2014年9月9日発行の新聞『被団協』371号の内容をご紹介します。

国家補償の「援護法」実現へ
署名運動・学習集会など多彩に
被災協第2回理事会で確定

長崎被災協第2回理事会は9月8日午後2時から被災協2階会議室で開催、5つの議案いずれも可決、諸連絡の後、午後4時閉会しました。出席者は、理事7名、オブザーバー5名、計12名でした。

第1号議案は、『秋の取り組みについて』で、山田事務局長が、核兵器廃絶にしろ、国家補償の被爆者援護法制定(下部の『「原爆被害者の基本要求」とは』を参照)にしろ、決して容易に達成できる状況にはないが、安倍内閣が目指している「戦争のできる国づくり」と真っ向から対立する課題であり、やりがいのある取り組みではないか、と報告、具体的には、
①9月26日には17時から18時までの1時間、原水協と共に「再び被爆者を作らない決意こめて原爆被害への国の償いを求める署名」運動に取り組む。
②10月18日には、14時から16時まで被災協の講堂(地下)で『被爆者の願いを届けよう、国へ、世界へ』というテーマで長崎大学准教授中村桂子さんと被災協の山田事務局長が話をする予定を確認。
③今後、他の団体などへも要請し、署名運動を推進する。
④県議会、市・町議会へも協力を要請し、「国家補償の被爆者援護法」実現を目指す。などを決めました。
第2号議案『被爆70周年記念誌』については、現在の応募作品については、やや出足が鈍い状況を報告し、11月末締切を確認しました。
第3号議案は、11月2日・3日に宮崎市で開かれる日本被団協九州ブロックの相談事業講習会について、交通の便がよくないこともあって、長崎からの参加者が少ないのが現状です。
第4号議案では、進行中のノーモア被爆者訴訟(原爆症認定をめぐる訴訟を、こう呼ぶことに全国の代表者会議で決まりました)の法廷が9月9日に開かれることから、傍聴参加を呼びかけました。
第5号議案では大村の被爆者組織の第2回集会が10月8日にひらかれることが報告されました。
このあと若干の諸連絡があり、この日の(拡大)理事会は終了しました。


東京で『基本要求』策定30周年記念行事

悪天候のため延期に延期を重ねてきた街頭での『国家補償の被爆者援護法を求める署名運動』は、ようやく8月1日に実施できましたが、あいにく台風12号が接近する中でしたので、天候も怪しく、30分の行動となりました。
午前11時に、恒例の署名運動の場所としている長崎駅前の高架広場に集まった12名は、早速、原爆の写真のパネルを掲げ、幟を立てて署名運動を開始、山田事務局長はマイクで通行人へ署名運動の趣旨を説明し、署名への協力を呼びかけました。
天候も悪かったせいもあってか、通行人の影は意外に少なかったのですが、それでも30分間の成果は、54名の署名となり、また合計700円のカンパも集まりました。長崎被災協では、これからもこうした取り組みを重ねてゆく予定です。

東京で『基本要求』策定30周年記念行事

被爆者の全国組織である日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が、198年11月17日に「原爆被害者の基本要求-ふたたび被爆者をつくらないために-」を発表して、今年で30年になるのを記念し、日本被団協は、10月19日の午後、東京の立教大学池袋キャンパスで、『再び被爆者を作らないために』のテーマでの学習集会を開くことになりました。
この日は、日本被団協の全国都道府県代表者会議が開かれる前日であり、全国からの参加が見込まれます。
なお、長崎では、別掲のように、同日(10月18日)被災協講堂で開かれる集会「被爆者の願い届けよう国へ、世界へ」での山田事務局長が『原爆被害者の基本要求』について報告する予定です。

集会・行動などへ
ご参加の皆さんへ

ぜひご感想を被災協事務局へお寄せください。


原爆被害者の基本要求」とは・・・

広島・長崎への原爆投下から40年となる1985年を前にして、1984年11月18日、日本被団協は、「日本・アメリカ政府、ならびにすべての核兵器保有国政府に対する要求」という文書を発表しました。これが『原爆被害者の基本要求―ふたたび被爆者をつくらないために』(以下、[基本要求]と呼びます。)です。
今年は、2014年、『基本要求』が発表されてから30年目の年に当たります。これを記念して、日本被団協は10月19日に東京で「基本要求策定30周年記念集会」の開催を予定しています。

『基本要求』とは・・・
では、『基本要求』には、何か書かれているのでしょうか。
1)核戦争起こすな、核兵器なくせ
世界は、いま「核戦争三分前」の危機にあると指摘、アメリカ、ソ連およびすべての核兵器保有国そして日本政府に核兵器廃絶への努力を求めています。
2)被爆者援護法の即時制定
1日本政府の責任日本政府は、原爆被害の隠蔽に手を貸しただけでなく、戦後12年間被爆者を放置し、今なお「受忍政策」を維持しています。日本政府には国家補償の被爆者援護法を制定する責任があるのです。

