した。浴びた線量が低いとみられる人たちが病気になっても、原爆症となかなか認めない。こうした線引きが被爆者援護法の趣旨に反するという司法判断が続いても、姿勢を改めようとしない。

「死に絶えるのを待っているのか」という被爆者らの憤りの声に安倍政権は向き合ってほしい。国の責任を認め、争いに幕を引くべきだ。まずは認定基準の抜本改正である。

国際社会では核兵器の非人道性が注目されている。非人道性を身をもって知る被爆者と、被爆国がわだかまりなく共に歩めれば、核兵器廃絶に向け、このうえない力になるはずだ。

安倍首相はこの夏も被爆地を訪れることになろう。通り一遍の対話では意味がない。被爆者らの真の願いに耳を傾け、ただちに行動をとってもらいたい。


大運動への募金、有難うございました。

五月号の「被団協(長崎版)」で、「いよいよ私たちが長崎被災協を立ち上げて以来の念願である『原爆の被害への國の償い』を求める大運動か始まりました」と述べ、募金運動を呼びかけましたところ、1ヶ月も経たないうちに、1団体103名の方々から31万9千円のご寄付が集まりました。
心から厚く御礼申し上げますとともに、これからの運動には、まだまだ資金が必要ですので、さらに多くの方々のご理解、ご協力をいただきたく、よろしくここにお願い申し上げます。

2014年6月8日
長崎被災協事務局一同


5月のうごき

5日

弁護団会議(山田・柿田・田中)

10日 平和宣言起草委員会(谷口)
11日 第1回2世会議(柿田)
14日

長崎市被爆者対策部との打ち合わせ(山田)

15日 会計監査(柿田)
16日

諌早被災協総会(山田)

28日 理事会