被爆者が求める「被爆者援護法」とは
(ア)ふたたび被爆者をつくらないとの決意を込め、原爆被害にたいする国家補償をおこなう。
(イ)原爆死役者の遺族に弔慰金と遺族年金を支給する。
(ウ)被爆者の健康管理と治療・療養をすべて国の責任で行う。
(エ)被爆者全員に被爆者年金を支給する。障害を持つ者には加算する。(山田拓民)


英語で伝えた被爆者の思い
      アメリカ訪問・報告 事務局次長 柿田 富美枝

 

8月4日から11日まで、広島の箕牧智之さんと私の二人は、日本被団協を代表して、米国遊説の旅に訪れました。

日本時間の8月6日午前8時15分に当たる現地時間の午後7時15分、ワシントンDCのキング牧師像の前で広島原爆追悼集会が開かれ、私たちも参加しました。参加者した50名ほどは、手をつなぎ輪になって、原爆で亡くなられた方々への黙祷を行いました。
私は、箕牧さんとともに被爆の証言を行い、参加者は熱心に耳を傾けました。
日本時間の8月9日午前H時2分に当たる8月8日午後10時2分には、ホワイトハウス前で長崎原爆追悼集会が開かれ、20名が参加しました。夜遅い時刻にもかかわらず参加してくださった方々に、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

持参した画像の上映も
また、アメリカン大学国際関係学部での集会、メリーランドの教会での集会では、持参した画像をスクリーンに上映し、証言を行いました。アメリカン大学では、学生たちが集会を運営し、学長が挨拶に立ち、私たちを歓迎しました。若い人たちの行動力を頼もしく感じました。
松井広島市長、田上長崎市長から預かっていったメッセージは、集会の中で披露され、現地の平和団体や集会参加者への大きな励ましとなりました。

ネバダの被害者も証言
私かちと共に証言を行ったネバダ核実験風下の原住民のデュスーネルソン氏の話は、米国が風の方向を計測し、人口の少ない地域に向けて核実験を行い、住民に何も知らせず、そのたびに風下住民は多量の放射能を浴び、テュス氏の家族4人が若くしてガンで亡くなったということでした。訴訟を起こしたそうですが、判決は「国が計画的におこなった実験なので、公害ではない」という信じられないもので、彼は、広島・長崎の被爆者と同じ仲間だと感じると話していました。

集会で多かった質問
集会で多く出された質問は、「福島は、いま、どうなっているのか」「原発は再稼働しているのか」「日本では、原発に反対する勢力があるのか」、それから「被爆者の高齢化と被爆二世」「二世の組織化」「二世は何を願うのか」などでした。福島原発事故への関心は高く、日本人としての責任を感じました。
被爆二世への期待が感じられ、被爆者を支え、継承していってほしい、また来年、被爆者と一緒に二世に来て欲しいと言われました。

各地での暖かい歓迎に感謝
ワシントン-ヒロシマ-ナガサキ平和委員会、他の平和団体、市民の皆さんに大変お世話になり、温かい歓迎を受け、核兵器廃絶を願う心は世界でつながっていることを実感しました。
また、子供たちの平和サマーキャンプ訪問は楽しいひと時でした。笑い声が溢れ、子供たちの瞳は輝いていました。
「サダコと千羽鶴」の話のアニメを見たあと、子供達から私への質問は、「アメリカを憎いと思いますが?」「どうしたら平和になると思いますか?」という素直なものでした。
アーリントン墓地では、見渡す限り緑の芝生と大理石の墓標が続いていることに驚きました。それは第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争……そして今も続くアメリカの戦死者の多さを表すものでした。日本では、第二次世界大戦以降69年間、一人の戦死者も出していないのは、日本国憲法があればこそ、この平和の大切さを改めて感じました。箕牧さんは証言の冒頭で真珠湾攻撃に触れ、日本の戦争責任を謝罪したのですが、一人の米国人女性が、「とても感動した。私も国を代表して、原爆を落とした謝罪をしたい」と手紙を渡して行かれました。
箕牧さんの真摯な証言に私も助けられ、私の発言の足りない部分をフォローして頂いたと感じました。


▶図書紹介

◇岩波ジュニア新書◇
中高生のための憲法教室
弁護士 伊藤 真

表題を見て、バカにするな!なんて思わないでくださいよ。別にあなたの読書力が中学生程度だと思ってこの本を推薦するのではありません。
「中高生のための」と書いてありますが、実は内容の濃い本なのです。いま、安倍内閣は、憲法には手を触れないで、憲法の中身を変えようとしています。特定秘密保護を奪おうとしたり、集団的自衛権といって、日本が攻められてもいないのに戦争を始められるようにしようと言い出したり、まさに「狂気の沙汰」としか言いようがない有様です。 こんな時だからこそ、「平和憲法」と呼ばれる『日本国憲法』にじっくり目を通し、その内容を身につけることが大事なのですが、それも大変なことです。
そこで役に立つのがこの本ではないかと私は思ったのです。この本は、なにも憲法の条文を並べて解説しているのではありません。身辺に起こる様々のことを捉えて考えさせ、
「憲法」はそれをどう扱っているのかを示し、その意味を解いてゆくのです。ご一読をおすすめします。(山田拓民)
価格・820円十税